スペイントホホ紀行 その4.

アルハンブラ宮殿入場チケット獲得大作戦

ronda2 日は朝7時の列車に乗って断崖絶壁の眺望で有名なロンダ(右写真)まで約3時間。午後まで歩き回ったあと再びロンダから列車に乗ってグラナダに着いたのは夕方でございました。今日は列車も遅れずにほぼ予定通り。ただ問題は宿なのです。今回のスペイン旅行では「現地で電話して宿を取る」という前回の方法を取ろうとしてもことごとく満室でダメ。実はグラナダも今夜の宿だけは何とか取ったのですが、明日の宿が決まっていません。我々は例によってグラナダのカフェで深刻な打ち合わせを行い、最終的には飛び込みで明日の宿を何とか確保することに成功したのでございます。

 なみに、今夜だけ取れている宿は風呂・トイレ共同で1泊5000ペセタ(約4000円)、飛び込みで取った明日のホテルは風呂・トイレ・TVその他全部ついて14000ペセタ(約11000円)ですが、このグラナダ2泊目の宿は今回の旅行で泊まった最も高額なホテルでございました。

map4 5000ペセタの方は日本で一般的に考えるところのホテルではなく、「オスタル」という小規模経営の、まぁ民宿に近いもの。フロントサービスなども24時間対応ではないのが普通でございまして、たいていは朝8〜9時から夜11時くらいまでの、要するに普通のスペイン人の活動時間だけの対応となります。なぜまたこんなガイドブックっぽいことを書くかと申しますと、この「フロントが24時間対応じゃない」ということが翌日のアルハンブラ宮殿入場チケット獲得大作戦立案のうえで重大なポイントになるのでございまして、いわば伏線というわけでございます。

 て、グラナダと言えば泣く子も黙るアルハンブラ宮殿。この有名な宮殿を、実は我々2年前に来た時も訪れているのでございますが、その夢幻のごとき美しさは「まるでアルハンブラ宮殿のように美しい」という形容以外にたとえようのないほどでございまして、今回飽きもせずまたもや来てしまったというわけでございます。ですから当然、明日の予定はアルハンブラ訪問が最優先で組み込まれておりまして、2年ぶりの再訪を楽しみにしていたのでございます。

 ころが、昨日モロッコで一緒だった一人旅青年から我々は不吉な情報を入手していたのでございます。いわく「アルハンブラ宮殿メチャ混んでて、7時に並んだら入れたけど8時に並んだら入れなかった人がいたらしいですよ」とのこと。ひぇー。グラナダ1泊目の夜、フラメンコを観に行って同席した日本人旅行者に聞いてみても「7時に並んだら1番乗りだった、11時にチケット買ったら入場指定時刻は夕方だった」という話。うーむ…ホテルがどこも満室ということと考え合わせても、どうやらアルハンブラ宮殿入場チケット(ちなみに、あそこは一日8000人という入場者数のリミットがあるのでございます)獲得のためには万難を排して準備する必要がありそうでございます。

 するに翌日は早起きしてチケット売り場に早く並べば良いだけの話、…いや、待てよ。その前にオスタルに宿泊代払ってチェックアウトを済ませ、荷物だけ預かってもらわなくちゃ…しかしスペインのオスタルのフロントが朝7時前に開いてるとはとても思えない(スペイン人はトテツもなく朝寝坊なのでございます)。アルハンブラ観たあとに支払い・チェックアウトしようにも、一体何時のチケット(あそこの入場チケットは30分刻みに王宮への入場時刻が指定されるのでございます)になるかわからないし、何も断らぬまま昼過ぎまで金も払わず、部屋に荷物置きっぱなしというのではオスタルに迷惑です。

 ういう時、一番簡単な方法は前夜のうちに支払いを済ませてしまい、荷物の預かりを頼んで翌朝早く部屋を出るという方法なのですが、フラメンコ鑑賞からオスタルに戻ったのはすでに夜の12時過ぎ。フロントカウンターはもう閉まっていたため「前夜の支払い」という方法はとれなかったのでございます。さぁ困った。またもや繰り返されるいわんや・トホ妻の深刻な打ち合わせ…結局、我々が最後に到達した結論は「ふた手に分かれ、一人がチケット獲得、一人は支払い処理に残ってあとで何とか落ち合おう」ということだったのでございます。一体どうなることやら…。

 朝、ワタクシは6時50分くらいにオスタルを出ました。もちろん空はまだ闇夜で(スペインでは8時くらいにならないと明るくなりません)、とても女性が一人歩きできる状況ではございませんから、暗い森の中を突っ切って入場券売り場まで約15分の道のりを歩き、早めに並ぶという役目はいわんや担当。トホ妻はオスタルに残って支払いと荷物預けを担当したのでございます。しかし一体チケット売り場にどのくらい並んでいるのか、何時に売り出して何時入場のチケットを獲得できるのか、はたまたオスタルのフロントが何時に開くのか、何もかも分からぬままの作戦行動でございますから、果たしてうまく落ち合えるのか、不確定要素だらけでございました。

 っ暗な森を通り抜けてようやく見えてきたチケット売り場。おおっ、もう20〜30人並んでいる!まだ7時なのに!ここでもやはりドイツ軍、アメリカ軍などが優勢で、中に少数ですが日本軍らしき顔も見えます。しかしこれはまだ出足の早い連中で、7時半ともなればワタクシのうしろにはおよそ70〜80人、8時頃には200人以上は並んでいたと思われます。さすが世界指折りの観光物件アルハンブラ宮殿、チケット獲得の国際競争もハンパではございません。団体ツアーなら問題はないでしょうが、もし個人旅行でアルハンブラを訪れようという方がいらっしゃいましたら、悪いことは申しません、早めに並ぶことをお勧め致します。特にその日の夕方にグラナダを出発しなければならない、といったようにオシリが決まっている方は、早起きしてなるべく早い入場指定時刻のチケットをお取りになるべきでございましょう。

 つこと1時間。8時にシャッターが開いたと思ったらチケット販売開始。えっもう売り出すの?やはりあまりの行列に少し販売開始時刻を早めたのかな?そしてようやくワタクシが一人1000ペセタ×2の入場券を獲得して入場指定時刻を見ると、げげげ!8時半から9時の間?!アルハンブラ宮殿って9時からじゃなかったの?これはマズい。ガイドブックなどにはすべて「9時から」と書いてありましたからトホ妻との打ち合わせの際にも「入場が9時より早いことはあり得ないから、9時頃にチケット売り場でうまく落ち合おう」と確認しあっていたのでございます。トホ妻が「9時に行けば大丈夫」と思っていたら遅刻です。大変だ、迎えに行かなくちゃ…

 場券売り場からまた大急ぎでオスタルへ。その間の道はほぼ一本道の坂道です。とは言え、万一すれ違いで行き別れになったらどうしよう…と思いながら早足で歩いていると、向こうから小さくトホ妻の姿が。あー良かった。それがちょうど8時25分頃、どうやら間に合いそうです。やれやれ…

 なみに、トホ妻の方はワタクシを送りだした後、しばらく悶々と部屋で過ごしていたのでございますが、8時にフロントカウンターの中から目覚まし時計の音が聞こえたので扉を叩いてカウンターを無理矢理開けてもらい、寝ぼけマナコの女性従業員に宿泊代の5000ペセタと荷物を押し付けるように渡し、オスタルを出て坂道を登っていたら向こうからワタクシが歩いて来た、というわけでございます。うーむ、見事な連携プレーの勝利。いわんやとトホ妻は何をやらせてもトホホな奴らだと思う者がいたら、その者は豚に食われることでございましょう。

alhambraアルハンブラ宮殿のように美しいアルハンブラ宮殿の内部。

 2年ぶりのアルハンブラ宮殿をたっぷりと堪能した我々は、昼頃に戻ってきて「5000ペセタ宿」から荷物を受け取り、それを持って昨日押さえた「14000ペセタ宿」にチェックインしたのでございます。さすがに疲れていた二人は、久しぶりの立派なホテルの洗面台でまず下着の洗濯をし(トホホ)、あとはドッと昼寝に突入したのでございました。

 3時頃に空腹を覚えてノソノソと起きたワタクシは、相変わらず眠りコケるトホ妻を残して一人グラナダのビブランブラ広場で遅い昼食を取り、明日から行く「アンダルシアの華・セビリヤ」の街に思いを馳せていたのであった…と申し上げたいところなのでございますが、実はセビリヤのホテルも昨日から何軒電話してもすべて満室。明日セビリヤに着いたらまず真っ先にホテル探しをせねばならず、不安は尽きないのでございました。(→旅行記その5に続く) 

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