台湾トホホ紀行その3. 

●足裏マッサージ恐るべし

 ず占いの話からすると致しましょう。占い師は「占われているヒト」の過去・現在・未来に関してアレコレとモットモらしい御託宣を述べるわけでございますが、このうち「未来」に関しては、予想時点では誰にもわからないことですから、ある意味無責任なことを言ってもいいわけでございまして、たとえば「近い将来、アナタは理想の男性と巡り会う」と断言したところで、その場において当たったかハズレたかは判断できないわけでございます。

 かし、「過去」「現在」に関してはそうはいきません。本人は知っているわけですから当たりハズレはその場でハッキリしてしまいます。こういう時、占い師は一般に「ハズレるリスクがないこと」を言うものだそうで、たとえば「アナタは今、何か悩みごとを抱えていますね?」などと曖昧なことを言えば、相手の方で勝手に「ああ、あのコトかな…当たってるワ」などと思ってくれるわけでございます。「アナタは今日の朝食に小倉あんパン(栗ナシ)を食べてきましたね?」などと言えばハズレるリスクが極めて高いわけですから、そんな限定的なことは間違っても言わないわけでございますね。

 て、足裏マッサージ。これは台湾が有名ですし、店もそこらじゅうにございますから、ワタクシは実質的には3日間だった滞在中に2つの店で3回やってもらいました。要するに着いた日以外は毎日必ず足裏をグリグリされてたというわけでございます。ちなみに、その「2つの店」のうちの一軒は下の写真の店、もう一軒が巻末グラビアにも載せた美人ナイスバディのマッサージ師・楊サンの店というわけでございます。

 

最初に行った店の入り口(注:念のため電話番号は変えてあります)

 ノの本によると、台湾の足裏マッサージ師はその人の足の裏のツボ状況を触診することによって、相手の身体の悪いトコをピタリと当てるとか。ふーむ…ホントかねぇ?上に書いた占い師みたいなモンなんじゃないのぉ?ワタクシが客としてマッサージされれば、海外から来た人間であることはすぐわかりますし、「仕事か旅行か」と質問して、旅行者であれば暑い昼間の観光である程度疲れているのが当然。どこかのツボをグリグリしながら「あ〜…疲れがたまってますね〜」とでも言えば絶対にハズレっこない。そんなモンなんじゃないのかなぁ?

 直申し上げて、一軒目に行ったマッサージ店は「そんなモン」だったような気が致します。女性が棒を使って足をグリグリするマッサージはバンコクでもヤラレたのと同じで、とにかく痛い。ツボに響く痛さではなく、とにかく棒で痛めつけられる物理的な痛さが痛い。もしワタクシがこの店のマッサージしか体験していなければ「台湾足裏マッサージ恐るるに足らず」と申し上げたところでございましょう。ところが次の日に行った楊サンの店はさすがでございました。

 に入った時は風俗マッサージ店かと思ってしまった超ミニスカ姿の楊サンにしばらく足湯してもらい、桃などをもらって食っているとやがて男性足裏マッサージ師が現れました。ワタクシの見たところ、ある程度手に力が必要な足裏マッサージはやはり男性が担当する場合が多いようで、この男性足裏マッサージ師もガッシリした体格で指も太く、もちろん棒なんか使いません。指のフシのところでグリグリとツボを攻め立ててまいりまして、これがまた痛い。痛いけど、棒を使うのとは違ってもう少し「ツボに響く痛さ」という感じでございます。

 の男性マッサージ師は日本語も多少はできる方。しばらくワタクシの足裏をあちこちグリグリやっているうちに、特に痛いツボがありまして、ワタクシが「あいててて…!」と顔をゆがめると「ここ のう(脳)のつぼ。あなた ねぶそくね」などと言ってきます。なーんだ…「寝不足ね」なんて、まさに「ハズレる恐れがない」御託宣の典型じゃん。言えば大体相手は「ああ、そういや寝不足かなぁ」と思ってくれるはず。足裏マッサージっていっても、やっぱり占いと同じようなモンか…。

 うやってグリグリされ続けていると、また別のツボがやたらに痛い。あいてててて…!するとクダンのマッサージ師のオジサンがまたオゴソカに指摘するではございませんか。「ここ くび。くび かたい。ゆびが しびれたり しない?」

 タクシ、これにはホントに仰天いたしました。中には御存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ワタクシ、実は昨年の2〜3月に左人差し指が痺れるので整形外科に行ったところ、頚椎が悪いと言われ、MRI検査をしたり、首を牽引したりという通院生活を数カ月続けたことがあるのでございます。その後指のシビレは止まり、治療もずーっとサボッておりますが、最近少し指に違和感があって、職場が変わったら新しい会社の近所に整形外科を探さなければいけないかな…などと思っていたところだったのでございます。

 さかそれをピタリと当てるとはッ!これは「ハズレる恐れのない曖昧なこと」ではございませんし、当てずっぽうで「指のシビレ」などと限定的な症状を指摘するとも考えられません。ということは、このマッサージ師さんはワタクシの足裏の状況(あるいはワタクシの痛がる状況)だけからワタクシの頸椎の状態を読み取ったと考えざるを得ません。ほ、ホントなの?いやこれはスゴい。ビクリしたよわたし(←中国なまり)。中国四千年の歴史に支えられた足裏マッサージ…さすがである。

 ちろんワタクシは正直に、昨年日本で首が悪いと言われたこと。実際、指もシビレたことがあることなどを正直に告白し、彼の足裏触診技術に敬服したわけでございますが、さぁこうなるとさっきまで「しょせん占いと同程度」などと懐疑的に見ていたマッサージ師さんが突然、マブシい神秘の後光に照らされた名医か何かに思えてまいります。いわんやは極めて単純なオトコなのでございます。

  

マ「まくら たかいと くびに よくないね」

イ「は、はい…(うう、やっぱテンピュール枕を買うか…)」

マ「かた まわる? いずれ ごじゅうかた なるかも」

イ「え?そ、そうなんスか?(オロオロ…)」

マ「うで まいにち ぐるっとまわす こっちと はんたいがわと さんじゅっかいづつ そしたら だいじょぶ」

イ「は、はい…」

 タクシが悪うございました。占いと同じなどと思って大変失礼致しました。足裏マッサージにもやはり腕の差というのはあるのでしょうが、ソコソコ腕のいいマッサージ師であれば相手の体調や身体の不具合などは相当のことがわかるようで、少なくも楊サンの店のマッサージ師サンはある程度の腕のある方と信用してイイようでございます。もしまた台北を訪れる機会があればまた行ってみることに致しましょう。場所も覚えておりますし。

 ?楊サンの店の写真はないのかって?すみません、ないのです。1日目に楊サンの店に行って「もし来れたら明日も来るネ」という話をした翌日、せっかくだから店の写真を撮ろうかと思ってソーッと店に近付いたら、店の奥で電話をしていた楊サンにたちまち発見されてしまい(覚えやすい顔というのも時には困るものでございます)、写真どころではなかったのでございます。

  

しょうがないので美人の楊サンの写真をもう一度…(笑)

 湾から帰国後、ワタクシは勤め先を移籍したわけでございますが、移った先のオフィスでワタクシはミョーな習慣が出来てしまいました。それは何かと言えば、椅子から立ってトイレなどに歩いていく時、あのマッサージ師サンに言われたことを思い出し、五十肩の予防のために腕をブルンブルン回すクセがついてしまったことでございまして、みなさまは大丈夫ですか?ちゃんと肩が自分の耳にくっつくくらい腕を垂直に上げられますか?え?痛くてそこまで上がらない?あー、それ ごじゅうかたね。よくないよ。たいぺい いって まっさーじ してもらう いいね。

  

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