2004.02.20

誤字等No.034

【保障書】(誤変科)

Google検索結果 2004/02/20 保障書:300件

保証」と「保障」は、非常に使い分けが難しい言葉のようです。
普段から言葉遣いに十分気を配っている人でさえ、両者の違いを理解していないことが少なくありません。
さらにもうひとつ「補償」も加えて、三つの言葉がごちゃ混ぜとなり、ときに混乱を呼びます。

上記三つの言葉、その意味には明確な違いがあります。
その違いをしっかり理解していれば、使い分けは可能なのです。

保証」は、「うけあう」こと。
「間違いない」と太鼓判を押す、責任を持つ、といった意味で使われます。
家電製品などに付いてくる「保証書」は、メーカーが製品の品質を「確かなもの」であると請け合う書面です。
借金の「保証人」とは、本来の借り手がお金を返せなくなったら、代わりに払う責任を請け合う人です。

保障」は、「まもる」こと。
「城」や「砦」のように、危険から身を守り、支え、防ぐことを意味しています。
安全保障条約」は、他国からの侵略に対して「国を守る」ことに関する国家間の取り決めです。
警備保障会社」とは、火事や盗難などの不測の事態にそなえ、守ることを業務とする会社です。

そして「補償」は、「つぐなう」こと。
弁償する、埋め合わせをする、といった意味です。
損害補償」とは、他人に損害を与えた者がその埋め合わせをするものであり、「補償金」は財産上の損害を金銭で埋め合わせるものです。

こうやって見比べてみれば、家電製品のメーカーが製品に「保障書」や「補償書」を付けてくることなどありえないことが分かるでしょう。
紙一枚で身を守れるわけでもありませんし、買った時点で「償います」と言われても、何のことやら。
しかし一般には、「保障書」で何の問題もなく話が通じることも少なくありません。
三つの言葉の意味の違いがあまり意識されていないので、「どれも似たような言葉」と思われているからでしょうか。

曖昧さを許容し、その場に応じた適切な意味を判別して、認識する。
それは、日本語あるいは日本人の持つ特異な能力なのかもしれません。
でもそれは「日常会話」レベルでの話。
公開されたWEBページで真面目な話を展開しながら、このような誤字に気付いていなかったりすると、せっかくの威厳が「がた落ち」になります。

特に目に付くのは、ニュースや論評などの文章に登場する「安全保証」という言葉。
「日米安全保証条約」などと書いているようでは、文章全体の信憑性にも影響します。
一見、「アメリカが日本の安全を保証する条約」として、意味が通りそうですけどね。
安全保証」と「安全保障」では意味が全然違う、ということに注意したいものです。

他にも、三つの言葉の意味を冷静に考えてみると、結構滑稽な間違いが多いものです。
「損害保証」なんて、代表的ですね。
損害を「保証」されてもうれしくありません。
損害は「補償」して、品質を「保証」して欲しいものです。
連帯保障人」も傑作。そんなに、みんなで守ってもらわなくても…。

保証書」に関して言えば、誤字は他にもあります。
読むときに「ほしょうしょ」で止めることができずに、「ほしょうしょう」と発音している人、心当たりはありませんか?
おそらく、そのあたりから生まれたのでしょうか。
保障証」や「保証証」(!) という表記も見つけることができました。
正しい意味で使っている場面もあるのかもしれませんが、明らかに「保証書」のことを示している場合は、誤字と言えそうです。

言葉が曖昧でも意味が通じるのは、日本語の利点の一つ。
それに甘えて知識を曖昧なままにしておくか、本当の知識を身に付けるか、それはその人次第。
このたったひとつの「考え方の違い」は、いずれ大きな「差」としてあらわれてくる。
そんな気がします。

[実例]

日本人とは、かくも「誤変換」に弱いのでしょうか。
このような「誤変換」が原因と思われる誤字等の品種を、「誤変科(ごへんか)」と命名しました。

[亜種]

補償書:110件
保障人:223件
安全保証:34,600件
安全補償:205件
警備保証:264件
警備補償:67件
保障金:3,830件
損害保証:1,790件
保障証:77件
保証証:422件
補償証:20件

前 目次 次