2004.02.23

誤字等No.035

【トレビアの泉】(外誤科 固有亜科)

Google検索結果 2004/02/23 トレビアの泉:1,770件

トリビアの泉」というTV番組があります。
深夜からゴールデンタイムに移動し、一躍人気番組となりました。
「へぇ」という流行語を生み出し、多くの日本人を「雑学好き」に変えています。
番組タイトルの「トリビア」は、既に番組の枠を離れ、「薀蓄」「ムダ知識」を意味する言葉として日常的に使われるようになってきました。

この番組名を「トレビアの泉」と発音している人、身近にいませんか?
面白いことに、「トレビア」と発音する人の中には、「トレビア」だと信じて疑わない人がいるようなのです。
毎週欠かさず番組を見ているにもかかわらず、です。
番組中、何度「トリビア」という言葉が使われようと、その人の耳には「トレビア」としか聞こえないのでしょうか。
一説には、出演者であるタモリさん自身も「トレビア」と表記したことがあるとか。
事実だとすると、「トレビア」の勢力は極めて根強いと言うほかありません。

無論、ただ単に「トリビア」よりも「トレビア」の方が発音しやすいから、という理由も考えられます。
でも、それだけとは思えません。

確証はありませんが、ある程度以上の年齢になると「トレビア」と思い込む割合が高くなる傾向があるような気がします。
なぜでしょうか。

トレビア」という勘違いの原因のひとつは、番組名の由来にあります。
トリビアの泉」という命名は、「ささいなこと」を意味する「trivia(トリビア)」と、ローマの観光名所「トレビの泉」をかけた言葉遊びです。
この二つが頭の中で混線すると、「トレビアの泉」になってしまうわけですね。

そして「トレビの泉」は、映画「ローマの休日」によって有名になりました。
上述の「ある程度以上の年齢」が、「ローマの休日」に心酔した世代を意味しているとしたらどうでしょう。
映画によって、「真実の口」や「トレビの泉」という言葉を刷り込まれてしまった人たち。
耳から入った「トリビアの泉」という言葉を、自動的に「トレビアの泉」と変換してしまうのも無理はありません。
実際、番組名を「トレビの泉」と言ってしまう人もいるくらいですから、刷り込まれた言葉の影響力とは、大きいものです。

将来、「ローマの休日」を知る世代が少なくなり、そのときまで「トリビア」という言葉が生き残っていたら。
立場は逆転し、ローマの観光名所を「トリビの泉」と言ってしまう人が現れる、かもしれません。

もうひとつ考えられる原因は、「トレビアン」という言葉の存在です。
フランス語で「tres(トレ)」は「とても」、「bien(ビアン)」は「良い」を意味し、英語では「very well」に相当します。
これに由来する「トレビアン」という外来語は、「すばらしい」という意味の感動詞として、日本語にも定着しました。
フランス語を全然知らなくても、「ボンジュール」「メルシー」「ジュテーム」あたりと並んで、「トレビアン」くらいなら聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
この言葉になじみがある人にとっては、「トリビア」よりも「トレビア」の方が自然に感じられることもあるのでしょう。
そのため、無意識のうちに「トレビアの泉」と発音してしまうのかもしれません。

ところで。
「この番組のタイトルは………『トレビアの泉』ではない」
番組内で、一度こんなトリビアを放送してみたら、はたしてどんな反応があるでしょうか。

[実例]

日本人とは、かくも「外国語の発音」に弱いのでしょうか。
このような「外国語の発音」が原因と思われる誤字等の品種を、「外誤科(がいごか)」と命名しました。
そして、外誤の波は人名や地名などの「固有名詞」にまで及んでいます。
そのような品種を、外誤科から分岐した「固有亜科(こゆうあか)」と命名しました。

[亜種]

トレビアの種:23件
金の能:13件
銀の能:6件

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