2004.05.25

誤字等No.075

【こんばんわ】(平誤科)

Google検索結果 2004/05/25 こんばんわ:249,000件

「平誤科」という分類を作った以上、いつまでも「大御所」を放ってはおけません。
日常的に使われていて、なおかつ間違いの多い、「挨拶の言葉」の登場です。
最初は「こんにちわ」を話題にしようと思っていたのですが、「『こんにちわ』撲滅委員会」という素晴らしいサイトがありましたので、そちらに譲ります。
その代わりに、誤字等の館では同類である「こんばんわ」を表題にしてみることにしました。

検索結果の件数を比べてみると、わずかですが「こんばんわ」の方が多いです。
こんにちは」は「」で、「こんばんわ」は「」だと思い込んでいる人までいました。
冷静に考えることさえできれば、「そんなわけない」と気づいてもよさそうなものですが…

この結果は、少し意外でした。
こんばんは」より「こんにちは」の方が一般的な「挨拶」として使われている以上、誤字も「こんちにわ」の方が多いと思っていたのですが。
当然ながら、正解である「こんにちは」の件数は「こんばんは」よりも圧倒的に多いです。
つまり、「こんばんは」の方が「誤字率」がずっと高いことになります。

なぜ、「こんばんわ」の方が多いのでしょう。
検索結果には、掲示板の類への書き込みと見られるものが非常に目立ちます。
こういった書き込みをする人は、「夜型人間」が多いのかもしれません。
書き込みをしている時点が夜であれば、「こんばんは」という挨拶を使いたくなるもなるでしょう。
こういった書き込みは一般的に、「正式な文章」など要求されてはいません。
そんな場面だからこそ、誤字が出現する確率が高くなる要因もありそうです。

あるいは、「挨拶」として「こんにちは」よりも一般的でない分、誤字かそうでないかと考える意識も「こんばんは」の方が薄いとも考えられます。
こんにちわ」は誤字として訂正された記憶があっても、「こんばんわ」を訂正された記憶がない。
だから「こんばんわ」で正しい、といったところでしょうか。

改めて言うまでもなく、「こんにちわ」「こんばんわ」は、ともに誤字です。
こんにちは」「こんばんは」の「」は「助詞」、いわゆる「てにをは」の「」であり、「これは」「私は」などの「」と同じです。
今日は」「今晩は」の後に続く、「良いお天気ですね」などが省略された形の挨拶ですから、「」になることはありません。
そのような起源を意識することなく単体で「挨拶の言葉」とする使い方しか知らないため、発音通りに「」と表記してしまう人が多いのでしょう。

てにをは」の表記を間違えるということは、小学生が作文で「ぼくわ、」と書き始めるのと同等と言えます。
「ぼくわ、学校え行って、べんきょうおします。」
こんな文章を見たら、「もっとちゃんと勉強しなさい」と応援したくなりませんか?
これと同じレベルだと言われても、「こんばんわ」という挨拶を使い続けることができるでしょうか。

こんにちわ」も「こんばんわ」も、それを使う人にはいくつかのパターンがあります。

まずは、それが誤字であることに気付いていない人。
きっと、小学校の「国語の時間」が嫌いだったのでしょう。
読書の習慣も持ち合わせていないと思われます。
言葉を「聞く」ことは多くても「読む」ことは少ないという生活であれば、誤字を意識することもなくなります。
このような人がそのまま社会人になってしまったら、かなりの苦労を強いられることが予想されます。
しかし、少しだけ意識を変えることで急成長が見込めるのもこういった人たちです。
親身になって間違いを指摘してくれる仲間にめぐり会えるかどうか、その人の言葉に謙虚に耳を傾けることができるかどうかが分かれ目です。

次に、「こんばんは」と「こんばんわ」のどちらが正しいのか、自信のない人。
小学校で習ったような気はするのだが、本当はどうだったか確信が持てないというパターンです。
辞書で調べればすぐに分かるはずなのに、それを「面倒」だと思ってしまうのでしょうか。
いつまでも気にし続けるのは、精神衛生上も良くありません。
もう少し、疑問を自ら解決する「行動力」を身に付けた方が良さそうです。

そして、「どっちでもいい」と思っている人。
言葉に対する思い入れがなく、「正しい言葉」という概念に関心がありません。
権威に逆らうことで自己を表現しようとする若者にも、多く見られる特徴です。
適当な話題を、適当な言葉遣いで繰り広げる人たち。
そのような環境では、誤字を誤字として認識する機会自体がありません。
精神的に成熟して人生観が変わるまで、このような人たちの誤字はなくならないことでしょう。

最後に、「分かっていて使う」人たち。
堅苦しい文章を嫌い、あえて誤字を使うことで文章全体の雰囲気を変えようとします。
正式な文章か、そうでないかで「使い分け」もすることでしょう。
誤字によって、「親しみやすさ」などが演出されると考えているのでしょうか。
しかし私には、そんな中途半端な主張で何かが言えるとは思えません。
前述のように、「こんにちわ」「こんばんわ」は「てにをは」の間違いです。
通常の「てにをは」まで上記の小学生のような書き方をするのであれば徹底していますが、そこまで思い切った人はなかなかいません。

なお、補足ですが、「点字」で「は」を「わ」と表記するといったケースは除外します。
それは正しいルールに基づく表記であり、誤字ではありませんので、「誤字と分かっていて使う」パターンにはあてはまりません。

挨拶の言葉は、その国の文化です。
日本語を母語とする日本人なら、挨拶の言葉くらい正しく覚えて欲しいと願うのは、贅沢でしょうか。

[実例]

日本人とは、かくも「平仮名の間違い」に弱いのでしょうか。
このような「平仮名の間違い」が原因と思われる誤字等の品種を、「平誤科(ひらごか)」と命名しました。

[亜種]

今晩わ:4,110件
コンバンワ:16,400件
こんにちわ:213,000件
今日わ:5,970件
コンニチワ:18,500件

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