2004.06.22

誤字等No.087

【20004年】(似字科)

Google検索結果 2004/06/22 20004年:828件

正直言って、今回は分類に悩みました。新しい科の創設も本気で検討しました。
あるいは、「未分類」という逃げを使ってしまおうか、とも考えました。
最終的には、「見た目が似ていることが誤字の原因」という推論を根拠に、「似字科」に分類することに決めました。
今回の誤字は、「20004年」です。

別に「20003年」でも「20005年」でも良かったのですが、これを書いているのが2004年なので、「20004年」を採用しました。
他の年の検索結果は、「亜種」の項でご紹介します。

西暦20004年」とは、今から何年後でしょうか?
そんな未来まで、人類は生き延びているのでしょうか?
実は、西暦ではなく、別の暦で表記しているのでしょうか?

などというわけもなく、ほとんどすべてのページは「2004年」の誤記です。
うっかり、ゼロをひとつ余計に付けてしまったのでしょう。
タイプしている最中に打ち間違えるくらいなら、「よくあること」かもしれません。
しかし、そのまま誰も気付かずにWEBで公開してしまうとは、どういうことでしょうか。

本当に未来の話をしている文脈でない限り、「20004年」という表記を見て、そのまま解釈する人など滅多にいません。
そういった意味では、「情報伝達」に支障はない類の誤字等とも言えます。
気付いた人が、「何だこれ?」と笑っておしまい、という程度のものと考えられます。
しかし、だからこそ、「知識不足」などの言い訳が一切きかない「純粋なミス」として、「恥」を露呈していることにもなります。

「知識不足」や「間違った思い込み」は、必ずしも恥とはなりません。
「全知」の能力を持った人間などいませんし、思い込みは誰にでもあることです。
誰かに指摘されたり、教えられたり、自ら調べたり、といった手法で正しい知識を獲得しさえすれば、その間違いは解消されます。
むしろ、指摘に対して逆恨みするような人こそ、本当の意味で「恥」でしょう。

対して、「20004年」のような誤字はどうでしょうか。
打ち間違いは誰にでもあることですが、それを見逃すことは「注意不足」によるものです。
その上、同じミスを繰り返しているようだと「注意力の欠如」が疑われます。
こうなると「個人の資質」に因る話になってしまいますので、修正は容易でなくなります。
そう考えると、数多の誤字等の中でも、「20004年」は意外と根が深いものなのかもしれません。

ところで、単純な数字の羅列というものは、実に間違いが起きやすいものです。
桁数の多い数字に三桁ごとにカンマを入れる表記法の存在が、それを立証しています。
この表記法を使っていれば、「2,004年」と「20,004年」の違いは目立ちやすくなります。
もっとも、「2,0004年」と表記されてしまえばどうしようもありませんが…

区切りが三桁ごとに入るという事実は、人間が区切りなしで直感的に理解できる数字の限界は「三桁」であるという解釈につなげることが可能です。
だとするならば、「四桁」となった西暦は、既にその限界を超えてしまっていることになります。
西暦の表示を「下二桁」だけで行うことが多いのも、そのあたりに一因があるのかもしれません。

この三桁ごとに区切りを入れるという手法、日本人にとってはあまりありがたいものではありません。
英語では言葉上の位取りとカンマの区切りが完全に一致しているため、直感的に理解しやすいシステムになっています。
「1,000」が「one thousand」、「1,000,000」が「one million」、「1,000,000,000」が「one billion」といった具合ですね。
ところが、日本人は「万」「億」「兆」と四桁ごとに位を変える習慣を持っているため、上記の数字は「千」「百万」「十億」となります。
日本語だけを見れば、なぜこんな半端なところに区切りを入れる必要があるのか、なんとも理解しづらいですね。
区切りを入れるなら、四桁ごとの方がずっと分かりやすいです。

このあたりは、本来の習慣と相容れないものを受け入れざるを得なかった日本人の不幸かも知れません。
ここはひとつ、西洋人が三桁を限界としているのに対して、日本人は四桁まで理解できるということで、日本人のほうが数字に関して優秀なのだということにしておきましょうか。
そのためには、その説を覆してしまう「20004年」の存在が「困り者」となります。
日本人の皆さん、せめて四桁までは、数字を正しく表記しましょう。

[実例]

日本人とは、かくも「似たような字形」に弱いのでしょうか。
このような「似たような字形」が原因と思われる誤字等の品種を、「似字科(じじか)」と命名しました。

[亜種]

19999年:265件
20000年:1,500件
20001年:3,090件
20002年:2,190件
20003年:995件
20005年:93件
20010年:38件
20040年:10件
20044年:60件
22004年:188件
200004年:4件

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