2005.04.02
誤字等の館 (ごじらのやかた) に寄せられる読者様のコメントに対して館主が答える「誤字等の談話室」、その第17弾です。
http://www.tt.rim.or.jp/~rudyard/gaigo023.html > ドイツ語の「karotin」に由来する「カロチン」を否定し、英語の「carotene」 > に鞍替えしたことが、「カロテン」という言葉の発祥らしいです。 > しかし、「carotene」自身は「カロテン」なんて読みません。 > カタカナで書くなら「カロティーン」あるいは「キャロティーン」といった > ところでしょう。 > そんな「変」な読み方をしておいて、「これからは英語の時代」だなんてよくも > 言えたものです。 これは、化学の世界の歴史的事情があって、現時点ではどうしようもない状況です。 もともと日本の化学用語には、ドイツ語から入ったものがたくさんあります。 そのときは「ドイツ語読み≒ローマ字読み」だったので問題がなかったのですが、 その後、化学物質の世界共通名称は英語で命名するということになったときに、 今までドイツ語読みを使っていた日本では困ってしまいました。 既に日本語として定着してしまった単語があるからです。 「プロパン」「ビニール」「エタノール」etc. 英語読みでは「プロゥペイン」「ヴァイヌル」「イーサノール」となりますが、 いまさら日常語のほうを変えるわけにもいきません。 そこで苦肉の策として、「英語表記を一定のルールに基づきローマ字読みして、 カタカナ表記する」という方法が採用されました。この方式は日本化学会の公式 見解で、「字訳」という名前がついています。 将来的に字訳を続けるべきか英語の音訳に変えるべきかという問題はありますが、 ともかく、学術系の話(ルールを決めてあえてやっている)と、一般の英語の話 (ルールではなく誤解の積み重ね)とは切り離して考えるべきかと思います。
なんと、そんな事情が。
まったく、存じませんでした。
さっそく検索してみたところ、いくつか詳しい解説を見つけることができました。
(参考:書く人と読む人のための化合物名−情報検索に備えて−)
どう見ても「英単語をローマ字読み」した発音だと思っていましたが、実際にその通りのルールだったとは。
確かに、それなら「carotene」が「カロテン」になるのも理解できます。
完全に、納得しました。
トマトに含まれる抗酸化物質として有名な「リコピン」も、この規則で読めば「リコペン」ですね。
「インシュリン」が「インスリン」と呼ばれるようになったのも、同じ理由によるものでしょう。
もともとは、「学問の世界」の事情。
それが、「一般で使われている言葉」にまで影響したひとつの例が「カロテン」。
ところが、その「事情」は「学問の外」にはあまり知られることなく。
「英語の時代だから、英語読みに変わった」などというデタラメを吹聴する半可通が現れた、と。
そんなところでしょうか。
ご指摘の通り、「学術系の話」と「一般の話」は切り離すべきだと私も思います。
ただ、半可通の言葉を真に受けて、「カロテン」が「英語読み」だと無邪気に信じ込んでしまっている人たちが多いこともまた事実。
「実はローマ字読み」と言っても、なんでそんなことをするのか、なかなか理解しづらいでしょうね。
ともあれ、疑問は解消しました。
教えていただき、ありがとうございます。