2005.09.24

【誤字等の談話室 32】

誤字等の館 (ごじらのやかた) に寄せられる読者様のコメントに対して館主が答える「誤字等の談話室」、その第32弾です。

[080]

番号092で解説している「送れてすみません」なんですが、「すみません」は「すい
ません」とは違うのでしょうか?

「すみません」と「すいません」は、同じ言葉です。
「すみません」が本来の形、「すいません」はその発音が崩れた口語です。
少なくとも、公式な場面で「すいません」を使うのはふさわしくありません。
もし、「すいません」の方を常用しているのなら、注意が必要です。

「すみません」は、「感謝 (ありがとう)」「謝罪 (ごめんなさい)」「依頼 (お願いします)」など、様々な意味を兼ね備えた万能の挨拶用語です。
それだけに、どんな場面でもとりあえず「すみません」と言っておけば間違いない、という安易な「逃げ道」としての存在となっています。
諸外国と比較して「簡単に謝罪する日本人」のイメージも、この言葉に由来する部分が大きいのではないでしょうか。

語彙が少なく、言葉を選ぶことが苦手な人ほど、「すみません」を多用する傾向が強まります。
その意味では、「すみません」自体、あまりお勧めできる言葉ではありません。
意味が多いということは、見方を変えれば「意思の伝達」には役に立たないことと同じです。
単に「すみません」と言っただけでは、相手が「謝罪」ととるか「感謝」ととるかわからないわけですから。

このように使用頻度が高い言葉は、より「発音しやすい」方向に変化することがあります。
「すみません」が「すいません」に変化した理由のひとつは、「すみません」自体の利用頻度の高さにあるのではないでしょうか。

「すみません」の場合、「ま行」の連続する「みま」が、「発音しづらい」部分です。
唇の開閉を連続して行う必要があるため、特に早口でしゃべるときにはひっかかることが多くなります。
この「唇の連続開閉」を嫌い、子音をひとつ省略したものが「すいません」です。
ローマ字で表現すれば、「sumimasen」から「m」がひとつ脱落し、「suimasen」となった形です。

専門用語で「イ音便」と呼ばれる現象に似ています。
「音便」自体は日本語のルールのひとつですので、「音便」であるなら「すいません」も「間違い」とまでは言えません。
ただ、本来の「イ音便」からは、少々外れた例外的な変化に見えます。
「正しい言葉」として認定されるほどの地位は得ていないのではないでしょうか。

余談ですが、「sumimasen」から「m」ではなく「i」の方が落ちる変化もあります。
すると発音は「summasen」→「すんません」と変わります。
どちらかと言えば「方言」としてよく見られそうな変化です。
関西で使われる「すんまへん」も、この系統でしょうかね。

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