読書感想
4月17日

 ・「ちほう・の・じだい」 梶尾真治

 SFあり、ホラーありの短編集。著者は「短編の名手」と呼ばれるほど良質の短編を書くことで有名らしい(らしいというのは初めてこの人の本を読んだから。名前だけは知ってたんだけど)。
 あるひ、ほとんどの人が痴呆症状態になってしまった世界を書いた表題作や、ホロリとさせるタイムトラベルもの、少し下ネタの入ったものなどバラエティに富んでいて、なんとなく得したような気がした。これだけを読んでも「短編の名手」と呼ばれるのが良くわかる、と思う。こうなると他の作品を読まないと気がすまなくなるんだけど、積読の量がなぁ...。でも、結構昔から書いてる人だから下手すると絶版、古書店巡り、プレミアついて買えなくなる、な道をたどらないとも限らないからなぁ。もう少し早くに出会えていたらなぁ、とつくづく悔やまれる。
(でも、どうせ見つけたら片っ端から買ってしまうんだろうけど)

推薦度 ★★★★☆


4月9日

 ・「心理試験 他6編」 江戸川乱歩

 春陽文庫から出ている江戸川乱歩文庫の1冊で7冊目に位置するみたい。昔、いわゆる「少年探偵団」ものは数冊読んだことはあるんだけど、こういうのは今まで読んだことが無かったのと、デビュー作の『二銭銅貨』が読んでみたかったので購入。
 でも、こういうのって結構時系列で並べてたりするから1冊目から読んだ方が良かったかな、と思った。表題作の『心理試験』で「D坂殺人事件を読んだ人は...」といった文章があり、明知小五郎がその事件で名を馳せた様なことが書いてあり、『D坂の殺人事件』は1冊目に収録されていた。

 ・心理試験

老婆の殺人事件の真犯人を心理試験を使って二人の容疑者から探そうと言う話。と、書くとファンから怒られそうだけど、簡単に書くこんな感じ。
映画のコロンボ警部シリーズみたいに最初の方で殺人が行なわれた事を書いているので読者には誰が犯人かわかるのだけど、それを探偵がどのようにして推理したのかといった過程を楽しむというのは、文章だけでも味わえるものだというのを実感した気がする。ていうか、ミステリの短編ってあんまり読んだことがないだけか。自分的には新鮮な感じがして面白かった。
 ・二銭銅貨
細工された二銭銅貨から見つけた暗号表から読み取った文章は金の書くし場所か?
といった様な話。最近のミステリばかりを読んでいると「なんだ」って感じがしないでもないけど、全体が良くまとまっている話で読後感が良かった。もうちょっと早く読んでいれば、もっと手放しで面白いと言えたかもしれない。
 ・二廃人
自分が過去に夢遊病で犯した殺人は、実は...と言った話。途中で落ちが読めてしまったのであんまり面白いとは思えなかった。
 ・一枚の切符
列車に轢かれて死亡した婦人は自殺か、他殺か?みたいな話。この本のなかでは一番面白くなかった。と、言っても全然つまらないわけじゃなく、あくまでこの本の中ではだから。でも、それほど書くことがないなぁ。
 ・百面相役者
巷で有名な変装名人の役者は過去の猟奇事件の犯人か?みたいな話。これもなんとなく結末が読めてしまった。やっぱり、最近のミステリが懲りすぎてるせいかもしれない。
 ・柘榴
一人の警察官が解決した過去の事件の真相は?みたいな話。この本の中では一番ページ数が多い話で、それなりに面白かった。けど、やっぱり結末が読めてしまった。
 ・芋虫
この本のなかで唯一犯罪も推理も素人探偵も出てこない話。戦争で手足を失い声も出すことが出来なくなった兵隊とその妻の話。どこかで、これと似たような話を見たことがあるのだけど、それもやっぱり乱歩が書いたものの粗筋を読んだのかもしれない。ラストがなんとなく悲しいものだった。

推薦度 ★★☆☆☆


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