1.百年戦争の発端


      1337〜1453年にわたって続けられた「百年戦争」はシャルル4世が
    男子の跡継ぎの無いまま不意に死んでしまったことにありました。
      シャルル4世には、息子も兄弟もいなかったのです。そのため、3人の候補
    者が「俺に国王になる権利がある」同時に名乗り出たのです。

      1人はイギリス国王エドワード3世で、彼の母親がフィリップ4世の娘でし
    た。つまり彼はシャルル4世の甥にあたる訳です。
      もう1人はフィリップ・デヴリアという人物で、彼は1234年にフランス
    の王侯に支配されたナヴァルという国の国王でした。
      そして、もう1人が後のフィリップ6世となるヴァロア家のフィリップです。
    ヴァロア家というのは簡単にいってしまえば王族の分家です。江戸時代の松平
    家とか水戸家とかいったようなものですね。

      で、ヴァロア家のフィリップは「王国に生まれた」という理由だけでフラン
    ス国王となりました。まあ、2番目のフィリップ・デブリアはともかく、すで
    にイギリス国王となっていたエドワード3世を国王にするよりはフランス人の
    フィリップを国王したかったのでしょう。

      それでも(それだからこそ?)他の2人は王位を諦めきれませんでした。

      とくに、エドワード3世は野心家であり、かねてから大陸進出への夢を持っ
    ていたので簡単には引き下がれません。そこで、武力でもって王位につくため
    の準備を始めました。

      この頃の戦争といえば騎士による戦闘が中心で最初に弓を少し撃ち合い、そ
    の後騎士が突撃するというのが一般的でした。で、騎士の質というか腕はイギ
    リスに比べフランスの方が上だったようです。
      そこで、エドワード3世は新しい戦術を考えました。弩(おおゆみ)と呼ば
    れる親兵器を持った歩兵の密集部隊を使って緒戦の弓の撃ち合いの時に少しで
    も戦える騎士の数を減らそうとしたのです。
      エドワード3世はこの弩の部隊の育成に10数年を費やしました。

      この弩の出現により騎士の位置づけが段々と変化して行くのですが、それは
    場所を変えて書きたいと思います。

      また、この戦争には王位継承の問題以外にフランスの北の方にあるフランド
    ル地方が絡んでいました。

      フランドル地方は当時はまだフランスの領土ではありませんでした。

      この地方は毛織物工業でが経済の中心で、その原料となる羊毛はイギリスか
    ら輸入をしていたのです。結構豊かな所だったらしく、フランス王が代々フラ
    ンドルに対してしばしば不利な条件での取り引きを強要してました。
      不利な条件というのが何だったのか手元の資料には詳しく書いていないので
    すが最後には武力をちらつかせていたのではないかなと思います。

      そのため、この地方を支配していたフランドル伯は親仏的でしたが市民はそ
    んなフランスに不満を持っていたため親英的でした。(まあ当然でしょうね)

      そして、エドワード3世がフランスへ侵攻しようとしている事を知ったフラ
    ンドルの市民は取引先のイギリス商人を動かし、フランスに対し戦争を仕掛け
    るように仕向けたのでした。
      そして、エドワード3世はフランドルが支援してくれるのならと戦端を開い
    たのです。
   
      こうして、「百年戦争」は始まりました。

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