★ルーベンスの絵3

 大なるフランドルの画家・バロック絵画の巨匠・ルーベンス氏。ついにこの芸術対談集3回目の登場でございます。今回はえん様の投稿がキッカケでルーベンス氏の作品の中でも特に「我が子を食らうサトュルヌス 」に関して深い考察を加えております。しかしどう考えても、えん様が御覧になった絵と我々が見た絵は別の絵であるとしか思えないのですが…。今回はその疑問を解明するために、トホ妻帝国タイムスともタイアップしているわけでございます。

対談Part1:いわんや家・Mac部屋

いわんや「こないださぁ、えんさんってヒトから投稿が来たんだよ」

トホ妻 「どんな」

いわんや「まぁ何つーか…最初にトホ妻帝国に来たキッカケが“ルーベンス”と“サトュルヌス” で検索したら引っ掛かったらしいんだよ。『プラド展』でルーベンスのサトュルヌスが日本に来た時の話なんだけどさ…」

トホ妻 「あ 〜あ…絵画やオペラの真面目な検索をしてあんなHPに来ちまった不幸な人が一体日本中にドレくらいいるのかね全く…」

いわんや「しかしさ、オレはどうもわかんねーんだよな。プラドで見たルーベンスのサトュルヌス、覚えてるだろ ?」

トホ妻 「そりゃ覚えてるよ。出来れば忘れたいところだけど(笑)」

いわんや「サトュルヌスは走ってたよな?」

トホ妻 「走ってた走ってた」

いわんや「空は青空だったよな?」

トホ妻 「うん。青空で…とにかくやたら明るい雰囲気の絵だったよね」

いわんや「そんでさぁ、確かサトュルヌスは走りながら涙を流してんだよ。それがもう…あまりに楽しそうな絵なんで、とりあえず涙でも描いとかなきゃマズいわなって感じで、いかにも後から描き足したと思いたくなるような涙でさぁ…」

トホ妻 「涙流してたっけ?でもとにかく青空の下を走りながら子供を食ってたのは間違いないよ」

いわんや「う〜ん…どうも、そのえんさんってヒトの言うサトュルヌスと、オレ達が見たのは違うんじゃないのかなぁ?」

トホ妻 「ありゃホントにスゴい絵だったよ。確かあの時はアタシとアナタはあの絵の前でしばらく言葉を失って立ち尽くしてたはずよ」

いわんや「ちょっとネットで検索してみようかなぁ…」

トホ妻 「サトュルヌスを?」

 わんやは向学心に溢れた知的なオトコでございます。こういう時は 調べずにはおれませぬ。しかし捜せばあるものでございますねぇ。ちょっとネットで検索してみたところ、ゴヤとルーベンスの「我が子を食らうサトュルヌス 」の画像はたちまち見つかったのでございます。ところが、それによってますます疑 問は深まるばかり…。   

対談Part2:数日後のいわんや家・Mac部屋

いわんや「なぁ、ちょっと来てこれ見てみ?」

トホ妻 「何よ?(Macの方に寄ってくる)」

いわんや「ほれ、まずコレ(ゴヤの方の画像を見せる)。これは当然見たよな?」

トホ妻 「おおお〜…スゴいねー、ゴヤ。これネットで検索したの?…まぁこの絵は有名だしね」

いわんや「で、ルー ベンスの方のサトュルヌスはコレだってことになってんだけどさ(ルーベンスの方の画像を見せる)」

トホ妻 「(絵を見る)・・・・コレじゃなかったよ。アタシ達が見たのは(断言)」

いわんや「だろ?違うよな?オレ達が見たのに比べれば、コレなんて遥かにマシだよな?」

トホ妻 「こっちは一応画面も暗いしさぁ、サトュルヌスも老人っぽい身体してるし、一応ソコソコは陰惨な感じがしてるじゃん、ゴヤほどじゃない けど」

いわんや「そもそもこんな絵あったっけか?『プラド展』にはコレが来たらしいんだけど…」

トホ妻 「そりゃね、多分こういうことだよ。最初、日本側の主催者が『ぜひサトュルヌスを貸して頂きたい』ってプラドに要望したんだろうね」

いわんや「でも、あのゴヤの方はとても貸さんだろう」

トホ妻 「ソコよ。だからプラドの方じゃ『ゴヤのサトュルヌスは貸せない。じゃ、ル ーベンスの方でも貸すか』ってことになったんだけど、アタシ達が見た方のサトュルヌスはいかに何でもヒトサマには見せられないと思ったんじゃない?」

いわんや「だははは!あんなモノ貸し出したらプラドの名に傷がつくもんな( 笑)」

トホ妻 「で、まだマシな方のこっちのサトュルヌスを日本に貸し出したんだと思うね」

いわんや「 つまりオレ達が見た方はあまりのヒドさに門外不出ってことか(笑)」

トホ妻 「とにかく、この絵じゃなかったことは確かだよ」

いわんや「うーむ…あの投稿をアップするとしたら、資料編 としてサトュルヌスの絵も一緒に載せようかと思ってたんだけど、カンジンの、一番ヒドいサトュルヌスの絵がなきゃなぁ…(この頃から、自分の記憶を元に描いてみようか、という気になり始める)」

 え描きましたよ。描きましたですとも。こうなりゃ自分で 描くしかございません。描きあがったモノは少なくともワタクシの印象ではかなり「 記憶に近い」ものに仕上がっておりますが、ここはやはり同じ絵を見た人間による客観的な検証も必要でございます。となれば当然またトホ妻の出番…

対談場所:そのまた数日後、いわんや家・Mac部屋

いわんや「ほれ、ちょっと来てこれ見てみ?」

トホ妻 「 今度は何よ?(Macの方に寄ってくる)」

いわんや「 実はさ、どうしても例の、オレ達が見た方のサトュルヌスを載せたくてさ、とうとう自分で描いたんだよ…」

トホ妻 「自分で描いたの!アレを!」

いわんや「ほれ、どうだ…(画像を見せる)」

トホ妻 「(絵を見る)・・・・こっ・・・これは・・・(言葉を失う)」

いわんや「でも大体こんな感じだっただろ?」

トホ妻 「う・・確かにサトュルヌスの顔はこんな感じだったし、こんな感じで子供を食ってたよ。子供を小脇に抱えるようにしてたはずで…」

いわんや「だから、こんな感じだろ?ヒョイと抱えるような感じで」

トホ妻 「まぁ・・・ね。上半身に関して言えば、ほぼまぁこんな感じだったね」

いわんや「だろ?だろ?」

トホ妻 「でもね。もっと縦長の絵だったと思うよ。それに、サトュルヌスはいくら何でもこんな風に足の裏見せて走ってなかったよ。もっとこんな感じでさぁ…(手元にあった紙に自分で描きだす)」

いわんや「いや、オレの記憶じゃむしろ横長の絵だったように思うけどなぁ」

トホ妻 「こーんな足はしてなかったよ。これくらいじゃない?(自分の描いた絵を見せる)」

いわんや「 それじゃ走ってる足じゃないじゃん」

トホ妻 「まぁ 早足で歩く…くらいの感じだったんじゃない?」

いわんや「いや、オレの印象じゃ、それこそ宙を飛ぶように走ってた記憶があるけどなぁ 」

トホ妻 「まぁね、こういうのはそのヒトの印象だ から…しかしコレは…それに、この辺にはもうちょっと木の枝とか葉っぱとかが見え てたんじゃなかった?」

いわんや「木の枝とか葉っぱなんてこの際どうでもいい。とにかくだ、足の形に記憶の相違はあるが、他は大体こんな感じだっただろ?青空だったし…」

トホ妻 「・・まぁ・・・ね・・・・」

いわんや「つまり足の形の問題を除けば、ほぼ両者の記憶は一致しているわけだ」

トホ妻  「・・・アナタ、これ、載せるの?」

いわんや「そのために描いたんだもん」

トホ妻 「・・・コレは・・ きっとルーベンスから告訴されるよ」

 れではいよいよ御覧頂く 時が来たようでございます。いわんやが乏しい記憶と、それ以上に乏しい画力を振り絞って描いた「我が子を食らうサトュルヌス・いわんや記憶バージョン」。詳細に関 しましてはトホ妻帝国タイムスが協賛する「サトュルヌス展」の方で御紹介しておりますので、どうぞそちらの方に…。

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