★トホ妻の受験勉強・日々是決戦!!

 示板にも書きましたが、昨年11月にトホ妻はある資格試験を受けております。その資格とは「簿記2級」。経理・財務ひとすじ20年のトホ妻でございますから、簿記というのはまさに彼女の毎日の仕事そのものなわけでございまして、今この時期に簿記2級を取ったからといって仕事内容が変わるわけでもないのですが、どうやら会社の方から「取れ」というオタッシが下ったらしく、夏頃からシブシブその準備に取りかかったのでございます。

トホ妻 「やだなぁ〜。やだよ〜。アタシ、今までの人生で試験に落ちたことないからこういうプレッシャーにはヤタラと弱いのよ」

いわんや「しッ試験に落ちたことがないッ?!オレなんて大学入試落ちまくって浪人したし、入社試験だって落ちまくって、やっとこさ最後に引っ掛かったトコに…」

トホ妻 「ふっふっふっ…アタシ落ちたことないのよ。大学の時はもちろん、就職の時も受けたトコロは受かったはずよ…大体さ、数社しか受けてないわけだから…」

いわんや「…けッ!…けーッ!!どうせ俺ァ受けまくって落ちまくったよ、けッ!」

トホ妻 「あ〜あ〜あ…でもさすがに今回はムリだよ。時間がなさすぎるもん。みんな半年とか一年とか勉強してんのにさ、アタシなんて夏から3ヶ月で慌ててやろうってんだからさ」

いわんや「でも、その分実務経験はあるわけだから、メチャクチャ不利ってわけでも…」

トホ妻 「あのねぇ、実務やってるから試験できるとは限らないの。それは試験受かったヤツがすぐに実務ができるわけじゃないのと一緒なのよ」

いわんや「ふ〜む…ま、しかしだ、人は挫折というものを知ってこそ“人間の幅”ってモンが出てくるわけであってだな、ここらで試験に落ちるという挫折を味わうのも人生の貴重な…」

トホ妻 「いやッ!い〜や〜ッ!!いい?これがアタシが受けたくて受ける試験なら落ちてもいいわよ。しかし会社から強制されてイヤイヤ受ける試験を落ちたら、また次の試験までイヤイヤ勉強しなきゃなんないのよ?冗談じゃないわよ!サッサと終わらせたいわよ、こんなモノ」

 かに、トホ妻の思考・行動パターンというのは「イヤなことほどサッサと済ませる」というタイプであることはワタクシも十分熟知しておりましたから、簿記2級試験などはサッサと受かってしまいたがるのは予想されたこと。同時にまた「サッサと受かるため」にこれから11月の試験にかけて相当ガリ勉するであろうということも予想はついたのでございます。しかしその後のいわんや家がアソコまで「日々是決戦」モードに突入してしまうとは…。

 どなくトホ妻は会社指定の簿記学校に仕事が終わったあと週一回通うようになりました。それに加えて毎日のように「アタシはこれから11時まで勉強するッ!」と宣言して食事の後などに簿記の勉強。しかも尚かつ、その上に通信教育用の講議テープを簿記学校から取り寄せ、それを我が家の、しかもMac部屋を使ってダビングし始めたのでございます。従いまして、ワタクシが家に帰ってみますと…

トホ妻 「今、あの部屋入らないでね。ダビングしてるとこなんだから」

いわんや「え?ダメなの?だってMacがあそこにあるからアソコに行かなきゃ…」

トホ妻 「HPなんていつだって作れるでしょ!ダメったらダメ!」

 方なくワタクシは忍び足で階段を昇り、着替えに向かうわけでございますが、Mac部屋の前を通るとイヤでもダビング中の講議テープの音が聞こえて参ります。まぁザッとこんな感じなのでございます。

…えー、従いまして、固定加工費…すなわち固定製造原価は、生産量を基準として予定配賦しているわけですから、月末製品に含まれる固定加工費は月末製品数量に予定配賦率を掛ければ出てくるわけです。同様に、月初製品に含まれる固定加工費は、月初製品数量に予定配賦率を掛ければ良いわけですね…

 うう…アタマ痛い。自他ともに認める算数白痴人間、高校時代には数学のテストで5点という輝かしい点数をとったこともあるワタクシでございますから、こういう話を聞くとたちまち「アタマパー物質」が脳の中に急速に分泌され、アタマパー状態になってしまうのでございます。どうやらトホ妻の試験が終わるまでワタクシは、以前にこの「トホホ事件ファイル」に書いた「トホ妻のグチはとってもホニャララ」に輪をかけて過酷な状況に置かれることを覚悟せねばならないようでございます。

 は昨年の10月から年末にかけてはワタクシ自身も非常に仕事が忙しく、連日のように仕事を「お持ち帰り」し、我が家のiMacで仕事の続きをこなすという状態が続いていたわけでございますが、ようやくダビングが終わってワタクシがMac部屋で仕事を始めると、今度はさっきダビングしたテープを再生しながらトホ妻がワタクシの後ろで勉強を始めるのでございます。従いまして、ワタクシの脳に「アタマパー物質」の分泌を促すあの講議の音が仕事中にもすぐ後ろから聞こえてくるわけでございます。

 「…ですから、ここで言う全部原価計算による営業利益とは、直接原価計算で算出した営業利益に期末の仕掛品及び製品に含まれる固定製造原価を足したものから、期首の仕掛品及び製品に含まれる固定製造原価を引いたものに等しくなるわけで…

 っ…ダメ…脳が溶ける…。いやしかし、ここで文句を言わずにグッと耐えてこそ夫。ワタクシは「労働賃率差異」だの「債券発行費用」だの「原価差異調整前の変動売上高」だのという言葉を聞かされてトウフ状態になった脳にムチ打って自分の仕事を続けたのでございました。

 かし事態はこれだけにとどまりませんでした。ある夜トホ妻は突然デカい紙に何やら描きあげました。それは専門家の間では有名な「シュラッター・メソッド」と呼ばれる、ある種の…その…ナニカらしいのですが、もちろんワタクシにわかるはずもございません。しかもあろうことかトホ妻はソレをテレビの上の壁に貼り付け、日々コレを眺めることで暗記しようと考えたらしいのでございます。御参考までに「シュラッター・メソッド」の図を、トホ妻が描いたそっくりそのまま復元致しますと、こんなモノなのでございます。

 んなモノを眺めながら暮らす3ヶ月間…御想像がつきましょうや?しかしワタクシはトホ妻の試験が終わるまで、メシを食う時もテレビを見る時も毎日毎晩この「しゅらったーめそっど」の図を見ながら生活したわけでございます。普通であればここで「経理のことなどちっとも知らぬワタクシもシュラッター・メソッドだけは詳しくなりました。ははは…」などと書くべきところでございましょうが、およそ3ヶ月間にわたって毎日毎晩コレを眺めたにもかかわらず、ワタクシには未だにコレが何なのかサッパリわからないのでございます…。

 くのごとく、まるで受験予備校のような3ヶ月間を経てようやく迎えた2000年11月19日の日曜日。いよいよ日本商工会議所主催の簿記試験当日でございます。寒い日でございました。トホ妻は府中市内の指定場所に試験を受けに行き、ワタクシは試験が終わって戻ってきたトホ妻と府中駅で待合せして熱いコーヒーなど飲んだわけでございますが、この時のトホ妻は何やらモーレツな落ち込みようだったのでございます。

トホ妻 「…ダメだった…落ちたよ。出来なかったモン…」

いわんや「ま〜た〜、そんな出来なかったフリして…実はけっこう出来てるんだろ?」

トホ妻 「よくそんなことが言えるわねッ!!あ〜あ〜、もうショックで立ち直れないわアタシ…だってさぁ、一問マルマル書けなかったのよ。ほかにも一ケ所間違えてるし…」

いわんや「え?それマズいじゃん。それで何点マイナスされるのさ?」

トホ妻 「えーと…8点ふたつとして…16点…あと4点として…20点くらいかな」

いわんや「まだ80点あるじゃないかよ。70点以上なら合格なんだろ?余裕じゃん」

トホ妻 「他にも間違えてるのよッ!!利益計算のトコもたぶん間違えてるからそれでまたマイナス8点でしょ?あとアソコとアソコも…ああああ〜…」

 にかくトホ妻の落ち込みぶりは大変なもの。その後合格発表までの間も「今回はダメだ…アタシ落ちるわ…」「3ヶ月でやろうなんて、最初からムリだったのよ…」などと毎日タメ息をつき、地球上の不幸の半分を一人で背負ったようにガックリしております。まぁ確かに自分が受けた試験のデキというのはある程度は自分でわかるもの。あまりにもトホ妻が落ち込んでいるので、ワタクシとしても「やるだけやったんだからしょうがないじゃん。ま、五分五分だよな」などとワケのわからぬことを言って慰めるしかなかったのでございました。

 んなトホ妻の落ち込んだサマを毎日見ながら約2週間が経過致しました。そして12月のある日、ワタクシが家に帰って着替えていると、トホ妻が「あ、そう言えば」といった感じ…あるいは「ちょっとコトのついでに伝えておくけど」といった感じでワタクシに言いました。

トホ妻 「…アタシね、簿記2級の試験受かってたよ。今日、商工会議所行って見てきた」

いわんや「えッ!?う、受かったの?そりゃ良かった。ほーら、やっぱオレの言った通り大丈夫だったじゃないかよ。で?結局何点取れてたのさ?」

トホ妻 「……94点だった…」

いわんや「…くゅっ…きゅうじゅうよんてん?!なんだそりゃ?だっ…だって…アレもコレも間違えたとか書けなかったとか言って…」

トホ妻 「…うー…いや、そのハズだったんだけど…いいじゃないよ、受かったんだから」

いわんや「かーッ!信じらんねー。94点っていったら要するにほとんど間違ってなかったってコトじゃんかよ!昨日までのあの暗〜い落ち込みっぷりは一体何だったのさ?」

 解のないように申し上げておきますが、ワタクシは決してトホ妻が試験に受かったことを責めているわけではございませんし、94点とったことを責めているわけでもございません。高得点で合格するのは文句なく立派なことでございます。しかし先程申しましたように、試験のデキというのはある程度は自分でわかるものでございます。合格の確信は持てぬにせよ、結果的には94点取った試験になぜあそこまで落ち込んでみせなければならないのでございましょう?

 かに「大言壮語して、あとで落ちたらみっともない」と思う気持ちは誰でも持つものでございますし、内心では「まぁまぁだったかな」と思いつつ、口では「あんまり出来なかった〜」などと言ってみせるのはどなたも経験のあるところではございましょう。しかし繰り返しますが94点でございますよ?天を呪わんばかりの落ち込みぶりと、この点数とのあまりの格差…。試験から発表までの約2週間、トホ妻は「ガラスの仮面」の北島マヤのように「試験のデキが悪かった受験生の仮面をかぶっていた」としか思えませぬ。

 は申せ、日々是決戦の猛勉強の末、ワタクシにはヒトカケラもわからぬ難しい試験に受かったわけでございますから、そのコト自体は大したもの。従いまして、このネタをHPに載せる時は「まぁトホ妻もなかなか頑張ってエラかった」くらいのホメ言葉は書いてやるか…とワタクシ思っていたのでございます。しかし、その思いは今年の正月にきれいサッパリ消滅致しました。トホ妻は正月にワタクシと共に世田谷の自分の実家に帰った時、母親や妹を前にしてこうホザきやがったのでございます。

 「ま、これで“一度も試験に落ちたことがない”というアタシの栄光の記録は守られたわけよ。ほ〜ほっほっほっ…まぁね、しょせん簿記2級なんて言ったってさ、このアタシにかかりゃ軽いってことよね。どうってこたぁなかったね♪ほ〜ほっほっほっほっほっほっ…♪

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