イスタンブールトホホ紀行その1.
●“野性の老夫婦”魅惑の2万歩ツアー
11時間以上に及ぶ長いフライトを経て2005年7月24日、現地時間の午後8時頃に我々一行は無事イスタンブール空港に降り立ち、1週間にわたるイスタンブール観光がスタートしたわけでございます。とりあえず到着した夜は日本からネットで予約したホテルにチェックインし、カフェでビールなど飲みながら明日からの観光のプランニング。とりあえず明日はトプカピ宮殿あたりから攻めてみようかということになったわけでございます。
さて翌朝。ホテルからトプカピ宮殿までは歩いて…そう、15分程度でございましょうか。(ガイドブック等には“トプカプ”と表記されている例もございますが、ワタクシとしては映画の題名にもなった“トプカピ”という表記の方が好きでして…)実はこの初日の朝、ワタクシは両親が希望するボスポラス・クルーズの乗り場の確認のために一人で波止場まで往復してきたのでございまして、すでに多少は歩ていたのですが、その後トプカピ宮殿まで歩き、そしてその広大な宮殿の内部をまた歩いたということになるわけでございます。
トプカピ宮殿と言えば、マルマラ海と金角湾を隔てる旧市街の岬の突端に建てられた、それはもう贅を極めた豪華な宮殿。壁面を飾るアラビック風装飾タイルの紋様は見とれるばかりの美しさでございますが、加えてここの呼び物はかつて隆盛を極めたトルコのスルタンが金にあかせて収集した財宝の数々。極め付けは86カラットの巨大ダイヤの回りに小粒のダイヤをこれでもかとあしらった超巨大(たぶん)ペンダントでございまして、これを見たトホ妻とトホ母の口からは異口同音に「周りにある小さいヤツでいいから1個欲しいワ」というセリフが出てきたあたりは、女のサガでございましょうねぇ…。
んまー!何てキレイなトプカピ宮殿のタイル装飾
さて、休む間もなくお次は地下宮殿の見学でございます。「地下宮殿ってナニ?」とお思いの方も多うございましょうが、イスタンブールを舞台にした「007・ロシアより愛をこめて」という映画の中でジェームズ・ボンドが神秘的な地下貯水地をボートで敵の建物の下に潜入するという場面をご記憶ではございま…え?そんなド古い映画のことは知らん?さいざんすか。えー…とにかくですね、千年以上前の6世紀にビザンチン帝国のユスティニアヌス帝によって建設された地下貯水地で、「007」の撮影のずっと後に中の水と泥をカイ出し、現在は一般公開されているのでございますが、その見事な列柱の偉容から通称“地下宮殿”と呼ばれているわけでございます。
んまー!何て神秘的な地下宮殿の内部!
ここは素晴らしかったです。日射しと熱気にむせかえりながらチケットを買って一歩内部に入ると、そこはヒンヤリとした空気に満ちた神秘的な空間で、時々天井からピチョーン…と水滴が落ちてまいります。この地下宮殿の中でも特に有名なのが、泥をカイ出してみたら現れた二つのメデューサの首でございまして、髪の毛が蛇で出来ていると言われる伝説の魔女・メデューサの首を、わざと横向きとサカサマにおいて柱の土台にしております。一説には「見たものを石に変える」と言われるメデューサの視線をマトモに浴びるのを避けるためとも言われておりますが、一種のオナジナイ、ないし魔除けのようなものなのかも知れませぬ(地下宮殿についてもっと詳しく知りたい方はこちらの特別付録を御覧下さい)。
これが横向きメデューサ
こちらが逆さまメデューサ。ちょっと可哀想な気も…
地下宮殿を出てきた段階で、トホ母の腰に下がった万歩計はすでに軽く1万5千歩を突破しておりました。前日は半日飛行機の椅子に拘束されていてほとんど歩いていなかったわけで、いきなりこの強行軍。年老いた両親の体調も心配なので、とりあえずホテルに戻ってひと休みしようということになったわけでございますが、夕方からはまたもや4人で波止場まで散歩。あの…オレ、波止場は今朝すでにもう行ってるんですけど…あ、はいはい。御両親様の御希望ですね。お伴いたしましょう。そこでまた延々と歩いて晩飯を食ってホテルに戻った時はトホ母の万歩計は1万9千歩。
波止場から対岸の新市街を見る
朝に波止場まですでに一往復しているワタクシに関して言えば、この日だけで2万数千歩に達しているのは確実でございますが、78才のちょっと足の悪いオヤジと76才のオフクロが1万9千歩…まさに“野生の老夫婦”とでも表現するしかない、呆れるばかりの体力でございます。ワタクシなどは、この初日の2万数千歩でもうかなりグッタリでございましたが、“野生の老夫婦”を連れたイスタンブール旅行は最初の一日がかろうじて終わっただけなのでございます…。