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Space Saver II Keyboard で遊ぼう!
                                                                        
                          
第7回
                                                                        
     
 
                         
SSK II 最高再考
                                                                        
                            
      キーボード好きの皆さん(?)こんにちは。
                       
「SSK II 最高ですか〜?」
            
                        
「最高で〜す。」
            
 
           と、言いたいとこですが、どうですかねぇ。数年前に話題になったヤバイ宗教団体じゃあるまいし。個人的には使って楽しいキーボード(TrackPoint 
    込みで考えると入力デバイスと言ったほうがいいかな?)なんですが、そもそも最高だったら、こんなに手を入れたりしやしませんね。
                       
ってなわけで、今回は、SSK II がなぜ最高とまでは言えないのか、他のキーボードと比較しながら再考してみたいと思います(あいかわらずベタですみません^^;)。
            
                         
RT6656TWJP
         さて、突然ですが、先日、仕事帰り、東京は新橋界隈を歩いていたら、なんか中古主体の PC 屋さんができてて開店セールやってるのを見つけました。で、そこにあったのが
      HP ブランドで同じ NMB 製のこれ。中古で780円なり。            
            まぁ、そんなに美品ってわけでもなかったし、秋葉で探せばもっと安く手に入るみたいですが、わざわざ秋葉行くのも面倒だ、ということで、とりあえず購入してみました。
                       
使ってみると...
            帰宅して早速触ってみました。さすが NMB 製メンブレンタイプの中では評判の良いこのキーボード、SSK II (の旧版)同様ややカサカサ感はあるんですが、 
     SSK II と違って(^^;)カッチリしっかりした打鍵感です。高級感があるとでも言えば良いのでしょうか。SSK II もこんな感じだといいんですけどねぇ。
            
            となると、なんでこうも違うのか知りたくなります。ここはやはり分解でしょう。SSK II とどこがどう違うのか調査開始です。
        (なお、以下の内容は、猫のキーボードルームのキーボード個別面談に似ている点がありますが、独自に調査検討したものです。 
同じ種類のキーボード調査したら、やっぱり調査結果や感想等も似てしまった、ということで、ご容赦ください。)
                       
バラシ開始
            で、筐体をバラすとこんな感じ。
                       
           キーボード部分はキーハウジングを兼ねたプラスティックと金属製底板からなるモジュールに組み込まれています。強度等はこの内部のモジュールで十分確保されているようです。筐体を外した状態でキーを打ってみたら十分使えそう。 
     筐体は本当に単なるガワなんですね。これは SSK II との大きな違いです。
            
            次にこのモジュールを分解してみます。ネジが多くて(数えてみたらなんと20個!)、ちょっと面倒です。その分剛性は十分確保されてるってことでしょうね。
                       
                       
            
このようにしっかりした平らな金属のベースの上にメンブレンシートが配置されています。 三層のメンブレンシートと上面シートに接着されたラバードームという基本構造は 
    SSK II と一緒。ラバードームの色や押圧特性は違うようですが、見た目  SSK II とよく似てますね。(ラバードームは SSK II 
のほうが固い感じかな?)
                     
次は裏から見た図です。
            
            
            
             
             
           絶縁用なんでしょうか?不織布(?)のシートが最下面に敷かれています。
            
            次にスライダはどうなってるかというと、
                       
       
            (写真ピンボケですみません。しかし、キートップの裏側は、かなり汚れてますねぇ。)
         
       
       こっちは SSK II のキートップ兼スライダです。参考まで。
       
            
 
            キートップと分離式です。SSK II とちがい、スライダとキートップと材質が違うんで、すべりもなんだか良いみたいです。そして足もついています。この足はラバードームを跨ぐ格好になっていて、メンブレンシートにこの足が直接着いて底打ちするようになってます。このため、しっかりした底打ち感がありながら、衝撃も緩和されるようです。前回分解した 
     PCXAJ-BA A01 もスライダ(というかキー)に、底打ちのための足がついていているのですが、ラバードームが一枚のシートになっているので、底打ち時に足がゴムに触れ、どうしてもゴムっぽくなります。この点 
 RT6656TWJP   の構造のほうが、優れているようですが、どう考えても製造コストが高そうです。コストよりも上質であることを優先してるんでしょうね。
              
相違点のまとめ
       ということで、SSK II との違いをちょっと表にまとめてみました。
          
                   
            
              
                 
                 | 
                SSK II 
                 | 
                RT6656TWJP 
                 | 
              
              
                筐体および内部構造 
                 | 
                プラスティック筐体(キーハウジングを兼ねる)+ 
        金属製底板 
                 | 
                プラスティック筐体+ 
        プラスティック(キーハウジングを兼ねる)と 
        金属製底板からなる内部モジュール 
                 | 
              
              
                スライダ 
                 | 
                キートップ・スライダ一体型 
                 | 
                キートップ・スライダ分離型、足付き 
                 | 
              
              
                メンブレンシート 
                 | 
                3層メンブレンシート 
                 | 
                3層メンブレンシート+不織布シート 
                 | 
              
              
                ラバードーム 
                 | 
                薄い緑(やや固め) 
                 | 
                濃い緑色(SSK II よりはやわらかめ) 
                 | 
              
                                       
            
   
   逆に共通点は、ラバードーム、メンブレンシートによるスイッチの構造と、スライダの断面が長方形ってことぐらいでしょうか。こうしてみると結構違います。
   
   で、これらの違いのためか RT6656TWJP と比較して SSK II は以下の点が残念ながら劣ります。
               
          -  剛性感(SSK II はプラスティック筐体のため?金属底板は使ってるんですけどね)
 
          -  キートップのぐらつき(SSK II はハウジングとスライダの間のマージンが大きいため?スライダの材質の違い?)
 
          -    底打ち時のタッチ(SSK II はスライダに足がないため、まっすぐ打つとゴムっぽく底打ちしたり、斜めに力が掛かるとキートップとハウジングとが直接接触したりする)
 
               
         まぁ、これらの点はあくまで、RT6656TWJP との比較ってことで、SSK II が絶対的に劣るってってわけじゃありません。許容範囲内かどうかは人によってまちまちでしょうしね。とはいえ、特にキートップのぐらつきに関しては、タイピングの速度や正確さに強く影響しそうです。また、個体差が大きいとはいえ、底打ちの問題は指への負担が無視できないとおもいます。(経験者は語る。指は治ったけど、未だに後遺症で左手首が痛いっす。) 
        
といった具合で、この RT6656TWJP、特に凝った構造というわけでもなさそうですが、正攻法で堅実、そしてなによりコストをかけた作りのキーボードのようです。一方の 
    SKK II は RT6656TWJP のキーボードとしての基本的機構は受け継ぎながらも、この RT6656TWJP から簡略化できる部分は簡略化し、コストダウンを計ったものと言えるんじゃないでしょうか。そしてこのコストダウンのためには、それほど凝った新規な設計をするでもなく、既存のものをわりと素直に簡略化したという印象です。開発費を含めたトータルなコストの削減にはいい方法だったんでしょうか?(この点、前回適正化した 
    PCXAJ-BA A01 と対照的です。こっちは、コストダウンと打鍵感の両立のため、いろいろ凝った構造になっています。)
     
         
古きよき時代のコストをたっぷりかけたキーボードと比較するのは、SSK II には酷とは思うものの、SSK II も、もう少し何とかしてほしかったなぁ、というのが正直な印象です。なにしろ、いくら 
   TrackPoint IV という大きな付加価値があるとはいえ、決して安いキーボードではないんですからね。(一時期の49800円なら、お得な感じですけどね。)
             
分解中に気づいたこと
         さて分解の途中で、はた、気が付いたことがあります。RT6656TWJP 同様、SSK II もシートにラバードームが一個づつ固定されています。この構造は 
  PCXAJ-BA A01 のようなラバーシート型と比べて、どう考えても製造コストが高そうです。ラバードームが一個一個分離することにより、ラバードームの特性の設計に自由度が生まれたり、多少打鍵感が良くなるのかもしれませんが、つくづく「無駄な構造だなぁ」と思ってました。でも、実は結構メリットがあったんですね。部品の共用による製造コストの削減という。
           
 既に見てきたように SSK II では、RT6656TWJP 等の RT6600 系の設計をベースにしつつも、コストのかかりそうな点は大分簡略化されています。スライダとラバードームに関しては、分離型のラバードームとメンブレンシートの構造だけが採用され、コストのかかる足付き(分離式)のスライダは採用されなかったようです。(足付きのスライダは分離式じゃないとハウジングに組み込めませんから、キートップ一体型を選択した段階で、当然足付きという選択もなくなりますね。)
             
このような中途半端な構造だと打鍵感的にはあまりメリットもなさそう(?)ですが、RT6600   系と部品と工程が共用できるという製造コスト上のメリットが生まれるんですね。でも、このために底打ち時の衝撃の問題や、キーのぐらつき、きーのすべりといった点が明らかに犠牲になってます。その分、価格が十分安ければいいのですがね。何度も言うようですけど、そんなに安いキーボードでもないですし...。他にも設計上のいろいろなトレードオフがあってこのような形に落ち着いたんでしょうけど、なかなか難しいもんです。
               
 スライダ交換?
        と、ここまでわかると、この SSK II の欠点をなんとかしてみたくなります。RT6656TWJP のスライダが SSK II に使えないか、気になります。見た目、大きさも、ほぼ同じようですし。で、試してみたんですが...結局だめでした。
             
RT6656TWJP のスライダは SSK II のキーハウジングより微妙に大きかったんです。ホントにびみょ〜に。
        スライダを削ればなんとかなるかもしれませんが、加工精度が高くないとキータッチがものすごく悪くなるのは目に見えてたので、早々に断念しました。うまくすると非常にタッチのよい 
   SSK II ができるかもしれないので、加工の得意な方はチャレンジしてみては?数が多いんで、めちゃタイヘンそうですが(^^;)。
   ってなわけで、今回は適正化も断念。あんまりめでたくなかったですね。
   
   でも、まぁ、SSK II に関する知識も深まったってことで、一応めでたしめでたし、ってことにしておきましょう(^^;)
     
     では、今回はこのへんで。