私撰狂歌集

ほととぎす鳴きつるあとにあきれたる後徳大寺の有明の顔      蜀山人
世の中に人の来るこそうるさけれとはいふもののお前ではなし    蜀山人
世の中は色と酒とが敵なりどふぞ敵にめぐりあひたい        蜀山人
あなうなぎいづこの山のいもとせをさかれて後に身をこがすとは   蜀山人
金銀のなくてつまらぬ年の暮何と将棋の頭かく飛車         蜀山人
早蕨のにぎりこぶしをふりあげて山の横面春風ぞ吹く        蜀山人
御仏に産湯かけたか郭公天上天下たった一声            蜀山人
慈悲心も仏法僧も一声のほうほけきゃうにしくものぞなき      蜀山人
ひとつとりふたつとりては焼いて食ひくひななくなる深草の里    蜀山人
駒とめて袖うちはらふ世話もなし坊主合羽の雪の夕暮        蜀山人
生酔いの礼者を見れば大道を横すぢかひに春は来にけり       蜀山人
今更に何か惜しまむ神武より二千年来暮れて行く年         蜀山人
千早振神も御存知ない道をいつのまにかはよく教え鳥        蜀山人
世の中にたえて女のなかりせば男の心はのどけからまし       蜀山人
世の中に蚊ほどうるさきものはなし文武といひて夜もねられず    蜀山人
盃に飛び込む蚤も飲み仲間酒飲みなれば殺されもせず        蜀山人
飲みに来た俺をひねりて殺すなよ飲み逃げはせず晩に来てさす    蜀山人
とれば又とるほど損の行く年をくれるくれると思ふおろかさ     唐衣橘洲
いつ見てもさてお若いと口々にほめそやさるる年ぞくやしき     朱楽菅江
出雲なる神に祈りて逢ふ夜半は日本国が一つにぞ寄る        宿屋飯盛
歌よみは下手こそよけれ天地の動き出してたまるものかは      宿屋飯盛
月見てもさらに悲しくなかりけり世界の人の秋と思へば       つむりの光
ほととぎす自由自在に聞く里は酒屋へ三里豆腐屋へ二里       つむりの光
菜もなき膳にあはれは知られけり鴫焼茄子の秋の夕暮        鹿都部真顔
人の恋季は何時なりと猫問はば面目もなし何と答へむ        横井也有
すかし屁の消易きこそあはれなれみはなきものと思ひながらも    紀定麿
食へばへる眠ればさむる世の中にちと珍しく死ぬも慰み       白鯉館卯雲
筒井筒いつも虱は在原やはひにけらしなちと見ざるまに       元木網
この世をばどりゃお暇に線香の煙と共にはいさやうなら       十返舎一九
宗鑑は何処へと人の問ふならばちと用ありてあの世へといへ     山崎宗鑑
あしといふ事は残らず取り捨ててよき事ばかり残る若松       風来山人
世の中に人の来るこそ嬉しけれとはいふもののお前ではなし     百鬼園
二升酒三献四迷五臓六腑七転八倒九死一生             江湖山人
浮世をば今こそ渡れ学究の名を大学の苔に残して          模擬胸張
貧乏をしても下谷の長者町上野の鐘のうなるのを聞く
貧乏の棒も次第に長くなり振り回されぬ年の暮れかな
楽しみは後ろに柱前に酒左右に女懐に金
世の中は澄むと濁るで大違ひ刷毛に毛があり禿に毛がなし

裏庭に干さぬ蕎麦だにあるものを鯉を食ひなむ菜こそ欲しけれ
業平が都偲びし隅田川今は輝く雲湖大楼
運慶の作と聞こゆる仁王様踏んづけられし鬼はギャフンと
日本では誰も入らぬ「云湖楼」中国なれば何時も繁盛
楼なして積もれる雲をかぐや姫天に昇りて月の都へ
蒔かなくに何を種とて大空に雲のむくむく湧きいづるらむ
つかまれて六腑吐き出す海鼠かな五臓残して元の姿に
親不知子はこの通り禿頭越路の海の波に輝く
髷結はぬ身にも哀れは知られけり抜けゆく髪の秋の夕暮
冷や水と冷やかしながら老婆心乙女の姿既に留めず
芋は今喉元辺り五臓六腑七転八倒九死一生
掘ればまた掘る程はかのゆく墓を御陵大事に守る愚かさ
この綿をいくらで売るか言はしたい深酒醒めたら鴉見に来い
飲めばまた飲む程縮むこの命避けよ避けよといはれながらも
あるだけの友長門より招くなり最期の花見になると思へば 
政権の政権による政権のための政治が続くどこまで 
官邸の発言いつも型通り心こもらず中身空っぽ 
「責任を痛感」といふ上つ方現に痛むは下つ方なり 
我が国の古き教にいへるあり驕る政権久しからずと 
黒川に懸けるつもりの官邸が賭け麻雀で転ける結果に 
黒川の濁る流れに魚棲めず清流望む鮎も岩魚も 
官邸を菅邸と思ふ餅つきの杵も折れたり臼も割れたり 
菅邸の顔色を読む術磨きキヤリアの誇り今は何処に 
足下が崩れ始めた安と菅安閑となどしてはゐられず 
外遊をする度増える内憂を外観良しと思ふ愚かさ 
国民の命を守る贈り物アベノマスクと人はいふなり 
莫大な国費投じて作らせしアベノマスクが不良品とは 
いまだ来ぬアベノマスクを待ちかねて他のマスクを買ひに行くなり 
500億かけて作りし駄目マスク春が過ぎてもいまだ届かず 
露と落ち露と消えにし500億マスクのことも夢のまた夢 
宛名なきマスクが二枚投げ込まれ何のマスクか暫し戸惑ふ 
平生の嘘を重ねる厚き顔マスク二枚で覆ひ隠せず 
このマスクかけても嘘はバレるなり総理自ら実証済にて 
マスクする身にも危険は知られけり買物をするスーパーの中 
春過ぎて夏来にけらし白妙のマスク外せず遠出をもせず 
空見上げ何をしやうか思案顔足もと見れば紫陽花の花 
梅雨よりも猛暑が先に襲ひ来てマスクの下で息も絶え絶え 
三密は煮ても焼いても食えぬもの蜂蜜ならば滋養食品 
明日ありと思ふコロナの恐ろしさ夜半に寿命が尽きぬものかは 
「たびに行け」「たべに行け」とはいふけれど「コロナくるな」と地方ではいふ 
TRAVELやEATは危険があるけれどSLEEPならば問題はなし 
今更に何か惜しまん五つの輪更に延ばしてやれるものかは 
のぞみなき身にも光は届くなり籠れる家の居間の片隅 
コロナ過ぎ移動する人急増し「のぞみ」満席「ひかり」ならあり 
その昔南畝巡りし上水を今日は散歩で〆て何歩か 
食べ物の名も土地により変はるなり江戸の「汁粉」は浪花で「ぜんざい」 
寄トランプ大統領:能あらば爪は隠して挑むらむ吠える以外に策がなければ 
昨今は日の暮れるまで待ち切れず昼飯前に改めるなり 
朝決めたことを昼にはもう変へるせめて日暮が待てぬものかと 
石橋を外す作戦菅邸の二階でまとめ一気呵成に 
知らしめず由らしむべしと今も尚すがた変はれど相も変はらず 
昨今は珍しくなくなりにけり自分のための規則改定 
寄菅総理:力なき身にも事態は分かるらむ躊躇なく引くいさぎよさこそ 
寄片岡千恵蔵:その昔「七つの顔の男だぜ」今は息子がJALの会長 
寄金:燃えもせず錆びることなき安定感家にないのが玉に瑕なり 
寄金:家に有らば手に取る金を草枕旅先で見て写真にぞ撮る 
金銀がなくてつまらぬ夏休みヘボ将棋でも指してみるかと 
あと十年もつと思ふな全日空カメの寿命は万年なれども 
寄広島大学原田学長:世の中に唄ふ学長多けれど歌ふ学長希有な存在 
ひぐらしの声聞きながら今日もまた一里歩いて汗が止まらず 
饅頭(まんじゅう)は皮と中身が分かるなりさて饅頭(まんとう)は皮か中身か 
新聞もテレビ画面も看板もカナモジばかりドコモかしこも 
我が国は学年主義に履修主義年齢主義が幅利かす国 
鶯の初音聞かんと待つ庭に雀ばかりが来るぞ悔しき 
歩道なき道の怖さは知られけり避け立つほどの空きもなければ 
三度目を狙ふ積もりか知らねども安倍野は遥か霧の彼方に 
菅邸の菅邸による菅邸のための国にてコロナ蔓延 
セイフにはつける薬が見当たらず西のフセイは更に危うし      山本眞一
毎日の散歩身体に良けれども矩を踰えずに歩く年頃 
ワクチンも薬も無いが我家には使へぬマスク二枚残れる 
齲歯二本復活目指し歯医者まで重装備にて丑雨の中 
モリカケもアベノマスクも桜見も安倍に罪あり庶民に目あり 
寄土方茶:本山も川根もあれど一服の土方の茶に如くものぞなき 
御近所の野に豪邸の建つ見えて返り見すれば分譲の家 
吉本ブルーベリー園の「食べ放題」の看板を見て詠める:「よし!もとをとるぞ!」と勇み入るなり「食べ放題」の看板を見て 
富裕層やたらに好むななつ星直ぐ売り切れてしまふ驚き 
羽毛田さん濁りの位置で大違い刷毛に毛があり禿に毛がなし 
用ありて街に出かけた帰りしなふと目についた洋梨を買ふ 
風邪誘ひ鼻より入るコロナ菌フルの名残を如何にとやせん 
寄渡邊欣雄先生:またひとつ伝統消える寂しさを民俗学が記録するなり 
寄大阪と長崎のカジノ:カジノなら難波ともあれラスベガスばってん似合わぬ長崎の鐘 
寄読谷村トリイ基地:その昔右をくぐりしこの鳥居今は左をくぐり入るらむ