2004.05.08

誤字等No.068

【スウォード】(外誤科)

Google検索結果 2004/05/08 スウォード:1,530件

今回は、「とんび」さんからの投稿を元ネタにしています。

「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」といった「ファンタジーRPG」の影響か、「剣と魔法の世界」は、日本人にもそれほど違和感なく受け入れられるようになりました。
その名の示す通り、「力の象徴」である「」と、「知恵の象徴」である「魔法」は、世界観を支える両輪として欠かすことのできない存在です。
英語名の「sword」や「magic」をカタカナ読みした「ソード」と「マジック」も、既に外来語としての地位を十分に確立しています。
ソード」の方は、「ロングソード」「ミスリルソード」といった形で武器の名前にも使われ、ゲーム世界ではお馴染みの用語となりました。
一方の「マジック」は「手品」の意味でも定着していますし、油性ペンの商標にもなっています。

さて、この「ソード」、このままで元の英語の発音に結構近いのですが、これを「スウォード」と表記したがる人がいます。
(同様に、「magic」を「マズィック」と表記する人もいました。これも変ですね。)

スウォード」の「」の部分は、英語の綴りにある「w」を発音したものでしょう。
スウォード」と表記している本人は、「ソード」よりも「スウォード」の方が原語の発音に忠実だと思っているに違いありません。

なるほど、確かに「sweet」は「スイート」より「スウィート」と読んだ方が「英語らしい」かもしれません。
switch」なら、「スイッチ」より「スウィッチ」の方が英語に近そうです。
でも、「sword」は「スウォード」ではありません。辞書を引いて、発音記号を見てみれば分かります。
英語の発音規則は、そう単純ではないんですね。

スウォード」に近い発音の単語は、「sward:芝生」です。
長い芝生をいくら振り回しても、敵には勝てません。
どれだけ滑稽な間違いをしているか、お分かりでしょうか?

スウォード」が支持される理由の一つは、その発音に重厚な響きがあることとも考えられます。
強大な力を持った武器の名前であれば、「ソード」と軽く言うよりも、「スウォード」と「もったいぶって」言った方が雰囲気が出るのでしょうか。
あるいは、「武器」としての連想から、「ウォーwar:戦争)」のイメージも影響しているかもしれません。
でも、その連想から綴りを「sward」だと思い込んでしまうと、やっぱり「芝生」になってしまいます。
困ったものです。

ちなみに、「sword」から先頭の「s」を取り除くと、「word:言葉」になります。
こちらは、「ワード」という発音で定着していますね。
そのあたりから発想すると、「sword」は「スワード」になってしまうようです。
さすがに、「スワード」で「」をイメージさせるのは難しいと思いますが。

日本語と英語は、その発音形態自体が異なる言語です。
英語の発音を日本語の語彙で表記しようとする限り、どうしても無理が生じます。
それをはっきりと割り切って「日本語式」の発音にしてしまったものが、いわゆる「カタカナ語」です。
それが「外来語」として定着すれば、もはやそれは「日本語」の一部となります。
逆に言えば、「日本語」になるためには、発音も「日本語式」にする必要があるのです。

そのことに納得せず「カタカナ語」の発音を「カッコ悪い」と思い込んでしまう人は、「発音をひねる」ことで抵抗を試みます。
それで本当に原語の発音に近づいているのであれば、それも良いでしょう。
しかし英語そのものの発音にならない限りは、単なる「自己満足」の域を出ることはありません。
ましてや遠ざかっているようでは、カタカナ語より何倍も「カッコ悪い」です。

外来語をそのまま受け入れずに「英語らしく」変化させたいなら、その前に辞書を引いて、発音記号を読む程度の努力を惜しんではいけません。
その努力を放棄した結果が、多くの外誤科誤字等を生み出すことになります。
そのような行動を繰り返していると、いずれは「カッコだけを追い求めて中身の伴わない人間」というレッテルを貼られてしまいますよ。

[実例]

日本人とは、かくも「外国語の発音」に弱いのでしょうか。
このような「外国語の発音」が原因と思われる誤字等の品種を、「外誤科(がいごか)」と命名しました。

[亜種]

スウオード:17件
スゥオード:37件
スゥォード:6件
マズィック:10件

※ 2004/06/11
投稿者さんが名乗り出てくれましたので、冒頭部分を「とある名無しの読者さん」から書き直しました。

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