2004.05.15

誤字等No.071

【フューチャリング】(外誤科)

Google検索結果 2004/05/15 フューチャリング:5,000件

フィーチャリング」という言葉をご存知でしょうか。
英語で、「featuring」と表記されることもあります。
フューチャリングfuturing?)」ではありません。

音楽に関連する話題で使われるときは、複数のアーティストが協力して楽曲作りを行うといった活動を意味しているようです。
「共同作業」を意味する「コラボレーション」との違いは、「構図」があることでしょうか。
「主役」がいて、その主役を引き立たせるために、有名な、あるいは特徴のあるアーティストが協力する、といったときに「○○○フィーチャリング△△△」という表現が使われることがあります。

語源となっている英単語「feature」は、「特徴付ける」「特集する」「呼び物にする」、あるいは「特徴」「容貌」といった動詞と名詞の意味を持っています。
「特集する」という意味で「フィーチャーする」と言ったり、「呼び物にする」という意味で「フィーチャリングする」と言うなどの用例もあります。

feature」はそれほど難解な単語ではありませんが、上記のようにいくつもの意味を持っていることもあり、一般的な日本人にはあまり馴染みがないと言えます。
フィーチャー」というカタカナ表記も、「外来語」としての地位を確立しているとは言えません。

一方の「future(未来)」は、英語の授業で習った人もいることでしょう。
辞書を引かなくても単語の意味が分かる、という日本人の数は、「feature」よりずっと多いはずです。
著名な映画の影響か、「フューチャー」というカタカナ表記も日本語に定着しています。

この両者の「浸透度」が原因となって、聞きなれない「feature」の発音が、いつのまにか「future」に引きずられてしまう。
十分に、考えられるシナリオです。
そして「future」に由来する「先進的」な言葉の印象に、満足してしまっているのかもしれません。

検索結果の中には、本当に「未来」の「future」に「ing」を付けて何かを表現しようとしているケースもありました。
これは明確な意思のもとに表記された言葉ですから、誤字ではありません。
しかし私には、「フューチャリング」というカタカナ表記から「未来+ing」を連想させようという発想には無理があるとしか思えません。

さて。「フィーチャリング」のつもりで「フューチャリング」を使っている人たちの言葉遣いには、ある特徴が見えます。
それは、「カタカナ語」が異様に多く使われているということ。
音楽関係の話題が圧倒的に多いからでしょうか。
あくまで私の印象ですが、そこには「カタカナ語を使うことがカッコいい」という感覚があるようです。

このような、「感覚」を優先して言葉を選ぶ人たちは、言葉の「本当の意味」にはこだわりません。
外国語をカタカナ読みしているとき、その語源となった言葉が実際はどのような意味を持っているのか。
それに興味を持つことができる人なら、「featuring」を「フューチャリング」と読むことはないでしょう。

うわべだけを飾り立てて、中身の充実に気を配ることのできない愚かさ。
人、それを「軽薄」と言います。
そのようなあざけりを受けないためにも、「フィーリング」だけで言葉を粗末に扱うことは避けたいものです。

[実例]

日本人とは、かくも「外国語の発音」に弱いのでしょうか。
このような「外国語の発音」が原因と思われる誤字等の品種を、「外誤科(がいごか)」と命名しました。

[亜種]

futuring:599件
feeturing:23件
feataring:4件
ヒューチャリング:138件
フーチャリング:125件
フゥーチャリング:3件
フェーチャリング:4件
フォーチャリング:10件
フィーチュリング:29件
フューチュリング:1件
フユーチャリング:9件

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