2004.01.12

誤字等No.018

【同音意義語】(誤変科)

Google検索結果 2004/01/12 同音意義語:231件

ある著名な「かな漢字変換プログラム」について、新製品の発売を発表するニュースリリースに次のような一文を見たことがあります。

定評ある○○○の変換エンジンで、日本語での同音意義語を正しく変換します。

これを読んで、「正しく変換できてないじゃん」とツッコミを入れたのは、私だけでしょうか。

あるいは、文章を書く際の注意事項として「同音意義語に注意すること」と書かれた資料を見て、「オマエモナー」とつぶやいてしまう人は、どれだけいるでしょうか。

誤変科の誤字等が生み出される主要原因は、日本語に数多くの「同音異義語」があるからと言って間違いないでしょう。
そして面白いことに、この「同音異義語」という言葉自体が、「異義」と「意義」という同音異義語の存在によって、「同音意義語」という誤字を生み出しているのです。
しかも、この誤字はなかなか気付かれにくいという特徴を持っています。
同音異義語についてよく知っているはずの専門家でさえ間違えているとしたら、これは相当に根が深いと言わざるをえません。

同音異義語」とは、「発音は同じで、意味が違う言葉」のことです。
この「意味が違う」という部分が重要。それこそが「異義」の意味です。
同音意義語」では、「発音は同じで、意味のある言葉」になってしまいます。
これでは意味が分かりません。

「いぎ」という読みの同音異義語には、もうひとつ、「反対意見」を意味する「異議」があります。
当然、これを使った「同音異議語」という誤字も、たくさん見つけることができました。
ここで、この言葉が誤字ではなく、本当に実在すると仮定してみます。
文字通りに解釈すれば、「発音は同じで、意見が違う言葉」という意味にでもなるでしょうか。

ちょっと無理矢理ですけど、適用例を考えてみました。
法廷で、敵対する側の弁護士が叫ぶ「異議あり!」というセリフ。
ドラマなどでよく見かけますね。
もし、これが「意義あり!」だったらどうでしょう。
反対するどころか、相手の意見の価値を認めてしまっています。
議論の場でこんなことを言っては、降参しているのも同じです。
この場面での「異議あり」と「意義あり」が、「同音異議語」なのかもしれません。

別のパターンを見てみます。
存在意義がない」と批判するつもりで、「存在異議がない」と書いてしまったら、どうなるでしょう。
「異議がない」ということは「賛成」ということですから、存在を認めたことになりますね。
これはもう「批判」ではなく、「擁護」になってしまいます。
耳で聞けば同じなのに、文字にすると意見が180度変わってしまう。「同音異議語」とは、おそろしいものです。

最近のかな漢字変換プログラムは、優秀です。
「どうおんいぎご」でまとめて変換すれば、確実に「同音異義語」と変換してくれることでしょう。
ニュースリリースで「同音意義語」なんて書いてしまった担当者さん、ご自分の会社の製品を正しく使いこなせるようになってください。
同音意義語に注意」なんて警告してしまった担当者さん、我が身を傷つけてまで悪い例を示して頂かなくても結構です。
まずご自分から、正しい日本語を使えるようになってください。

[実例]

日本人とは、かくも「誤変換」に弱いのでしょうか。
このような「誤変換」が原因と思われる誤字等の品種を、「誤変科(ごへんか)」と命名しました。

[亜種]

同音異議語:92件
同音異義後:3件
意義あり:1,930件
異義あり:262件
存在異議:138件
存在異義:111件

前 目次 次