2004.01.14

誤字等No.019

【まぎわらしい】(替誤科)

Google検索結果 2004/01/14 まぎわらしい:897件

新春の進取企画、新種の登場です。

まぎわらしい」という言葉を、聞いたことがあるでしょうか。
漢字で書くと「紛わらしい」となります。
とても紛らわしいですが、現在の日本語では、このような言葉は存在しません。

この誤字の原因は、「似たような字形」「外国語の発音」「誤変換」のいずれによるものでもありません。
紛らわしい(まぎらわしい)」の「ら」と「わ」が入れ替わることで発生した誤字です。

かつて「新しい」の読みは「あらたしい」であったものが、江戸時代に流行った「逆さ言葉」によって「あたらしい」へと変化し、いつしか定着したように。
あるいは「しだらない」という言葉が「だらしない」へと変わっていったように。
「入れ替え」を原因とする言葉の誤用は、ある意味「由緒ある」ものと言えるかもしれません。
現代でも、「業界用語」と言って言葉をひっくり返す人たちがいますが、根は同じなのでしょうね。

「業界用語」は意図的な言葉遊びですが、「まぎわらしい」の場合は、それが「正しい」と思い込んでしまっている人も多そうです。
そのような人は、かな漢字変換プログラムで「間際らしい」としか変換されないことを不満に思うことでしょう。
その時点で自らの知識を疑い、間違いに気付けば良いのですが、なかなかそうもいかないものです。
結局は、そのまま平仮名で「まぎわらしい」と書いてしまうことになります。
中には「紛わらしい」と漢字表記しているケースもありますが、これは手書き原稿をOCRで読み込んだか、さもなくばわざと間違えて楽しんでいる可能性が高いです。

しかし、言葉遊びが過ぎるのは要注意です。そのうち、自分の中で混乱が起きかねません。
私もこの原稿を書きながら、どちらが正しい表記だったか、一瞬分からなくなってしまいました。
パソコンで文章を書いている限りは変換してみれば一発で分かるのですが、手書きの文章では間違えてしまうこともあるかもしれませんね。

この「紛らわしい」という言葉は、他にも誤字等を生み出しています。
「まぎらしい」など、一部の音が抜け落ちたものがそのひとつ。
それから、非常に紛らわしい誤字が、もうひとつあります。それは、次回のお題ということで…

[実例]

日本人とは、かくも「入れ替え」に弱いのでしょうか。
このような「入れ替え」が原因と思われる誤字等の品種を、「替誤科(かえごか)」と命名します。

[亜種]

紛わらしい:13件
紛わしい:75件
紛らしい:38件
まぎらしい:3件
まぎわしい:4件

※ 2006/10/06
このページに「余計な文字」がひとつあることをご指摘いただきましたので、修正しました。
推敲しながら語順を並べ替えていた際に発生したミスと考えられます。

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