2004.11.23

誤字等No.122

【カーボンなのチューブ】(誤変科)

Google検索結果 2004/11/23 カーボンなのチューブ:2,340件

「変換ミス」は、漢字だけに起きるものではありません。
ひらがなとカタカナの変換でも、傑作誤変換は生まれるものです。
今回は、そんなお話。

分類に迷ったのは事実ですが、「カタカナ」に変換すべきところを「ひらがな」にしてしまった誤変換、とみなして「誤変科」にしました。

お題となっている言葉の本当の表記は、「カーボンナノチューブ」といいます。
カーボン (carbon)」は「炭素」。
ナノ (nano)」は「10 億分の1」を意味し、極小の世界をあらわす言葉。
チューブ (tube)」は「筒」。
カーボンナノチューブ」とは、その名の通り、炭素原子が極微小スケールで筒状に連なった構造を持つ物質です。
軽く、強く、しなやかで、電気を蓄えることもできるその特性から、「驚異の新素材」として研究者の注目を集めています。
その製造法に関するニュースが新聞紙面に登場したのも記憶に新しいところです。

この物質に関する詳細な説明は専門のページに譲るとして、ここでの問題はその表記。
上記のように英単語だけでできている言葉ですから、「外来語」としての表記はすべて片仮名になるのが通例です。
しかし、なぜか「なの」だけが平仮名になってしまったページがありました。

おそらく、変換ロジックの問題でしょう。
カーボン」で文節を切らずに、「カーボンなの」までを一連の言葉として変換してしまったものと思われます。

ささいな誤変換と言ってしまえばそれまでですが、その特徴は出現する場所にあります。
この物質は未だ研究段階にあるため、言及する文章も、専門的な学術文となることが多々あります。
そんな難しい文章中に突然現れる、「カーボンなの」という妙に口語的な一言。
カーボンなの?」と可愛く質問されているようにも、「カーボンなの!」と可愛く断言されているようにも見えるその言い回し。
その圧倒的なギャップには、強烈な印象があります。

個人的な雑文であれば、洒落のつもりでわざとこのような表記をしている可能性も高いでしょう。
しかし、真面目一辺倒なページで、それは考えられません。
興味があれば、ぜひ一度検索結果のページを訪問してみてください。

一見、「完成」されているように見える誤字等、「カーボンなのチューブ」。
果たして亜種は見つかるだろうか、と心配になりましたが、ちゃんとありました。

」を漢字に変換した「カーボン名のチューブ」。
チューブ」の名称が「カーボン」ですか?

」だけが平仮名のまま残された「カーボンナのチューブ」。
カーボンナ」って、何?

」が抜け落ちてしまった「カーボンナチューブ」。
ここでも登場、謎の物質「カーボンナ」。

毎度おなじみ、濁点が半濁点になった「カーポンナノチューブ」他。

よーく見ないと分からない、似字科の「力ーボンナノチューブ」や「カ一ボンナノチューブ」。

そして、語感が楽しい「カーボンナノチュブ」。

こんな新しい言葉からも、多彩な誤字を展開する日本人。さすがですね。

ところで。
誤字等の談話室」にも書きましたが、最近、とある読者様より「2chに気をつけて」というコメントを頂きました。
その助言に従い、キーワードに「-2ch」を付加して「2ch」に関係するページを除外してみると…
なんと、2,000件以上あった検索結果が、わずか23件になってしまいました。

ここまで増幅されていたとは、正直言って愕然、です。
実際に書き間違いをしている人は、実はほんの少ししかいませんでした。

Google検索結果の件数をもとに色々と御託を並べるこのサイトの前提を覆してしまったこの発見。
はたして、どう対処したものでしょうか?

[実例]

日本人とは、かくも「誤変換」に弱いのでしょうか。
このような「誤変換」が原因と思われる誤字等の品種を、「誤変科(ごへんか)」と命名しました。

[亜種]

カーボン名のチューブ:10件
カーボンナのチューブ:7件
カーボンナチューブ:12件
カーポンナノチューブ:9件
カーボンナノチュープ:33件
カーポンナノチュープ:1件
力ーボンナノチューブ:9件
カ一ボンナノチューブ:1件
カーボンナノチュブ:11件

※ 2006/03/04
「脅威の新素材」を「驚異の新素材」に修正しました。
ご指摘ありがとうございます。

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