2004.11.28

誤字等No.123

【TOIEC】(替誤科 固有亜科)

Google検索結果 2004/11/28 TOIEC:7,050件

皆さんは、「TOEIC (トーイック)」をご存知でしょうか。
TOEIC」とは「Test of English for International Communication」の略称で、英語によるコミュニケーション能力を評価する世界共通のテストです。
そのテストは受験者の英語力を正確に評価できるとされ、そのスコアは英語力を示す指標として一目置かれる存在となっています。

TOEIC」のスコアを上げるための教材や講習会、学習ソフトや攻略サイトなど、「TOEIC」にまつわるビジネスも花盛り。
しかしよくよく見ると、それらの中には「TOIEC」が紛れ込んでいるので注意が必要です。
この程度のスペルを正確に表記できない人たちに教えを請うたところで、英語力の上昇は望み薄というもの。
教材を選ぶなら、せめて「TOEIC」と正しく書かれているものにした方が良さそうです。

ASDL」の回でもご紹介したように、日本人はこの手の「頭字語」を苦手としています。
いや、日本人に限りません。
TOEIC」のつもりで「TOIEC」と書いてしまっている人は、きっと世界中にいることでしょう。
四文字以上の頭字語に関して、その順番を正しく覚えることは意外と難しいもののようです。

無論、ただキーを打つ順番を間違えただけという「単純なミス」である可能性も高い誤字ですが、それにしては件数が多いです。
E」と「I」が入れ替わる背景には、何か原因があるのではないでしょうか。

前述のように、「TOEIC」は「トーイック」と読みます。
この発音を「ローマ字」的に解釈すると、前半の「トーイ」の部分は「TOI」にしたくなるのでしょう。
トーイ」なのに「TOEI」と綴るのは、「E」が「余分」に感じられます。
しかし、そのままローマ字的に「TOIC」としてしまっては、文字が足りません。
確か「E」が入っていたはずだ、という記憶を元に「TOI」の後に「E」を入れてみます。
こうして、「TOIEC」ができあがりました。
一見しただけでは間違いに気づきにくい、紛らわしい誤字です。

このような原因で間違えているのだとしたら、その問題は少しだけ発想を変えてみれば解決します。
TOEI」まで見ずに、「TOE」で止めてみましょう。
すると、「爪先」を意味する英単語「toe」があらわれます。
その発音が「トー」に近いことを知っていれば、「トーイック」という読みにも納得できるはずです。
これさえ覚えておけば、もう間違える心配はありませんね。

もっとも、「toe」が「トゥー」だと固く信じている人たちにとっては、受け入れ難いことかもしれません。
実際、「ヒール・アンド・トゥー」を誤字としたことに対する反発も、かなりのものがありました。
こんな人たちはきっと、「TOEIC」も「トゥーイック」と読みたくなることでしょう。
トー」って、そんなに「英語らしくない」発音なんでしょうか?

さて、「頭字語」が苦手な日本人。
間違え方が「TOIEC」だけなんて、そんなことはありえません。
順番を入れ替えた「替誤科」に属するものだけでも、「TEOIC」や「TIOEC」などが実在します。
そして、アルファベットを間違えた「TOEIK」や「TOEAC」などは、その種類も豊富。
両者を組み合わせれば、さらにパターンは増えると予想されます。

TOEIC」を受験するなら。
TOEIC」について、何かを語るなら。
まずは、その「TOEIC」そのものを、ちゃんと書けるようになってからにしてはいかがですか?

[実例]

日本人とは、かくも「入れ替え」に弱いのでしょうか。
このような「入れ替え」が原因と思われる誤字等の品種を、「替誤科(かえごか)」と命名しました。
そして、替誤の波は人名や地名などの「固有名詞」にまで及んでいます。
そのような品種を、替誤科から分岐した「固有亜科(こゆうあか)」と命名しました。

[亜種]

OTEIC:5件
TEOIC:792件
TOECI:1,050件
TIOEC:237件
TOEIK:698件
TOEIT:1件
TOEID:6件
TOEIE:13件
TOEIO:5件
TOEOC:203件
TOEAC:7件
TOEEC:3件
TOAIC:2件
TOFIC:132件
TEEIC:4件
TPEIC:5件
トゥーイック:3件

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