2005.11.05

誤字等No.144

【壮健美茶】(誤変科 固有亜科)

Google検索結果 2005/11/05 壮健美茶:1,400件

人名や地名など、「固有名詞」を扱う「固有亜科」に、新しいカテゴリが仲間入り。
今回は、「商品名」です。

日本のブレンド茶の代名詞、「爽健美茶」。
すっきりして香ばしい味、無糖で健康的なイメージ。
誰もが知る、大ヒット商品となりました。
趣向を凝らした幻想的なテレビCMも、話題をさらいましたね。

それにしてもこのネーミング、なんとも「贅沢」なものです。
爽やかに、健やかに、美しく。
いいことづくめじゃないですか。
商品名を間違わずに表記するためには、この「爽やかに、健やかに、美しく」を覚えておくことが有効です。

この「爽健美茶」は、一般用語ではなく、「造語」です。
多くの人の記憶には残っていますが、国語辞典には載っていません。
辞典に載っていない言葉ですから、一度で「かな漢字変換」しようと試みても、それは無謀というもの。
何も考えずに変換すると、「一見それらしいが正解ではない答」に落ち着いてしまう可能性があります。
そのようにして生まれたと思われる誤字、それが今回の表題「壮健美茶」です。

「漢字表記」に対する日本人の記憶とは、非常に曖昧なもの。
「なんとなく、それっぽい」表記でありさえすれば、それ以上追わずに満足してしまいがちです。

今回の事例では、先頭の「そうけん」がポイント。
かな漢字変換プログラムは、この部分を単語として認識します。
そして、「壮健」と変換してくれます。

壮健」とは、丈夫で元気なこと。
壮健」で、なおかつ「しく」なれるお茶、「壮健美茶」。

健康的なイメージですね。悪くないです。
なんとなく、「それらしい」表記に見えるため、「これでも良いか」という気にもなります。
壮健美茶」という表記にそれほど違和感がないのは、きっとそのあたりの感覚に由来するものでしょう。
だからこそ、誤字であることに気付かれもせず、これほど「蔓延」していると言えます。

壮健美茶」と記載している多くの人たちの文章からは、この表記に対する「疑い」は微塵も感じられません。
完全に、この表記で「正しい」と確信しきっています。
「もっともらしい」形で「思い込み」が定着してしまうと、これほど強固なものになるという見本ですね。

ただし、「」の字だけを冷静に見れば、その雰囲気は「」とはかなり遠いところにあります。
特に、あのテレビCMに描かれた世界とは、はるかにかけ離れています。
どちらかと言えば、アミノ酸入りの体育会系飲料の方が似合いそうです。

それでは、ここで他のバリエーションも探してみましょう。
まずは、「」の部分を「」にできなかったもの。

爽健日茶:650件
爽健微茶:78件
爽健備茶:9件

さらに「壮健」との組み合わせ。

壮健日茶:511件
壮健微茶:8件
壮健備茶:2件

さすがに、ここまで間違えても気付かないのは少々「うかつ」です。

次に、「」を「」と間違えたもの。

爽建美茶:177件
壮建美茶:3件

想起されるイメージは、建築作業中の大工さんが休憩時間に飲むお茶、でしょうか。

そうけん」と読む熟語は、他にもあります。
それらを使ったバリエーションも見つけることはできましたが、いずれも件数は少な目です。
内容も、誤変換であることを承知の上で、洒落として書いているような文章が目立ちます。
やはり、「まったく違う言葉」になってしまえば、さすがに気付く確率が高くなるということでしょう。

修正の難しい誤字とは、完全な間違いではなく、正解に近く、かつ「もっともらしい」誤字である。
これを「壮健美茶の法則」と名づけましょうか。

[実例]

日本人とは、かくも「誤変換」に弱いのでしょうか。
このような「誤変換」が原因と思われる誤字等の品種を、「誤変科(ごへんか)」と命名しました。
そして、誤変の波は人名や地名などの「固有名詞」にまで及んでいます。
そのような品種を、誤変科から分岐した「固有亜科(こゆうあか)」と命名しました。

[亜種]

双肩美茶:32件
送検美茶:43件
総研美茶:161件

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