2004.02.11

誤字等No.030

【少しづつ】(平誤科)

Google検索結果 2004/02/11 少しづつ:130,000件

誤字等の館に新種が仲間入りしました。
漢字でも外国語でもない、「平仮名」の間違いです。

今回の表題、「少しづつ」を教科書的に校正すれば、「少しずつ」になります。
「同じ割合で」といった意味を持つ「ずつ」を「づつ」と表記することは、現代仮名遣いとしては間違いなのです。
ただし歴史的(旧仮名遣い的)には「づつ」が本来の表記であり、現代でも「許容範囲」として容認されています。

ということで、「誤字」と呼ぶには少々厳しいのですが、あえて取り上げることにしました。
なぜなら、「ずつ」の方が間違いだと思っている人や、どちらが正しいのか分からない人が、かなり多いからです。
誤字と知りつつ許容するのと、何も知らずに信じ込むのとでは大きな差があります。
日本語としての「正しさ」など気にもかけないTV番組のテロップに影響されて、間違った知識を植え付けられてしまう現代人に警鐘を鳴らす…
なんて、大層なことを考えているわけではありませんけど。

現代仮名遣いでは、次のような場合に「ぢ」「づ」を使うことになっています。

(1)同音の連呼 (「縮む(ちぢむ)」「続く(つづく)」など)
(2)二語の連合 (「鼻血(はなぢ)」「竹筒(たけづつ)」など)

少しづつ」は、このどちらにもあてはまりません。
他の語と複合しない「単語」としての姿が「つつ」であれば(2)になりますが、そうではないからです。
常に濁音で使われるため、「ず(づ)」と「つ」が「同音」ともみなされることもありません。

単に、政府が告示した「決め事」でそうなっているだけのこと、と言ってしまえばそれまでなのですが、少なくともこれが現代日本語の「ルール」です。
従うか逆らうかは個人の自由。
それでも、わざわざ逆らうことで得られるものは、あまりないと思います。
正しい表記がどちらなのかを気にしていた方や、何も考えていなかった方、特にこだわりがない方は、とりあえず「ずつ」を使うようにすることをお勧めします。
この程度のことで非難されたり、試験で不正解にされたりするのは割に合わないでしょうから。

この「づつ」という表記、目にする機会はだんだん多くなっているように思います。
なぜでしょうか。旧仮名遣いが廃れた今、回帰が起こっているわけでもないようですが。

その理由は、「なんとなく」なのではないかなぁ、と私は思っています。
上述の「つづく」「たけづつ」と同じように、「ず(づ)」と「つ」が連続しているときは「づ」を使った方が良い「ような気がする」人が多いのではないでしょうか。
発音に差はないのですから、「見た目」で「づつ」の方がなんとなく「好み」、だから「づつ」を使うといった発想も理解できます。
そういった「なんとなく」をそのまま受け入れる風潮、杓子定規にルールを押し付けて否定することをタブーとする時勢が、今の時代にはあるように思えます。

このまま「づつ」が勢力を拡大していけば、やがてそれは「日本語の乱れ」から「変化」のレベルへと昇格します。
言葉は時と共にうつろうものですから、「変化」に抵抗する努力は詮無きものです。
いずれは、「どちらでも正解」の時代を経由し、「ずつ」の方が「昔の表記」として取り残される日が来るのかもしれません。

[実例]

日本人とは、かくも「平仮名の間違い」に弱いのでしょうか。
このような「平仮名の間違い」が原因と思われる誤字等の品種を、「平誤科(ひらごか)」と命名します。

[亜種]

ちょっとづつ:27,500件
ひとつづつ:20,600件
一つづつ:261,000件
一歩づつ:5,530件
一個づつ:4,250件

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