2004.02.12

誤字等No.031

【基ずく】(平誤科)

Google検索結果 2004/02/12 基ずく:17,700件

今回は、個人的にかなり気になる誤字のひとつ、「基ずく」をテーマにします。
すべて平仮名で表記した「もとずく」も同類です。

実際に検索してみると、販売業者のサイトにある「○○法に基ずく表示」が大量に見つかりました。
どこかの誰かが間違えたものを、真似して使っているのでしょうか。
本文はちゃんと「基づく」になっているのに、TITLE が「基ずく」になっているサイト、あるいはその逆もありました。
中には「訪問販売法に基ずく基づく表示」なんて不思議な TITLE のページもあったりして、驚かされます。
間違いに気付いて、修正しようとした名残りでしょうか。

」と「」の間違いは数多くありますが、中でも「基ずく」が特徴的なのは、「規約」をはじめとする「おカタい」文章に頻出することです。
大学・企業・行政等、真面目なページの真面目な文章で「基ずく」が使われていると、なんともガックリきてしまいます。

前回紹介した「少しづつ」と違い、「基づく」は「現代仮名遣い」で「」を使うと定められています。
「旧仮名遣い」ではありません。
例えて言うなら、「基ずく」は「手ずくり(手作り)」「缶ずめ(缶詰)」「片ずく(片付く)」といった表記と同じ種類の間違いなのです。
これらすべてに違和感を覚えないのであれば、もはや何も言うことはありません。
そのまま、ひたすらに我が道を突き進んでいってください。
ひとつでも「?」と思ったら、チャンスです。
謙虚になって、認識を新たにしてみることをお勧めします。

あくまで個人的な印象ですが、この手の仮名遣いの間違いが含まれている文章は、非常に「幼稚」に見えます。
誤変換による誤字やOCRの認識ミスによる誤字のように、「失敗」で済まされるものとは違うのです。
入学したばかりの小学生が、作文で「きょうわ、おこずかいお、もらいました」と書いているような雰囲気、と言えばよいでしょうか。
日本語に対する「教養の不足」や「関心の薄さ」が露呈しているとさえ感じます。

上述の間違い以外にも、「つくずく」「つれずれ」など、かなりの件数がヒットする現状を見ていると、なぜか悲しくなります。
「耳で聞いただけ」で言葉を覚えてしまい、ちゃんとした文章を読む習慣を持たない人が多いのでしょうか。

もしかしたら、わざとふざけて書いている人もいるのかもしれません。
こんにちは」よりも「こんにちわ」の方が「かわいらしい」と思っている人もいるらしいですから。
しかし、その「かわいらしさ」がどこから来るのか、一度考えてみてください。
それは、足もともおぼつかない、幼い子供の「つたなさ」に由来する感覚と同じです。

いい年をした大人が、他の大人に向かって「赤ちゃん語」を話していたら。
それはもはや「気持ち悪い」の領域に入ります。

気心の知れた仲間内でのやりとりなど、私的な文章であれば文句を言う筋合いはありません。
ご自由にお使いください。
しかし、もしそれが癖になり、公的な文章で使ってしまったら。
その瞬間、あなたの評価は地に堕ちるかもしれませんので、そのつもりで…

[実例]

日本人とは、かくも「平仮名の間違い」に弱いのでしょうか。
このような「平仮名の間違い」が原因と思われる誤字等の品種を、「平誤科(ひらごか)」と命名しました。

[亜種]

もとずく:6,470件
手ずくり:889件
缶ずめ:338件
片ずく:104件
つくずく:6,900件
つねずね:206件
つれずれ:4,610件
こずつみ:15件
竹ずつ:34件
裏ずけ:543件
近ずく:8,330件
おこずかい:42,600件

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