2004.04.13
誤字等No.058
Google検索結果 2004/04/13 と思いきゃ:565件
「と思いきゃ」という言葉を使う人がいます。
その使われ方はどう見ても「と思いきや」と同じであり、わざわざ「や」を小文字にする「主張」は見当たりません。
「と思いきや」は、「〜と思ったのだが、さにあらず。予想に反して意外にも…」といった感じで文章をつなげるための言葉です。
「思う」の連用形「思い」に、過去の助動詞「き」と反語の助詞「や」を組み合わせた構成であり、いささか「古めかしい」部類に入ると言えるでしょう。
しかし、WEB上を眺めている限りでは、圧倒的に「私的な文章」で使われています。
論文や報告書などの「カタい」文章ではなく、「話し言葉」をそのまま文字にしたような場面での使われ方がほとんどです。
かといって、「と思いきや」が「会話」の中に頻繁に登場するかというと、そうでもありません。
どちらかと言えば、自らの考えを言葉にした文章、特に「日記」などの「独り言」に近い分野で多用されている傾向がうかがえます。
「古語」のようでいて、「口語」としての側面を持ち、実際は「文章語」として使われている。
こんな「微妙な立場」が、「と思いきゃ」という誤字等の出現に影響していると思われます。
学校で習うわけでもなく、他人との会話で耳にするわけでもない。
それでもどこかで見かけて、いつのまにか覚えた表現。
だから「や」なのか「ゃ」なのかは「あいまい」になっている。
そんなところではないでしょうか。
興味深いのは、「と思いきゃ」を使う人が、この言葉をどのように読んでいるかです。
表記どおりに「きゃ」と読んでいるのか、発音上は「きや」になっているのか、あるいは「きゃあ」と伸ばして読んでいるのか。
確信はありませんが、どのパターンもそれなりにあるような気がします。
この言葉が「反語」の要素を持っているのは、反語の助詞「や」が含まれているからこそ。
その意味を強調したければ、「や」にアクセントを置いて発音しても良いはずです。
しかしそれは、「現代語」としては馴染みのない文法です。
言葉の成り立ちを意識することがなければ、「きや」を縮めて「きゃ」にしてしまうのも仕方のないところなのでしょう。
が、いざ発音してみると、「と思いきゃ」ではおさまりが悪い。
なんとなく「言葉足らず」な印象から、「きゃあ」と伸ばしてみたくなる。
そんな心理が働いているのかもしれません。
ちなみに、「語尾を伸ばす」表記もまた、「きゃあ」「きゃぁ」「きゃー」と豊富です。
(なにやら「悲鳴」のようになってしまいましたが…)
さらに亜種を探してみると、「と重いきや」という誤変科の誤字等が見つかりました。
まさか「重い」で正しいと思い込んでいるわけでもないのでしょうが。
皆さん意外と、「変換結果」って気にしないものなのでしょうかねぇ…
日本人とは、かくも「平仮名の間違い」に弱いのでしょうか。
このような「平仮名の間違い」が原因と思われる誤字等の品種を、「平誤科(ひらごか)」と命名しました。
と思いきゃあ:17件
と思いきゃぁ:8件
と思いきゃー:6件
と思いきあ:73件
と思いきぁ:3件
と重いきや:69件
と重いきゃ:2件