2004.04.10

誤字等No.057

【侯補】(似字科)

Google検索結果 2004/04/10 侯補:2,280件

今回は、「賢」さんからの投稿を元ネタにしています。

」という漢字は、意外なほど様々な場面で使われています。
まずは、気象関係の「気候」「天候」「測候所」。
何かが起こる前触れとしての「兆候」や「徴候」。
敵軍の様子を探る兵士、「斥候」。
時候」の挨拶として、「早春の候」「盛夏の候」など。
時代劇に登場する書面では、文末に必ずある「(そうろう)」。
他人の家にタダでやっかいになれば、「居候(いそうろう)」。
そして、今回の表題に関わる「候補」。
立候補」や「候補者」といった形でもお馴染みです。

色々な意味で使われているだけに、漢字単体としての「」の印象は、かえって薄くなってしまったのかもしれません。
縦棒が一本足りないだけの「」と入れ替わっていても、なかなか気付いてもらえなくなってしまいました。
前述の「」を「」に置き換えた誤字等は、すべて実在します。
その中でも目立って件数が多かったのが、「侯補」でした。
きわめて「真面目」な文章が、次々とヒットしています。

」と「」は、読みも同じ「コウ」ですから、余計に紛らわしいのでしょう。
「同じ漢字」だと思っている人も、いるかもしれません。
しかし、漢字の意味は全然違います。

」は、「侯爵」「諸侯」「王侯貴族」のように、大名や領主、あるいは爵位を表す言葉です。
その意味で解釈すれば、「天侯」は、とんでもなく偉い人のような気がします。
逆に「時侯」は、まるで一時的に領主になっただけの「代役」のようです。
格式ばった手紙の冒頭に「新緑の侯」と書いて、「誰だ、それは」と突っ込まれたら、返す言葉もありません。

」は「漢語」として使われることも多いだけに、いざ間違ったときには独特な雰囲気を醸し出すことがあります。
特に「伺侯」などの難しい言葉の場合、わざわざ難しい言い回しを使ったばかりに間違いを呼び込んでしまうという悲哀が、なんとも言えません。

さて、それでは恒例の「逆方向」を見てみましょう。
候爵」「諸候」「候国」「王候」…
予想通り、盛況ですね。ことごとく、見つかります。
やはり、「」と「」の見分けがつかない人は、かなり多いようです。

ところで、「三国志」に登場する武将の「カコウトン」は、「夏候惇」と「夏侯惇」のどっちでしたっけ?

[実例]

日本人とは、かくも「似たような字形」に弱いのでしょうか。
このような「似たような字形」が原因と思われる誤字等の品種を、「似字科(じじか)」と命名しました。

[亜種]

気侯:781件
天侯:630件
測侯所:68件
兆侯:166件
徴侯:161件
斥侯:197件
時侯:92件
季侯:12件
参侯:31件
伺侯:29件
侯鳥:14件
侯人:21件
侯文:56件
侯う:22件
居侯:58件
早春の侯:31件
新緑の侯:37件
盛夏の侯:35件
秋冷の侯:29件
初冬の侯:24件
候爵:683件
諸候:634件
候国:581件
王候:300件
列候:110件
候王:106件
夏候惇:2,520件
夏候淵:681件

※ 2006/12/12
一箇所、「候」と書くべきところが「侯」になっていた部分を修正しました。
ご指摘ありがとうございます。

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