2004.08.11

誤字等No.103

【てにおは】(平誤科)

Google検索結果 2004/08/11 てにおは:857件

てにをは」とは、本来は「漢文」を訓読するときに補う助詞などの総称です。
そこから、助詞や助動詞の使い方、言葉の用法全般にまで意味が広がりました。
今では、「助詞の使い方」に限定される場面も多くなっています。

誤字等の館では、特に助詞の「」を「」と書いてしまうような誤字を「てにをは」の間違いと表現してきました。
実際、これまでにも何度か「てにをは」の間違いに由来する誤字等をご紹介しています。
今回は、その「てにをは」という言葉そのものについての誤字が題材です。

私自身もときどき間違えそうになることがあるのですが、「てにおは」ではありません。
ここでの「」は助詞の「」ですから、これを「」と表記しては、それこそ「てにをは」を間違えたことになってしまいます。
この誤字に気付かないようでは、「気おつけて」を他人事とは言えません。

他人の「てにをは」の間違いを指摘したり、「てにをは」を正しく使えない人を批判したりする文章は多いものです。
(このサイト自体が、そういったことを話題としていますね。個人相手に「批判」するつもりはないのですが…)
しかし、その文章自体が「てにおは」になっていては、指摘も批判も「台無し」です。
それこそ、「人のふり見て我がふり直せ」ということわざがぴったりの状況になってしまいます。

てにをは」が話題になるということは、当然、文法や言葉遣いなどに言及する場面となります。
であればこそ、その文章そのものの言葉遣いにも気を配ってしかるべきでしょう。
このような場面では、どれほど高尚なことを論じていようと、誤字がひとつあるだけで説得力は激減してしまいます。
てにをは」自体を論じる文章で「てにおは」と表記するミスなど、「恥」の一言です。
もっとも、間違いのない完璧な人間などいませんから、誰かが指摘してくれて、素直に訂正すれば、とやかく言うようなことでもないかもしれませんが。

人によっては、「」と書かれていても「」と発音しているんだから、表記も「」で構わないじゃないか、という主張もあるでしょう。
「言葉は発音通りに表記した方が理解しやすい」といったところでしょうか。
であれば、「てにおは」などと中途半端な書き方はせず、「てにおわ」とするべきでしょうね。

無論、普通は「てにをは」は「tenioha」と読みます。
この言葉だけを見れば、「」で問題ないことでしょう。
しかし、「こんにちわ」や「こんばんわ」を支持するなら、それではいけません。
しっかり、「てにおわ (teniowa)」と発音することが「首尾一貫」というものです。
てにおわ」という表記を使うことこそが、「発音通りの表記」を例示する「代表」となり得ます。

…という理屈を真に受けて、本当に「てにおわ」と書いてみたとしましょう。
これで、言葉の意味が伝わるでしょうか。
文脈次第では、「てにをは」のことを指していると受け取られない可能性があります。
そして、言葉の意味が伝わらなければ、コミュニケーションは成立しません。

これこそ、「発音通りの表記」がコミュニケーションの阻害要因となる実例です。
まさに、自らの主張を否定する格好の材料となってしまいました。

最初の「」が古語の活用語尾に由来する以上、どれほど「現代化」を試みても完全とはなりません。
四の五の言わず、「てにをは」のような「専門用語」は「そのまま」受け入れた方が良さそうです。

[実例]

日本人とは、かくも「平仮名の間違い」に弱いのでしょうか。
このような「平仮名の間違い」が原因と思われる誤字等の品種を、「平誤科(ひらごか)」と命名しました。

[亜種]

てにをわ:3件
てにおあ:1件

※ 2004/08/13
「てにおわ」の部分について、一部手直ししました。

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