2004.07.01

誤字等No.090

【気おつけて】(平誤科)

Google検索結果 2004/07/01 気おつけて:3,030件

今回は、「亀山」さんからの投稿を元ネタにしています。

頂いたメールを読んで、さっそく Google で「気おつけて」を検索してみたのですが…
正直言って、少々「唖然」としてしまいました。
この件数は、予想以上です。

語尾を色々と変えてみても、「気おつける」「気おつけよう」「気おつけます」など、本当に大量にヒットします。
言葉に気おつけて」などという、まるで冗談のような文章までありました。

ひとつのページで何度も繰り返し使われていることも多く、ただの「打ち間違い」とは異なるようです。
子供の日記ばかりというわけでもありません。
「ふざけて」そう書いていると見られるものもありますが、「気おつけて」が正しい表記だと思い込んでしまっているとしか考えられないページも多いです。

こんばんわ」の回で、「てにをは」の間違いは「小学生レベル」という表現をしましたが、どうやら認識を改める必要がありそうです。
あらためて検索してみると、「これわ」「どこえ」などが当たり前のように見つかりました。
今の世の中、「てにをは」など「どうでも良い」と考える人たちがたくさんいるのですね。

点字の世界ならいざ知らず、「発音通りに表記する」ことしかできない人がこれほど存在するとは。
日本人の国語力はこの程度のものだったのか、と、なんだか悲しくなってしまいました。

もちろん、WEB上の文章ですから、どんな人が書いているのかは分かりません。
義務教育を受けていない人かもしれませんし、日本語を習いたての外国人かもしれません。
しかしもし、この「てにをは」すら満足に使えない人たちが生粋の日本人で、九年間の義務教育を終えているとしたら。
現在の学校教育システムに、何か根本的な「欠陥」があるように思えてなりません。

と、なにやら話が大きくなってしまいました。
実際には、「てにをは」の間違いよりも「構造」が理解できていないことが誤字の原因となっていると考えられます。
さすがに、助詞の「」を「」と表記しているようでは、まともなコミュニケーションなど望むべくもありません。
気をつける」という一連の言葉を「」を「つける」という要素に分解できず、「ひとつながりの単語」として認識してしまっているのでしょう。
であれば、単語の途中に「」という文字が入ることなど滅多にありませんので、何の疑問も持たずに「」と表記してしまうことも頷けます。
中には「つける」を「付ける」と漢字表記しておきながら、この構造に気付けない人もいるようですが…
ここまで来ると、その感覚はもはや私の理解を超えています。

ところで、この「気おつけて」という言葉、「気おつけてください」という形で使われると、私にはかなり「稚拙」な表現に思えます。
無論「」になっていることが最大の要因ですが、たとえ「」だとしても、やはり抵抗を感じます。
子供相手に諭すような場合や個人的な口語文であれば別段どうということもありませんが、不特定多数を相手にした事務的な文章の中に紛れていると、かなりの違和感があります。
丁寧な言葉のようでありながら友達に向って言っているような「気軽さ」が感じられ、少なくとも「店」や「会社」などの業者が「客」に対して使う言葉とは思えません。
お気をつけください」「ご注意願います」などといった堅い言い回しの方がふさわしいのではないかと考えてしまいます。

このあたり、昨今よく言われる「敬語の使い方を知らない」という苦言に近いものがあります。
とは言っても、「尊敬語」と「謙譲語」の違いといった「学問的な知識」の多寡を問題視する意見に賛同する気はありません。
老人が若者に文句を言うためだけに「敬語」の知識を利用しているような場面に共感する気もありません。

言うなれば、「TPO」が理解できていない(時と場所をわきまえられない)という感覚でしょうか。
いい年をした大人でありながら、いまだに「他人との会話」という状況に適応できない人たちに対する嘆き、とも言えます。
普段から、ごく狭い範囲の「友人」を相手にした会話しか経験できずに、広く「他人」を相手にする際に求められる「礼儀」というスキルを成長させることができなかったのだろうか、と。
そう勘繰ってしまいたくなるような人間は、実際に存在します。

気をつけてください」は、そんな人間が使いそうな表現である、というのが私の印象です。
勝手な推測ではありますが、私自身がこの言葉から感じる「幼稚さ」を説明すると、このようなことになりそうです。
その感覚が、「」という誤字によってさらに増幅された結果、なんとも「情けない」という気分になってしまうのでしょう。

とにかく、「気おつけて」などという間抜けな表記は、小学校低学年以下の児童・幼児以外には使って欲しくないところです。

[実例]

日本人とは、かくも「平仮名の間違い」に弱いのでしょうか。
このような「平仮名の間違い」が原因と思われる誤字等の品種を、「平誤科(ひらごか)」と命名しました。

[亜種]

気お付けて:1,260件
気おつける:674件
気お付ける:193件
気おつけよう:325件
気お付けよう:56件
気おつけます:1,100件
気お付けます:382件
気おつけましょう:657件
気お付けましょう:273件
気おつけないと:253件
気お付けないと:90件
気おつけなさい:48件
気お付けなさい:33件
お気おつけください:119件
お気お付けください:385件

※ 2004/09/24
本文中の「気をつけよう」が誤字になっていなかったので、修正(?)しました。
「目安箱」よりのご指摘でした。ありがとうございます。

前 目次 次