2004.03.30
誤字等No.052
Google検索結果 2004/03/30 年棒:15,900件
今回は、「カレス」さんからの投稿を元ネタにしています。
プロ野球シーズン到来。
メジャーリーグから超人気球団も来日し、順調な盛り上がりを見せています。
特に「スター選手」については、庶民には想像もつかない「億単位」の報酬も話題となります。
そこで問題。ヤンキース松井秀喜選手の「年棒」は、いくらでしょうか?
正解は、「そんなものない」です。
なぜなら、彼がもらっているのは「年棒(ねんぼう)」ではなく、「年俸(ねんぽう)」だからです。
…というクイズがあったとしたら、ひっかかる人は相当な数になることでしょう。
「年棒」は、それほど広く使われている誤字等と言えます。
検索結果は、まさに「メジャー級」と呼ぶにふさわしい数値となりました。
確かに松井選手は「打棒」で稼いでいるわけですが、受け取っているのは「俸」、すなわち給料です。
「棒」をもらったところで、うれしくはないでしょう。
「年棒」を使っている人たちの多くは、「誤字」であることに全く気付いていないかもしれません。
「棒だか俸だかよく分からない」という人、「どっちでも同じ」と思っている人も多いかもしれません。
その読みも、「ねんぼう」だか「ねんぽう」だか分からなくなっている人が多そうです。
「年棒」がこれほどの勢力を誇る要因は、ひとえに「俸」という漢字の知名度の低さにあります。
小学校で習う「棒」と、「年俸」「減俸」程度しか出番のない「俸」とでは勝負になりません。
「年俸○億円」というニュース記事を見たとき、それを頭の中で「年棒」に置き換えてしまったとしても無理のないところです。
そして誰かが「年棒」を使うと、それを見た人の中に、何の疑問もなく「年棒」という表記を受け入れてしまう人が現れます。
「年棒」と書いて「ねんぽう」と読んでもそれほど不自然ではありませんから、どこかで「ねんぽう」という発音を聞いても、疑問には思わないのでしょう。
こうして、「年棒」は社会的地位を獲得していきます。
「年棒」は、ビジネス関係の「用語集」にまで登場しています。
用語集を編纂するような人でさえ間違えているとなると、その根の深さは計り知れません。
「新語」として認められてもおかしくないほどと言えます。
それでも、現時点ではまだ「誤字」です。
他の言葉の信頼性も疑われてしまいますので、全面的に見直しすることを提案します。某求人サイトさん。
「俸」にはもうひとつ、「捧」という似字が存在します。
当然のごとく、これを使った「年捧」も見つけることができました。
しかし「捧」は「ささげる」という意味ですから、これでは給料をもらうどころか献上することになります。
採用情報に「年捧制」と書いてある企業がありましたが、そんなところ恐くて応募できません。
本当に求人する気があるなら、早急に直した方が良いと思いますよ。
日本人とは、かくも「似たような字形」に弱いのでしょうか。
このような「似たような字形」が原因と思われる誤字等の品種を、「似字科(じじか)」と命名しました。
棒給:668件
増棒:18件
減棒:814件
現棒:7件
月棒:289件
棒禄:24件
年捧:75件
年奉:465件
※ 2004/07/19
読者様より、「松井秀喜選手」の名前が間違っているという指摘を頂きました。
「樹」じゃなくて「喜」だったんですね。
人様の名前を間違えるのは、大変失礼なこと。以後気を付けます。