2004.09.06

誤字等No.108

【にに】(過不科)

Google検索結果 2004/09/06 にに:940,000件

タイトルだけでは、何のことだかさっぱり分かりませんね。
今回の誤字等は、今までとはちょっと毛色が違います。

実は、アンケートコーナー「誤字等の目安箱」に
「もっと増やして欲しい、と思う誤字等の品種を選んでください。」
という質問事項を置いてみたところ、「新種を希望」という回答がダントツの得票を獲得してしまいました。
これまでの分類ではあまり面白くなかったのだろうか…と思うと少々複雑ではありますが、せっかくのご要望。
リクエストにお応えして、新しい「科」の創設です。
その名は「過不科 (かぶか)」。
ひと文字多い、ひと文字足りない、といった「文字の過不足」に由来する誤字等です。

特に「足りない」方は一般に「脱字」とも呼ばれ、「誤字脱字」として並び評されるほどの「由緒ある誤表記」です。
これまで誤字等の館ではメインの素材として扱ってきませんでしたが、今後は視野を広げてみることにします。
まず今回は、ひと文字「多い」方の誤字が題材です。「足りない」方は、次回のお楽しみ。

さて、今回のテーマ「にに」とは、一体どんな誤字等でしょうか。
検索結果の多くは、誤字ではありません。
偶然に「」という文字が並んだだけ(ちょうど、この文章のように)のもの。
「縦書き」で書かれた文章を横に読んだため、「」が重なったように見えるもの。
さほど意味もなく「ににににに」といったように続けて書かれただけのもの。
などなど。
そんな普通の文章に混じって、「誤字」はひそんでいます。

それは、「助詞」の「」。
ひとつで良いのに、なぜか二つ書かれていることのある「」。
意外なほど目にする機会が多いわりには、あまり気付かれることのない誤字。
気付かれてもそのまま放置されることが多く、特に取り沙汰されることもない誤字。
普通の文章の中に、地味に目立たずひっそりと隠れている、そんな印象のある誤字。
それが、「にに」。

現象としては、言葉を覚えたばかりの幼い子供が言うとされている「蚊ににさされた」と同じです。
」というひと文字の単語を認識できないのか、助詞の働きがいまひとつ分かっていないのか。
いずれにしても、子供なら「かわいい」で済んでしまいます。
しかし、大人はそうはいきません。

なぜ、同じ助詞を二つ書いてしまうのでしょう。
その理由は、判然としません。
筆者自身がこのような誤字を書いた場面に遭遇していれば何か分かるのでしょうが、覚えもなく。
誤字を書いたこと自体はあるかもしれませんが、その瞬間の記憶は残っていません。
仕方ないので、いつものごとく、適当に推理してみます。

第一の仮説。
助詞が「文節」の区切りとなっているところから、文章を考えながらタイプしていると、そこでいったん打鍵のリズムが止まります。
頭は次の言葉を考えることに集中しているため、指先の注意がおろそかになりがちです。
その結果、それまで打ち続けていた「惰性」でつい、最後の文字をもう一度打ってしまう、そんな可能性はないでしょうか。

第二の仮説。
コンピュータで文章を書いていると、文字の移動や削除が簡単にできるため、一度打った文章を読み返しながらその場で推敲することがよくあります。
そのとき、ひとつの文節を削除したつもりが最後の一文字だけ消しそこなってしまったら。
その文字が、新たに入力した言葉にくっついて残ることになります。
同一ではなく、別種の助詞が連続しているパターンは、これが原因とも考えることが可能です。

…もう思いつきません。
何かご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひお知らせください。

世の中、「二つ」があるなら、「三つ」もあるかもしれません。
」一つで良いところ、「ににに」と三つ書いてしまう人は、いるでしょうか。
探してみたところ、わずかではありますが、しっかりと見つけることができました。

せっかくなので、「実例」として、「ににに」もご紹介することにします。

ところで、助詞が余分に連続してしまう誤字は、「に」に限った話ではありません。
他の文字でも、見つけることができます。
そんな文章たちは、よく見ればなかなか味のあるものです。
いずれ気が向いたら、それらもご紹介しましょう。

[実例]

[実例2]

日本人とは、かくも「文字の過不足」に弱いのでしょうか。
このような「文字の過不足」が原因と思われる誤字等の品種を、「過不科(かぶか)」と命名します。

[亜種]

ににに:8,870件

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