2005.05.06

誤字等No.134

【ひらなが】(替誤科)

Google検索結果 2005/05/06 ひらなが:1,440件

本人は、「平仮名」のつもりで「ひらがな」と書こうとしたはず。
ところが、結果はなぜか「ひらなが」になっていました。
「思い違い」や「勘違い」などとは無縁の、純然たる「書き間違い」。
それが、今回の誤字等です。

本当に「ひらなが」で正しいと思っている人も、いないとは言い切れません。
言い切れませんが、いたとしてもごくわずかでしょう。
ひらがな」「カタカナ」をまとめた「かな」という言葉がありますから。
この言葉に関しては、そう簡単に「覚え違い」は起きないはずです。

さて、この手の入れ替え誤字には、実に「気付かれにくい」という特徴があります。
間違って書かれていても、読み手の側で自動的に正しい言葉に「補正」して読み取ってしまうのです。

この現象は日本語だけに限ったものではなく、英語でも見られるそうです。
実例が載っているページをご紹介しましょう。
Can You Raed Tihs? (注:英語のページです)

ここまでシャッフルされていても、文章自体は「読める」ものですね。
さすがに、これほど派手な入れ替えなら「気付かない」ことはないですけど。
人間の「脳内補正」能力は、なかなかのものと言えそうです。

この「補正能力」は、「読み手」にとっては有効に働きます。
そこに誤字があることにすら気付かなければ、誤字による「実害」は発生しません。
余計な誤字に煩わされることなく真意を読み取れるのなら、効率的です。

一方で「書き手」にとっては、この力が「あだ」となります。
自らの書き間違いを自動補正してしまえば、間違いに気付くことができません。
気付くことができなければ、訂正されることもなく、誤字はそのまま表に出てきます。
ひらなが」のような誤字が見逃される原因のひとつは、間違いなくこの「補正能力」にあります。

場合によっては、「読み手」の側にも害となることがありえます。
誤字を「正しい言葉」に自動補正するなら問題ありませんが、常にそうなるとは限りません。
よく似た「別の言葉」に変えて読み取ってしまったとしたら。
ここで、意思疎通に錯誤が生じます。
いつも読み手側の補正能力に依存しているばかりでは、いずれは起きる問題です。

「誤字のない文章」を書くためには、書き手側の「補正能力」が邪魔。
ならば、意識的に「自動補正を無効にする」ことができたらどうでしょうか。
自分の書いた文章を読み返す際に「補正」を行わなければ、誤字を発見できる確率は格段に上がります。
これは、それほど難しいことではありません。
文章から「意味を読み取る」のではなく、「文字」そのものを追えばよいのです。
「読み取ろう」とすれば、多少の誤字があっても気付かずに脳内補正が働いてしまいます。
そうではなく、文字自体をひとつひとつ追っていくようにすれば、補正は機能しません。
「校正」の作業を行うためには、必須とも言えるスキルです。

ところで、「ひらがな」という言葉が登場する文章は、「子供向けの学習教材」などに多く見られます。
そして、そのような文章の中にも、「ひらなが」は紛れ込んでいます。
当の子供たちは、この間違いに気付くでしょうか。
それとも、補完してしまうでしょうか。

もし、気付いたとしたら。
それはそれで、「大人が常に正しいとは限らない」という人生訓になるかもしれませんね。

[実例]

日本人とは、かくも「入れ替え」に弱いのでしょうか。
このような「入れ替え」が原因と思われる誤字等の品種を、「替誤科(かえごか)」と命名しました。

[亜種]

ひがらな:41件
ひががな:47件
カタナカ:4,650件
カタタナ:26件
カカタナ:361件

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