2005.02.01

【誤字等の談話室 14】

誤字等の館 (ごじらのやかた) に寄せられる読者様のコメントに対して館主が答える「誤字等の談話室」、その第14弾です。

[057]

誤字等の談話室 5[021]等で取り上げてあります、英単語のスペルミスについ
て意見させてください。
現地(米国等)の国語(English)のテストでは、スペルミスは減点対象になら
ないことが多いです。(一文字違いでまったく意味の異なる単語はさすがに減
点対象となりますが・・・)
単語の綴りミスは「間違い」ではあるのですが、文脈上意味が通じる場合は殆
どが「おとがめなし」です。
一文字で意味をなす日本語(特に漢字)とは違い、複数のアルファベットの組
み合わせで一つの意味をなす英語とでは比較が困難ですが、「誤字」に対する
認識が基本的(我々と英語圏の人たちと比べ)に異なっていると思います。

長々と書きましたが、何を言いたいかというと「単語の綴りミス=英語に弱
い」とはあまり思って欲しくないな、と。
英語教育に関わる者として、このような受験英語的な思考と言いましょうか、
考え方が、日本人の英語に対する苦手意識を助長させているように思っていま
す。

英語の話だけをさせていただき恐縮ですが、今後「英語」に関する「誤字等」
の登場機会があった時には、上記意見が参考になれば幸いです。

ご意見ありがとうございます。
「受験英語的な思考」…なんとも、耳が痛いです。
私自身、あまり英語には自信がないので、スペルが間違っていないかどうかをいつも気にしています。
(それでも、ときどき間違えてしまいますが)
その延長で、他人の書いた英文のスペルも気になってしまうのですね。

英語圏の人々が、そこまでスペルミスに寛容であるとは、知りませんでした。
ということは、英語に慣れ親しんでいる人でも、スペルミスは珍しくないということですね。
いくらか、気が楽になりました。

今後、英語に関する話題をとりあげるときには、心得ておこうと思います。

[058]

既にご存じかも知れませんが、気になる物があったので一つ。

最近、「カロテン」という変な用語を耳にします。
最初に聞いたのは、日曜の夜9時にやっている、主婦に人気の某番組です。
どうやら、「カロチン」のことらしいのですが、カロチンはドイツ語の「Karotin」から来ており、
この単語は「カロティーン」という感じで発音されるので「カロチン」となるのは理解できます。
一方の「カロテン」は最近日本の栄養学者がこぞって使い始めたもので、
曰く、「カロチンはドイツ語。これからは英語の時代なので今後は"カロテン"と呼ぶ。云々」
Googleで検索したところ、「カロチン」が14万件弱、一方の「カロテン」は4万件強と、かなり浸透しています。
たしかに、英語でカロチンに相当する物は「carotene」と書きます。
しかし、英語の辞書を見てみると、発音としては「キャロティーン」という感じで載っています。
英語の場合、語尾の「e」は発音しない事が多い、というのは知っていても、
一個前の「e」がどうなるかまでは考えなかったようです。
これは外誤科に分類できるのではないでしょうか。

ですが、かの大辞林にも載っていることを考えると、
「カロテン」は既に日本語として定着してしまっているようです。
定着してしまったものは誤字とは呼べませんね。
以外と歴史が古いのでしょうか。

確かに、昔は「カロチン」が一般的でしたね。
「ベータカロチン」がもてはやされた時代もありました。
いつのまにやら「カロテン」が幅を利かせるようになり、今では文部科学省も、国の研究機関も、みんな「カロテン」に統一されています。
どうやら、「日本語として正しい」外来語表記を「カロテン」にしようという誰かの目論見は、成功しつつあるようです。

しかし、辞書に載っている発音記号を見る限りでは、「キャロティーン」が近いですね。
これを「カロテン」なんておもいっきり「カタカナ読み」しておいて「英語」だと言い張るのも、なんだか滑稽です。
英語ネイティブの人がどう発音しているのかは分かりませんが、どうせ「日本語」にするなら「カロチン」でも一向に構わないように思えます。

「カロチン」と「カロテン」で検索してみると、「ドイツ語読み」だった「カロチン」を「英語読み」に変えた結果です…などと説明しているページもたくさんヒットしました。
この人たちは、疑問に思わなかったのでしょうか?
受け売りの知識を披露する前に、それが本当に「英語」なのか、調べたのでしょうか?


わたしは、「カロテン」。今注目の、栄養素。
「カロチン」なんて、古い古い。
ドイツ語なんて、遅れてる。今は英語の時代でしょ…って、言うじゃな〜い。
でもあんた、「カロテン」は「英語読み」じゃなくて、「ローマ字読み」ですから! 残念!!
それって「DVD」を「デーブイデー」と読むのと一緒だよ、斬り!!

…すみません、一度やってみたかったんです。

なぜ、既に普及している外来語を、わざわざ英語由来に変えるのか。
なぜ、英語本来の発音だったら「ティーン」となるところを「テン」なんて変なカタカナ読みするのか。
なぜ、英語を崇拝して他の外国語を軽視しながら、その英語自体もないがしろにするのか。
日本人の英語観って、やっぱり、何か「変」ですね。

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