2005.08.12

【誤字等の談話室 28】

誤字等の館 (ごじらのやかた) に寄せられる読者様のコメントに対して館主が答える「誤字等の談話室」、その第28弾です。

[076]

こんにちは。いつも楽しく拝見しております。

さて、新たに追加された記事「幣社」の中で、

>「会社」という組織は、私が考えている以上に「おざなり」な存在のよう
です。

という文章があり、「おざなり」と言う言葉を使われていますね。

この場合は、「なおざり」のほうが適切かと思うのですが、いかがでしょう
か?

「おざなり」も「なおざり」も、どちらも「いいかげん」という意味を持ち
ますが、特に「おざなり」には、その場しのぎ的な意味が加わってきます。

今回の記事では、私は「会社に対して、みんな普段から適当に考えてる」と
いう印象を持ちました。なので、その場しのぎではなく、恒常的にそう考え
られていることを表現するならば、「なおざり」のほうが適切では?と思っ
たのです。

いかがでしょうか?

ご意見ありがとうございます。
「おざなり」と「なおざり」、なんとも紛らわしいですよね。
使い分けも難しい言葉です。

私としては、意識して「おざなり」を使いました。
わざわざカギ括弧で括ってあるのも、そのためです。

両者に「一時的」「恒常的」という概念を関連付ける手法は、初見です。
面白い考え方だとは思いますが、ここは私の解釈を説明させてください。

「おざなり」は、確かに「その場しのぎ」的な意味です。
誠意のない、間に合わせの仕事です。
が、たとえ形だけでも、仕事自体は成し遂げているのが「おざなり」です。

一方の「なおざり」は、仕事の手を抜き、完遂させずに放置している状態です。
「おざなり」な対応すら見せない、「それ以前」のレベルです。

宿題を「おざなり」にする小学生は、真面目に計算せずにでたらめな答を書くかもしれません。
宿題を「なおざり」にする小学生は、そのまま遊びに行ってしまうことでしょう。

「いいかげん」という観点では、意味の重複する両者です。
しかしそこには、形としての成果を挙げているかいないかという違いがある、と私は思っています。

今回の「幣社」に関しては、「利用規約」そのものは完成し、公開されています。
規約を作るという仕事は、実行されているわけです。
しかし、「幣社」などという誤字に気付いていない点から、仕事の「質」が疑われます。

「こんな小難しい規約なんてどうせ誰も読まないから、形だけそれらしく書いてあればいいさ」
世の中の「会社」の多くが、そんな意識で仕事をしている人間を抱えているのではないか。
それが、ここで私が言いたかったことです。

目立たない仕事を「おざなり」にしていても、会社の業務は成立するでしょう。
しかし、仕事を「なおざり」にしていたら、会社はつぶれます。

私が「おざなり」を使った理由、ご理解いただけたでしょうか。

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