2005.11.27

【誤字等の談話室 38】

誤字等の館 (ごじらのやかた) に寄せられる読者様のコメントに対して館主が答える「誤字等の談話室」、その第38弾です。

[084]

子供の国語の教科書をみて疑問に思いました
(品詞の問題)
「ある」は動詞、「ない」は形容詞
で、よいのでしょうか

面白いところに着目しましたね。
その通り、「ある (有る)」は動詞、「ない (無い)」は形容詞に分類されます。
「存在」を示す言葉と「不在」を示す言葉。
対義語の関係にあるはずの両者で、品詞が異なるのはなぜか。
その理由を真面目に研究している学者もいるようです。

これは、「文法」的な問題です。
「文法」とは、言語を構成する「規則」を分析した結果としてまとめられたもの。
そのすべては、学者が、便宜的に定義したものに過ぎません。
数学や自然科学などとは異なり、「唯一無二の正解」なるものは存在していないわけです。
一般的な言語感覚に照らし合わせてみれば、どうしても納得のいかない理論も多々あります。
このような「文法」という考え方の限界を示す例が、「ある」と「ない」の関係とも言えます。

現在の日本語文法では、「動詞」と「形容詞」は、ともに「用言」に分類される品詞です。
「動詞」は、物事の動作や状態などを表し、「形容詞」は、物事の性質や状態を表します。
この「状態」を表すという観点においては、動詞も形容詞も違いがないのですね。
両者を区別するのは、「活用」の形態です。
そのように区別した理由は、単に、そうすると都合が良いから、といった程度のものです。

ただ、突き詰めていけば、「ある」と「ない」のことも論理的に説明できるはずです。
「日本語」に対する深い探究心を呼び起こすには、なかなか優れた題材かもしれませんね。

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