2007.01.14

【誤字等の談話室 52】

誤字等の館 (ごじらのやかた) に寄せられる読者様のコメントに対して館主が答える「誤字等の談話室」、その第52弾です。

[119]

「的を射る」は記載上支障は無いが、「的を得る」という記載は間違いである旨、
NHKを初め各所で耳にしましたが、最近とあるきっかけで調べた結果、「的を
得る」も間違いとは云えないという説が某予備校講師を中心に提唱され、かなり
活発な議論が展開されています。貴殿の見解を是非お聞かせ願いたい。

「日本語の誤用」を話題とするとき、必ずと言ってよいほど登場するのが「的を得る」ですね。
大抵は、「的を射る」が正しくて「的を得る」は間違いである、と断言して終わりです。

それに対して、「的を得る」も間違いではないという説があることは存じています。
有名なのは、予備校で世界史の講師をしている中谷氏ですね。
「中心に」というよりは、中谷氏ひとりが気勢を上げ、他の人はただ便乗しているだけのように見えますが。
氏の提唱する論拠以外に、「的を得る」を擁護する論理構成を見たことがありませんので。
そしてその論拠もいささか稚拙に見えるため、私は納得していません。

一方的に「間違い」と断じるのではなく、いろいろな見方をすることは良いことです。
ただし、中谷氏の説を鵜呑みにして「間違いではない」と思い込むのは、かなり危険です。

「間違い」と断定するのも「間違いではない」と断定するのも、「無思慮」という点では同じです。
しかし、その結果得られるものには大きな隔たりがあります。

「的を得る」が正しいと言っているのは、あくまで中谷氏「個人」です。
その論拠を正確に把握し、自らの言葉で再構成できるまでに理解できているなら便乗もよいでしょう。
それをせず、安易に結論だけを引用しているようでは、自らの「思考力の欠如」を証明したも同じです。

他人の言葉だけに頼って自己弁護するくらいなら、素直に「一般常識」に従う方が良い、と私は考えます。

[120]

どういう順番ですか?僕のがいつまで待っても、ないんだけど・・・。

投稿された誤字等を採用したり、談話室に載せたりする順番に「決まり」はありません。
すべて、館主Rudyardの「気まぐれ」です。
メールが届いた直後に対応することもあれば、ずっと塩漬け状態になっていたネタを突然掘り起こすこともあります。

館主は、直接送られてくるメールも、「目安箱」からの投書も、すべて読んでいます。
しかし、そのすべてに回答することは、残念ながらできません。
時折メールに返信することもありますが、一部に限られているのが現状です。

忘れた頃に談話室に載ることもありますので、期待せずにお待ちください。

[121]

「ご教授願います」の間違いのほか「ご教唆願います」というのもありました。 

ありますね、確かに。
「ご教唆ください」「ご教唆をお待ちしております」「ご教唆いただきありがとうございました」……
色々な実用例がみつかります。
これに比べれば、「ご教授」なんてかわいいものですね。

「教唆」には、「犯罪をそそのかす」という意味があります。
他人に犯罪を起こさせた者も、「教唆犯」として罪に問われるのです。

もし、誰かに「ご教唆願います」と言われたときは。
「共犯者になる気はありません」と、きっぱり断りましょう。

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