2008.05.24

【誤字等の談話室 58】

誤字等の館 (ごじらのやかた) に寄せられる読者様のコメントに対して館主が答える「誤字等の談話室」、その第58弾です。

[132]

【誤字等の談話室 57】[131]に書かれている、コンピュータ業界の長音記号省略についてです。

私の勤めるソフトウェア関係の会社では、文書作成の手引きにルールが明記してありました。
今は手元に無いので記憶を頼りに述べると、
 ・長音記号を含めて3文字以下のものは省略しない
とのことでした。

興味深いのは、「オーバーフロ」と書く人と、「オーバフロー」と書く人がいることです。英単
語としてoverflowは確かに一語なので、オーバーフローは3文字以下でない、と判断する人と、
overとflowから成り立っているのでそれぞれで3文字ルールと判断する人がいるのですね。
もっとも、他のルールで、er、or、arの語尾による場合、というルールがあったような気がしま
すので、そうするとflowはもともと違いますね。(英語の発音として[r]を省略するのと、
[ou]→[o:]という日本語化の法則とは別問題ですからね)

「フロー (flow)」と同様の例をいくつか探してみましょうか。

アロー (arrow)
フォロー (follow)
イエロー (yellow)
スワロー (swallow)
ヒーロー (hero)
バッファロー (buffalo)

私の感覚では、どれも末尾の長音を省略したら「不自然」です。
もともと英語での発音が [ou] だから「長音」とは別物、という理屈も、確かにあるでしょうね。
外来語の語尾の長音を何も考えずに問答無用で省いていたら、かなり滑稽なことになりそうです。

[133]

採用に投票するだけにこのアンケートを使用してはいけないでしょうか?

何も問題ありません。
アンケートの項目はすべて「任意」ですので、必要ないと思ったところは「無回答」で結構です。
実際、「ご意見ご感想」のところだけを記載した投稿もたくさん頂いています。
何度回答して頂いてもかまいません。
どうぞお気軽にお願いします。

[134]

「誤字等の館」を楽しく読ませてもらっています。

リクエストなのですが、
昔のダウンタウンの漫才で

「カモシカの様な足」やない!
それを言うなら
「カモシカの足の様な足」や!

というネタがありました。


これを聴いた時、
思わず「なるほどなぁ〜」と笑ってしまいましたが、
勿論「カモシカの様な足」が間違いだとは思いません。
でも「どうして間違いじゃないのか?」と
自分で考えてみても、
なかなかスッキリした説明ができず、
もどかしく思っています。

これについて、
ホームページで取り上げて頂けたら嬉しいです。
ぜひ、読んでみたいと思います。
よろしくお願いします。

サイト運営がんばってください!

面白い!
いいところに目を付けますね、ダウンタウン。

もっとも、これを「ネタ」だと理解できず、「鵜呑み」にしてしまう人がいたら困ったものですが…

確かに、言葉を逐語的に解釈すれば「カモシカのような足」は「変」に感じられるかもしれません。
両足がそれぞれカモシカのような形をしているって、どんな合成怪獣ですか、というところです。

類似の例を探してみましょう。

「ウサギのような目」
「象のような耳」
「豚のような鼻」
「アヒルのような口」
「白魚のような指」

顔の両脇に象がいたり、顔の真ん中に豚がいたり。
想像したら大変なことになりますね。

これらはすべて、あるものの「特徴」をとらえた比喩表現です。
ウサギといえば、耳が長くて目が赤い。
白魚といえば、細長くて色が白い。
これらの特徴が一般的に広く知られていることを前提として、同じ特徴を持つ様子を示しているのです。

カモシカの特徴が「足が細い」ことであるという前提のもと、同じ「細い足」という特徴に対して「カモシカのような足」と表現したわけです。
これは「比喩」の本質でもあります。

このように解釈すれば「間違いじゃない」ことが理解できるかと思いますが、いかがでしょうか。
納得できなければ、「修辞技法」について勉強してみてください。

余談になりますが、実は、本物のカモシカは「足が太い」そうですね。

本来の言い方は、「羚羊(レイヨウ)のような足」だったとか。
羚羊(レイヨウ)とは、インパラやガゼルのような、本当に足の細いすらっとした動物です。

ところが、レイヨウが生息していない日本では「羚羊」という漢字の読みに近縁種である「カモシカ」をあててしまいました。
そのため、「羚羊(カモシカ)のような足」という誤読が発生し、今に至っている、と。

TV番組「トリビアの泉」でもとりあげられたことのある、雑学でした。

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