2005.12.11

誤字等No.146

【大体的に】(取違科)

Google検索結果 2005/12/11 大体的に:390件

大体」とは、物事のあらまし。
おおよそのところを、おおまかにとらえた様子です。

では、「大体的に」何かをするとは、どういった意味になるでしょうか。

「大体的に報道」なら、詳細は省き、要点だけを伝える「ダイジェスト版」の位置づけでしょうか。
「大体的に紹介」なら、とりあえず名前だけ伝えるといった「顔見せ」程度の紹介ですね。
「大体的に導入」なら、まずは軽く主要な部分だけ利用してみる、といった「お試し」の気分です。

どの用法からも、深く考えずに行動する様子が感じ取れます。
なんとも力の抜けた雰囲気の言葉です。

しかし、実際に「大体的に」の用例を検索してみると、どうも様子が違います。
どれもこれも、妙に仰々しいものばかり。
とても「大体」で活動しているとは思えません。

もう、おわかりでしょう。
これらは「大々的に」の間違いです。
広く、大規模に、盛大に…と言いたかったわけですね。
たったひとつの漢字の間違いではありますが、意味の落差は相当なもの。
勢いよく宣言したつもりが、なんとも間抜けな姿を晒しています。

この言葉、正しく「だいだいてき」と読んでいれば、「大体的」と変換されることはありません。
つまり誤字の原因は、ただの「誤変換」ではないわけです。
誤字で表記するには、読みの時点で既に「だいたいてき」となっている必要があります。
すなわち、その背景にあるのは「読み方」に関する勘違い。
だいだいてき」という言葉を、「だいたいてき」だと思い込んでいるわけですね。
清音と濁音の区別に弱い日本人の姿が、ここにもあらわれています。

無論、正しく知っていたとしても「打ち間違い」で濁点が抜け落ちることもあるでしょう。
しかしそれなら漢字変換した時点で「違う」と気付いても良さそうなものです。
この言葉を「だいたいてき」と思い込んでしまっている人は、かなりいるはずです。

どこかで見た、あるいは聞いた「大々的」という言葉。
それを読み間違えたか、聞き間違えたか。
あるいは、記憶が曖昧なものに風化したか。
いずれにせよ、言葉を「大体」で覚えた結果、「だいたいてき」になってしまったのでしょう。

さて、言葉を「だいたいてき」で覚えてしまったとしても、そのまま「大体的」につながるとは限りません。
漢字変換の結果として表示される「大体的」を、「そのまま受け入れる」という手順が必要です。

言葉に関する感性を持っている人なら。
そして、「大体」の意味を知っていれば。
この時点で、自分が表現したい事柄との大きな隔たりに気付くはずです。
そうすれば、正しい言葉を学習することが可能となります。

ところが、世の中にはその感性を持ち合わせない人が多いのでしょうか。
ごく素直に、「大体的」という変換結果が受け入れられてしまうわけですね。

さすがに「代替的」や「大隊的」などと変換されていれば、意味の違いは明白。
それに比べると、「大体的」の場合は意外と気付かれにくいようです。

もし、「大体的に」という表記に何一つ違和感を覚えることができないなら。
基本的な日本語センスの有無が疑われかねません。

たったひとつの間違いです。
ただ単に「気付かなかった」だけなら、「ミス」で済む話です。
が、現実には、こんなところからその人の「性格」や「生き方」が見えてくるものなのかもしれません。
あなたは、「大体的」な知識で満足してはいませんか?

[実例]

日本人とは、かくも「別の言葉との取り違え」に弱いのでしょうか。
このような「取り違え」が原因と思われる誤字等の品種を、「取違科(とりいか)」と命名しました。

[亜種]

だいたい的に:64件
だいたいてきに:44件
代代的に:5件

前 目次 次