彫刻家のノート#7「ギリシア

 模刻の旅
 講談社の依頼で、医神、アスクレピオス像を、模刻することになった

初めての仕事、初めての外国

エピダウロスの神域の全景

円形劇場が見え、その手前にアスクレピオスの遺跡がひろがる。私が訪れたのは観光客がいなくなる季節、ちょうど謝肉祭の前後の頃だった。地中海にせりだした半島の中程にあるこの地で、ある日、雪が降ってきた。薪を拾って宿に帰るとよろこばれた。

 

全部が大理石、酸化した茶色と荒涼とした山々に囲まれた遺跡に入り、無造作に散らばった破片を手にとってみる。その手触りが今も記憶に残る。

アスクレピオス神殿の跡

遺跡のなかにあるこの博物館に毎日通う。

そして宿に帰って粘土に向かう。行き帰りの途中で様々のものにであう。様々の人と出会う。毎日がたのしかった。

エピダウロス 博物館

毎日見ることが出来たのは石膏のコピーだったけれど、是なら遠慮なく後ろにもまわれてかえって気楽に取り組めた。やはりこのギリシアという土地で、毎日彫刻をながめ、そして何より粘土を握れるということの意味は私には大きかった。陳列されているほかに良いものがあって、駆け出しの頃の私にとって、この仕事にめぐり合えたのは本当に幸運だった。

エピダウルス博物館にて

上が粘土 63cm  下が原型 約 2m

(からみついた蛇と杖)

この形は、ヨーロッパで、医療関係施設のシンボルマークになっています。
 

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ここのページは「ギリシア」

Bronze Asclepius像

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