'02年度 四年生/三学期医 学 生 日 記
1月6日から、バリア試験が始まった。週に3〜4科目。みんな去年から勉強してはいるが、そうそう皆が皆 勉強ばかりしているわけではないので、後ろのほうの科目はまだ全然手をつけられていない、という人も 多く、日程が進むにつれて自転車操業感が色濃く漂い始める。よって、割と全般の基礎となる内科からの 要望を受けて、毎年初日は内科学の試験らしい。なぜか今年は量は多かったがあまり難しい問題がなく、 ほっとしたムードでスタート。
第1週の最後は精神科だったのだが、この選択問題の中にナルコレプシーという病気について書く記述問題 があった。ナルコレプシーというのは居眠り病とも呼ばれ、睡眠障害の一種なのだが、夜眠るときに徐々に 眠りに入らずに、いきなり夢うつつの状態にはいってしまうので、夢と現がごっちゃになった幻覚や金縛り が起こりやすく、更に困ることには昼間にもいきなりすとんと睡眠状態にはいったり、喜んだりびっくり したりで強く感情が動くと体の力が抜けたりしてしまう。そしてまた更に困ることに、本人も病気だと分からなかったり、病院に行っても診断されなかったり、 また診断されても回りの理解を得にくい。大事な場面で居眠りするので、なまけものとか、不真面目とか、 ヒステリーとかてんかんと診断されたり、交通事故を起こしたりと、社会生活上追い詰められてしまう ことがよくあるのだ。今は診断がつけば、良く効く薬があって、生活は非常に改善されるらしい。
家庭の医学を読むのが好きだった子供の頃になんて変わった病気だろうと大変印象に残っていたため、 「なるこ会」という患者の会があることもよく知っている中学生だったりしたのだが、去年の授業ではアメリカ で特にこの病気の研究をした先生が来て詳しく話してくれたのが非常に面白かった。スタンフォード大学 だけが飼い、繁殖させている「ナルコレプシーの犬」がいる。ビデオも見せてもらったのだが、遊んであげ たりして大喜びすると、ピョンピョンはねていた真っ最中に、いきなりストン!とくず折れてすやすや寝て しまう(情動脱力発作)。しばらくすると「あれ?」って感じで目を覚まし、またうろうろ・・。「すごくかわいい 犬達でね〜。何でこんなにかわいい犬がこんな因果な病気なんだろうって思っちゃったりして・・」といっ た、先生の大変科学的でない素敵なコメントが記憶に残っている。
冬休みにはまたこの病気についての本(『ナルコレプシーの研究 知られざる睡眠障害の謎』本多 裕: 悠飛社)を見つけて、その解明の歴史や、患者の会の出来たいきさつ、その中心となった先生の立派なこと、 患者達の日々の苦闘ぶりなどをじっくり読んでいたので、もうこれは書くしかないでしょう!と余白 いっぱいに治療薬から患者の会の活動にまでみっちりと書き込んで一人満足していた。
そのほかに今までの過去問にはあまりなかった、いろいろな脳波の鑑別が出たのだが、そのうちの一つの 周期性同期性放電(PSD:Periodic Synchronous Discharge)。これはクロイツフェルトヤコブ病、狂牛病か らの感染といわれる病気のものなので、むしろテレビのニュースや週刊誌の記事でおなじみ。
他にも個人的に興味持ってよく眺めていたある種のてんかんの脳波とか、授業外の雑学によって書けたところ が大変多く、・・ある意味、年寄り向き問題・・?
試験問題は科目、先生によって形式がばらばらなのだが、この問題が大体回収される。中にはどうせいるんで しょ、とくれる先生もいるのだが、過去問丸暗記の勉強されてもねぇ。同じ問題出しにくくなるし。という 理由でもらえないのだ。私達が過去の問題を受け継いで対策が出来るのは先人の努力のおかげであって 私達もそれを踏襲。試験前に割り振っておいてみんなで問題を覚える!当日までどういう形式で、何問ある か分からないし、完全に覚えられないかもしれないので、すべての問題を複数の人が満遍なくカバーできる ように割り振るのが腕の見せ所で、前日までに担当者からの指令が飛び交う。それを早急にまとめて次の 学年へ。試験後には模範解答まで作ってみる念の入れよう。試験対策とはいえ、みんな自分の担当部分は練りに練るので非常に理解が深まるし、文化祭の準備のような 連帯感は生まれるし、スパイごっこみたいで面白いところはあるし、何よりやった問題を復習して解答作る のって、とても後悔とともに記憶に刻まれるし、どれもなかなかメリットは多いと思う。
とにかく早く帰ろうと超特急で答案を書いた日があった。インターネット上で県内の小学生に危害を加える という予告が出たので、いたずらとは思うけれど警戒するようにという連絡が回ったため。午後の試験でも 急げば下校時間に間に合うし。とそればっかり考えていたので氏名欄に娘の名前を書きそうになったりした。結局何事もなく終わって何よりだったのだが、まったく人騒がせな。最近は警察側もだいぶスタッフが充実 してきたのか海外のサーバー経由で足跡をごまかした人なども突き止めるようになってきているので、犯罪 にかかわる場合などは、是非頑張ってきっちり注意して欲しいものだと思った。
試験は午後か午前に一つずつだったので、午前のときはお昼からちょっとのんびり。家人と銀座で合流して タイ料理屋さんなどに行くのが楽しみだった。「サイアム」はバイキングスタイルでおかずもカレーも麺も 美味しくて、タピオカなどのデザートも取り放題でお気に入り。(ダイエット中には向かない)
地下街にある屋台形式の「ティーヌン」外国旅行したような雰囲気で定食やラーメンが美味しくてこれもおすすめ。
二月の第1週の3科目でついに終了。最後の放射線科、耳鼻科も決して楽なわけではなく、落とされる人 だっている科目なのだが、人間そうそう緊張は続かないということを実証するかのように、脱力ムード だった。おわって、やったー!ととりあえずは喜ぶものの、20日に発表、再試が続くので心配な人 は(全然心配ない人は少ないと思うが)勉強を引き続きやったほうがいいのか、遊んじゃっていいのか 結構宙ぶらりんな状態に置かれるのだった。ともあれしばらくは骨休み。一応春休み!