'03年度 五年生/一学期医 学 生 日 記
医療面接というのは昔で言う問診に対人上のマナーやテクニックを加味したようなもの。年齢性別や名前 の確認、主訴(どこが具合悪いか)、過去にした病気、更に詳しい情報の色々を要領よくもれなく聞き出す、 と言うほかに、目を合わせて話す、礼儀正しく適切な態度と言葉遣いで話す、相手をリラックスさせ、話し やすい流れを作る、と言ったポイントも重要。ベテラン先生たち曰く、僕達はこんなの習ったことないよ。 恵まれてるよ。でもその分マニュアル風に流すようにならないように気をつけて。とのこと。これらをただ講義で聞いてても身につくわけがないわけで、模擬患者(SP:Simulated Patient)を 使った実習をする。模擬患者というのは患者の役をしてくれる人で、想定の患者の名前や仕事、家族構成 から悩み、さまざまな症状といったあらかじめ用意された情報に基づいて役になりきって診察の相手を してくれる。自分から全部しゃべってくれるわけではないのでうまく誘導しないと出てこない情報もある。
この日まで知らなかったがそういうSPを養成して登録している非営利団体などが色々あり、たくさんの 会員がいるらしい。私達のところに来たのは東京SP研究会の方々。6人ほどの班ごとにSPさんが一人 ついてくれて、制限時間5分の中で面接をし、あとでこういうところが良かったとか、もう少しこうした ほうがいいとかフィードバックしてくれる。
初めてのことなのでみんな緊張して、主訴を聞いただけで、その他に何を聞いていいか思い出せずに笑顔で 沈黙・・とか、あれもこれも聞かなきゃとひたすらクローズドクエスチョン(YES,NOで答えられるような聞き 方)の連発になって患者が自由に話す時間がなかったりとか、メモを取るのに必死でほとんど顔を見てな かったり(でも実際そういう医者って何度も見たけど・・)必要なことを聞きそこなったり、不要なことを 細かく聞きすぎて時間がなくなったり・・とまあ、初々しくあたふた。
またこの様子をビデオにとって終わったあと廊下ですぐ見せてくれるのだがまぁこれが恥ずかしい。あれっ こんな顔してたんだとか、頭かいてる・・とか、自分が必死に何かしてて、しかも不慣れであたふたしてる ところを映像で見るなんてあまりないことだし、みんなこれが一番恥ずかしかったと口々に言っていた。
私は上がるとか話すのが苦手と言うことはないのだがビデオはやはり笑っちゃいましたね。こういう機会 があって実に良かった・・。SPさんのフィードバックはとても丁寧で、率直でありながらもこちらを気遣 っている感じでとても勉強になった。いずれもずっと年上の人ばかりだったのでそもそも人としての年季 が違うし。あ〜こうすりゃ良かった、これ聞けばよかったと色々後悔しつつも発見が多くて非常に楽しい。 また、こういう相槌をうってくれたのがとても嬉しくて、ほっとしました。と言ってもらったのが とても嬉しかった。その日寝るまでずっと。
4月から7月まで、少人数のグループに分かれて、1週〜2週ごとにさまざまな科や項目について講義や実習。 本格的に病棟を回る前の準備期間のようなものといえる。私達の班は最初が一番大変と言われる心臓だった のだが、診察の基本の手技や知識が色々詰まった内容なのでなかなかいいスタートだった。解剖や発生学のおさらいで、もうずいぶん忘れていることを実感。でも何も知らずに解剖を習っていた時 とはまた違って、病気の話や生理を色々やった後に学びなおす解剖学はずっと色々なことが腑に落ちて 面白い。
聴診器の使い方、心音。去年から授業でやっているがちょっと聞いたぐらいでは身につかない。何度も何度 も聞いているうちその音の区別がついて、そこに入った情報が読み取れるようになってくる。音の高い低い は区別つきにくいが、歌詞をつけるとなかなか整理しやすいのを発見。トットロン。シャートン。ズシャート・・ で授業中の質疑には色々答えられたので喜んでいたけど翌週のテストでは思いっきり間違えた。まあそう 簡単にはいきません。
心電図はみんながもっとも手を焼くところ。なれないと何がなんだか見分けがつかないし、心電図のテキス トと首っ引きで次から次へと延々と読まされる。これもだんだん読めるようになってくる。暗号解読のよう。 しみじみ心臓って電気機械なんだなぁと思った。実際に胸にペタペタ端子を張って心電図をとる実習も色々。 男の子はしょっちゅう服を脱がされる週だった。
画像はレントゲンやCT、MRIで正常像、色々な病気で見えてくるものを勉強。すでに授業でやったものも 多いが、何度見ても見たりないぐらい知識や理屈とともに経験がいる。でもこの画像を見て手がかりを探す っていう作業、とても面白くて実は好き。影をみる放射線などの画像に限らず直接の皮膚の表面なども含め、 絵としての情報から情報をくみ出す作業はは、絵を描いてる人なら馴染み深いかも。
人形を使った救急蘇生術の実習。なかなか精巧な人形で呼吸が止まって何分後とか脈があるないとか設定 できて、息もどれぐらい吹き込んだか出る。正しく蘇生を続けるとめでたく!脈が戻って目が開く。キリ キリキリ・・と言った感じの非常に不自然なまぶたの開け方でちょっと怖い(^^;)この人形女性で大変 美しいお嬢さんでアンと言う名らしい。妙にグラマーでしかも胸がリアルに作ってあるのは何故・・。
症例検討。こういう人がこういう症状で検査値はこうでした・・と言う情報を与えられて診断や治療を考えて 資料をそろえ発表。勉強になるし推理の面白さはあるし、今は時間的な余裕もあってゆっくり取り組めるの で嬉しい。
講義や人形だけでなく病棟に行って患者さんの心音を聞かせてもらう。学習用ソフトで様々なパターンの 音を何度も聞いていたのだが、現実の小さな赤ちゃんのすべすべの胸から聞こえるひどい雑音の入った 異常な心音は、音は同じでも耳を通して流れ込んでくるものがまるで違う。
肺には枝分かれした気管支という空気を通す管があるが、適当に枝分かれしているわけではなく、ちゃんと 規則性があってそれぞれに名前がついている。それを図で眺めたところで覚えるわけないのでカラフルな 針金で模型を作って学習。工作の時間のようで楽しい。ワイのワイのいって質問に答えたりしているうちに 結構覚えられるというなかなか評判のよい授業らしい。後は、内視鏡や聴診を色々な模型や人形で実習。今の模型って、ふつうのwindowsパソコンにつないで色々 設定しながら右の上の辺りに○○雑音をだすなどと言ったことが出来て単純ながら見てて面白い。 もちろん画像もたっぷり見た。昔ながらのレントゲンでもすごくたくさんのことが分かる。でもそこで殆ど 見えないものがCTだとくっきりはっきり見えたりするのにも感心。
肺からちゃんと空気が出入りしているかは血液の中に溶けているガスを測ってみるのだが、検査室にいって その様子を見せてもらう。普通、血液検査は肘の内側の静脈などからとるが動脈採血といって動脈の血を とる。皮膚から見える青っぽい血管はたいてい静脈で、赤い動脈は奥のほうにあって見えない。ので、手首 の動脈採血は針を直角にぶっす〜と深く刺す。ちょっとコワい。班の男の子の一人が被験者になったのだが、 先生に、タバコ吸ってるでしょ。しかも結構吸ってるでしょ。一日20本とか?朝も吸ってきたでしょう。 とすらすらと言い当てられて、一同おぉ〜!と感心。タバコから出る一酸化炭素が赤血球にくっついてしま うのですぐ分かる。くっついている分酸素を運ぶ働きは落ちてしまうのでニコチンの害以外にも体にはダメ ージ。今はタバコを吸う学生も激減したので、これだけ一酸化炭素値高い人久しぶり。他の班にも見せま しょう。と先生は嬉しそうに伝票を保存していた。
検査部は毎日病院中の膨大な検体が集まる。すべてのデータは端末の画面で見られ、 見渡す限りの広〜いフロアにオートメーションの各種機械が並び、その間をたくさんの人が行き来していて まさに工場のよう。ドラマなどで見かける理科室のような検査室とはまるっきり違う。
外科で胸腔鏡の手術(小さな穴からマジックハンドを入れてする手術。やりにくいし時間もかかるが傷が 小さく体への負担が少ない)をビデオで見た後、練習用の台で練習をさせてもらった。おなかの皮膚の代わり の板の穴を通して下にマジックハンドをいれ、他の穴からは助手がカメラの付いた棒をいれモニターを見 ながら下においたガーゼのしるしを小さなはさみで切り取る。だけ、なんだけど前後左右の感覚がつかみに くく、ものすごくギザギザになる人多数。ガーゼを見た先生が「あ〜こりゃ〜患者さん大変(-_-;)」
直接見て、手で持ったハサミでちょきんとすればなんでもない操作だが。熟練が要るって言うのは こういうことかと納得。この一本何万円もするマジックハンドやチビハサミつきの棒はいずれも使い捨て。 練習で使った古くなったマジックハンドをもらった学生は大喜び。何に使うんでしょうか・・
今話題のエコノミー症候群のように、血の塊が出来て詰まる病気から、脳に出来ても胸やおなかの大血管に 出来てもとっても危ない動脈瘤、健康番組で始終目にする動脈硬化、よく中高年女性の足にぼこぼこ出て 見た目に困る静脈瘤、これまた危険な動脈解離、糖尿病などの病気によって起こる血管障害による色々な 症状・・何せ体中にあるものなので意外と盛りだくさん。X線やCT、MRI、血管造影といった画像を見たり エコーで血管の様子を見たり、足の血圧を測って手の血圧と比べてみたりといった実習をいろいろ。胸やおなかでは男の子ばかり患者役で悪いので足の血管の時などはよく患者役を買って出たのだが、患者役 に必要な適性が今ひとつであることが発覚。エコーがくすぐったい!!超音波自体は人体にどうこうする ものではないが、ゼリーを塗ってプローブでぐりぐりするのが。気合を入れて我慢するものの、何度笑い 出したことか。プルプルするわ 笑い出すわ ひざの裏をぐりぐりするとガクッとひざが折れるわで、妙に 疲れた週だった。
でも一昔前と比べると、手軽な上に非常に有効で、せいぜいくすぐったくて困るだけなんていう平和な検査 があるのは、なによりなにより。
おっぱいの病気と治療について。画像やビデオも含め4年生の授業でも相当やったし試験にも出たので、その おさらいをしつつ実習。新しくやったものとしては触診実習。テーブルにぐるりと着いた学生達が練習用 ゴム製おっぱいを神妙な顔で一人一人触りつつまわしていく様は、はたから見たら多分かなり変。その模型はつかんでみると乳癌らしき(とは限らないが)固いごつごつしたしこりが触れる代物で、実際自分 の胸にこんな感触を見つけたらさぞぎょっとするだろうなぁ・・と女性は結構思うのだが、男性は何が頭を 去来していたんだろうか。
乳腺の解剖図を見せつつ先生曰く「この図はアメリカので、日本の人はこんなに脂肪多くないんだよね。 日本人は全体に固い。欧米人の胸は柔らかい。機会があったら触ってみて」 機会って・・
乳癌では乳房温存手術というのが最近話題だが、転移していないとか、奥深く喰いこんでいないといった いくつかの条件さえクリアすれば、乳房全体を取っても、部分的な手術でもその後の直る割合には 変化がない。というわけで極力小さく取るとか、やむを得ずがっぽり取ってもその後に植皮したり形成して 乳房を再建したりとか色々な手術の技がある。温存手術が出来るかぎりぎりのケースでも希望する人が多い ことや、おなかや背中の皮や筋肉をはがして胸を作るような手術はかなりの大きな手術であるのをみると、 男の子達は「そこまでしたいもんかなぁ・・・命が危ないって時に・・(しかもかなりの高齢者なんか特に・・)」 とやや引き気味。なかなか遠い立場の気持ちは分かりにくいもの。
逆に、癌でおなかの中のリンパ節をたくさん取るような手術の時に神経を痛めて男性生殖機能が失われる のを防ぐための数々の神経温存術などの紹介では、女の子達は「こんな命がけの大変な状態で、しかも いい年でそこまで機能残したいのかなぁ??神経を残すために癌取り残したら怖いのに・・」とちょっと 「??」。もっとも機能温存へのこだわりはアメリカがすごく強いらしく、 日本男性はもういいですって人も多いらしいが・・
直すためには我慢、ばかりじゃなく、QOL(生活の質)が重視されるというのは大変な福音だが、その価値を 理解するには当事者以外にはかなり想像力がいる。と実感する日々。
脳についてはまず解剖と機能のおさらいが多くて大変なのだが、それが診断にはとても重要なので画像を 山ほど見つつ復習と試問の嵐。大体脳なんて長年生きていればどこかしらおかしくなるし、倒れて運ばれて くる人には脳卒中は多いし、事故で頭を打っても緊急に診断と処置が要る。全身の機能センターでうかつに いじれない上に、なまじ頭蓋骨という硬いカプセルに入っているので、他の場所ならどおってことのない 小さな異物や塊でも脳は逃げ場がなく大変なことになる。脳というもの自体興味深いものだし、画像は見れば見るほどなれてくるという代物なので面白いし、症例と つき合わせてどんどん謎解きをしていくように診断をつめていくのも面白いが、助からないとか後遺症が ひどく残るケースを見るのは気が重い。そしてそれは結構多い。手術でいじったら死んでしまう、というよ うな場所に禍々しく食い込んでいるたちの悪い脳腫瘍の画像。フィルムのはじに名前と 7歳 女 の文字。 「これは(手術しようがないけど)この後どうしたんですか?」「一応いったん家に帰ったけど、一年ぐら いで亡くなりましたね。」やっぱりどうしてもそういう時は子供達の顔が浮かんでしまうので・・
一度生理学実習でもやった脳波。何人かが専用の部屋に入って計測。機械や部屋が珍しくてきょろきょろ。 脳といってもその働きの方面で精神科。演技者による様々な精神病患者のインタビューのビデオをみて、 スコアをつける練習。アメリカのビデオで演者は向こうの人。せりふは吹き替えだったがなかなか上手だった。
神経の働きを見る検査のいろいろ。色々な姿勢を取らせて見たり、動いてもらったり、筆や針や振動する 音叉で感覚があるか調べたり、ハンマーで腱反射を見たり。昔のお医者さんがひざをコン!と叩いていた あれ(他にも色々叩く場所がある)。最後にはテストがあったのでみんな空き時間に一生懸命練習して いた。当日私に出された課題は、足の位置覚(足の指を動かして、どっちにまがっているか言ってもらう) 振動覚(音叉を当てて、振動を感じなくなるまでの時間を計る)ひざの位置感覚(片方の膝を私が曲げ、 もうひとつの膝を同じ角度に見ないで曲げてもらう)。順番が次の人が患者をしたが、うっかりスカートだと やりにくい。ベットに寝て膝を立てるような課題の時にちょうど患者役がスカートの女の子だった時は、 足元に居た男の子達が困った顔でささささ・・と礼儀正しくよけていた。
首から上の、頭蓋骨の外側の週。眼科では専門の機械がいっぱいあるがそれを色々いじらせてもらう。 眼鏡屋さんが検査用の変なメガネフレームにガチャガチャいろんなレンズを差し込んでは目の検査をして 何やってるのかというのがようやく分かった。(近・遠視の度合いや、乱視のぶれの軸を精密に測っている) 目の表面や目玉の奥を見るための機械、視野を測る機械・・それでなにが見えてなにを考えなければいけ ないか。そして、素人は目だけと思いがちだが高血圧とか糖尿病を始め種々の全身の病気とリンクしている 病変も多いので考えることは山ほどある。耳鼻科でも色々な器具の操作。額帯鏡(がくたいきょう)と呼ばれる、昔のマンガではお医者さんの シンボルだった額にくっついた銀色の丸い穴あき鏡。(今では歯医者さんと耳鼻科医の道具らしい) あれで反射させた光の焦点を見たいところに合わせつつ真ん中の穴からそこを見る。意外と難しくて大騒ぎ。 銀の小さなラッパのようなものを耳に入れて耳の奥の鼓膜を見る。耳掃除してる時は見えないくせに 結構簡単に鼓膜は見える。
こういった伝統的な道具の他にファイバースコープによる鼻からのどの観察も。じゃんけんに負けた 学生が変わりばんこに患者役。あまり麻酔しなかったせいもあるが痛そうだし、ちょっと大変。でも 体を傷つけることなく、奥の細かいところまで非常〜に良く見えるんだから文明の利器だなぁと改めて感心。
口腔外科は歯学部の外来で。外来で実習することはよくあるのだが、医学部の外来は待合室を囲んで 小部屋がいっぱいある形なので、その一室を使う形だが、歯学部の外来は本当に大型歯医者さん形式。 大きな部屋にずらーっとあの歯医者さん道具とイスと患者さんが並んでいる、そのど真ん中のテーブルで レントゲン見たりお話を聞いたりしていて、なんかこんなとこでいいんでしょうかと小さくなりつつ実習。
おまけに途中でガムテストというガムをかんでどれだけ唾液が出るかを測るテストを体験しながら講義を 聴いていたので皆モグモグしながら紙コップにダラーーー(・¬・)とよだれをたらしながらという、 相当間抜けな姿。自分でもおかしくて笑いそうで困った。
ホルモン関係や老人特有の体の変化のおさらいなどだが、最も重点的にやったのが国民的疾患となりつつある 糖尿病。つい最近もマスコミで「日本人の6人に一人は糖尿病予備軍!」と騒がれていたが、本当にその通り 、砂糖水を飲んで血糖値を計る実習では一班(6人)に一人は要注意な人が出るのだった。体の各部の症状に ついて、病因について、検査の色々、治療の色々、食事、運動療法について・・など盛りだくさん。この病気、なにが困るって体がかなり壊れるまで自覚症状がない。糖のせいで血管が痛んでくることで 体中にガタが来る。癌と聞けばみんな震え上がるが、糖尿なら「いや〜私もですよハハハ」で すまされてしまうが、失明すれば大変だし、腎臓が壊れて透析に入る人は毎年大勢いる(ちょっと昔なら そこで亡くなるところだ)。治らない潰瘍が広がって足を失う人も珍しくない。薬もあるし生活の仕方で 留められるにもかかわらず「自覚が持ちにくい」というのが最大の難所だといえる。
ちなみに検査の砂糖水はかなり甘いが、炭酸が入っていて結構美味しい。途中でうーーーん、ちょっと 重い・・ってなるけど。
心臓と手足の脈をそれぞれ測って脈の伝わり方の速さを調べ、血管の硬さを測定する機械では、被験者を やったのだが「年の割にはちょっと硬めだよ〜。」と言われてガーン!( ̄▽ ̄;) 通常、血管が 硬いと血圧が高くなる。硬いホースに水を流せばビューッと出る理屈だ。でも私はかなり低血圧。よほど めぐりがトロいのだろうか・・最近、最高血圧が100以上出ることが多くなって人並みに近づいたと思ったの は、自律神経が良く働いてるというより単に管が硬いのか・・
その他、様々なホルモン異常について。ごく微量で体中の細胞にすごい指令を出してしまうホルモンは大変 興味深い。魔法の薬って感じだ。手塚治虫の作品を読むとホルモン系疾患が好きなんだろうなーと思うことが 多いが、彼もきっとこの不思議さのとりこになったんじゃないだろうか。
あと、一コマは漢方の講義。様々な雑談など交えながら先生の名調子が夜まで続く。あっちこっち飛ぶ雑談 に色々答えていたせいか? あんたは是非漢方医になりなさい!と強いお勧めを頂く。その日私は、 たまたまちょっとたちの悪い風邪をひきかけて熱が出始めていたのだが、それを言うと先生は喜んで腕を つかんでみて、「ふんふん、これは8度はでてるな♪引きはじめにはコレだよ!」と葛根湯を一袋くれた。 ただし、コレは汗が出ない風邪のひきはじめ用らしい。「うーん汗もかいてるね〜。ま、いいよ、 似たようなもんだし!」そ、そうなの?汗の出てない時という但し書きは何のために・・。
その後、その厄介な風邪は近年珍しく一週間も長引いたので効いたのかどうかは謎・・
つまりはおなかの具合。腹具合が悪くなったことがないという人はまずいないことから分かるが、日常的な ものから癌や遺伝的な疾患まで無数にある。講義、各種検査や画像診断についてなど、内容的には今まで やったことのおさらいが主だったが、さらってもさらってもきりがない。それでも数ヶ月前に比べれば ささやかながら色々な知識がつながるようになってきて症例も見甲斐がある。新しく聞いた話で印象的だったのは、とあるアメリカの季節の病気。熱さましや痛み止めの薬で胃が荒れた 経験のある人も多いだろうが、アスピリンもそのひとつ。特にアルコールと併用すると胃のダメージが 大きくなる。このアスピリン、アメリカで特に昔から好まれる薬で、頭痛などをとめる他に、血を固まり にくくするので脳梗塞や一部の心臓発作の予防に常用している人が多い。というわけで、アメリカでは クリスマスに急性の胃潰瘍で担ぎこまれる人が多いらしい。昔のアメリカ映画でも、良くアスピリンって 出てくるなぁと思っていたのだが。
実践編として、バリウムを飲んでぐるぐる回る台に乗せられてレントゲンを取るという「透視」の見学。 バリウムの回し飲み試飲をしつつ白い口で先生の説明を聞く。バリウムと一緒に、胃に空気を入れると 壁の様子が良く見えるので泡の出る発泡剤を飲むのだが、これは班の一人が体験。感想としては 「コーラをいっぱい飲んだみたいな感じ・・」おなかがぽこっとなっているので皆に面白がられ、打診 (胸やお腹を指でとんとんと叩く診察法)をすると見事にぽんぽん!と響く音がするので皆に「わ〜鼓音だ 鼓音だ!」とポコポコ叩かれていた。 ※鼓音(こおん)・・ガスがたまっていることを示す音
人形を使った内視鏡(昔で言うところの胃カメラ)の操作の練習。口から食道、胃と進み、負担をかけない ように(下手にぶつかると穿孔といって穴をあけてしまうこともある)、見たいところをくまなく見られる ように先をくねくね動かす。手元のボタンで先が蛇の首のように動くのだが、それだけでは不十分で腕や 体を使って内視鏡自体をうまくよじるのがコツ。「だから踊るように動くんです」という先生は社交ダンス のような華麗なステップを披露・・。大学では内科といっても細かく専門が分かれていて、消化管内視鏡は 全然触らない人だっているわけだが、先生いわく「外病院に当直なんかに行ったら、いきなり急患の内視鏡 お願いします!とか言われるかもしれないから、機会のあるうちに良く練習しといたほうがいいよ〜! えっ専門違うのでやったことないです、初めてですって言っても、あーそうですか、ハイって渡されたり するし。」・・それはコワイ。自分の専攻は一向に決まらないが何でも良く見ておかないと。
泌尿器科というと何となく男の患者さんばっかりなイメージがあったりするが、腎臓や膀胱の病気は どちらにもあるし、高齢の女性は失禁に悩むことも多いので(男性は逆に出にくくなって困ることが多い) かなり多彩で、なおかつ癌も多いのでとても外科なところなのだった。この辺の画像は私には結構面白く て好き。ところで街中の看板で見かける「泌尿器・性病科」っていうのは大学病院にはないけど何?と いう以前からの疑問を聞いてみたところ、あれはどちらかというと皮膚科(主に股間の)由来で、いわゆる 大病院の泌尿器科とは系統が違う、らしい。人形(モモからへそまでのモデル)を使って導尿の管を入れる実習。消毒して、チューブの先にゼリーを 付けてピンセットでするすると入れる。のを班でぐるぐる回りながら練習。なぜか男性モデルのみ (数ヵ月後、女性患者さんの導尿カテーテル入れをしたとき分かりにくくてちょっと困った。男性は間違え ようがないので女性モデルのほうが必要なのでは・・)
最近良く聞く、超音波で結石を砕く機械を見せてもらう。手術なしで大きな石が取れるという優れもの だがやっぱりうまく壊れない石もあるらしい。石が砕けるぐらいだから骨だってやろうと思えば砕ける わけで、うまく標準あわせて、強さも調節しないといけない。大きな機械の下に手を入れると、パチッ パチッという音と共に、なんとも言えない、手の骨を直接輪ゴムではじかれるような変な痛みが。10段階ぐ らい(もっと多かったかも・・)の強さ目盛りがあるのだが、大体皆2、3ぐらいで挫折。1でも結構痛かった。
婦人科はこれまた非常に病気が多いのでたくさんのおさらいをしたが、実習としては同じくモデル人形を 使う内診の練習。ゼリー付けた手で机の周りをぐるぐる回りつつ代わりばんこに練習という変な景色。練習 してるほうはまだあまり意識は無いかもしれないが、下手な内診なんてされるほうはたまったもんじゃない のでまずは精巧なモデルでというのはいいことだ。
小児科は内容が多すぎてこの手の実習じゃどうしようもないと思ったのか、わずか一こま。スライドを 次から次に見てこれは何でしょう?クイズ形式。見慣れたのがいっぱいありました。症例検討では急な よくある腹痛でほっとくと困る腸重積について。ママさん雑誌でもおなじみ。
まず最初にウイルス学の先生が「感染とは何か」のおさらいをさらっとやる時間割だったのだが、時節柄 新型肺炎SARS(severe acute respiratory syndrome)の話題に終始。SARSは変異したコロナウイルスが 起こす病気だが、このウイルス、風邪などのありふれたウイルスで、薄めの教科書には載ってなかったり するような代物。ウイルスの先生も呼吸器の先生も、全く一体何が起こったのかねぇ??と困惑ムード。また、病院では院内感染、医療者の感染も注意しないといけない。手を洗う前と後の細菌を培養して効果 を見たり、血液のついた注射針をうっかり刺さないように安全にキャップをする練習など。目に見えない ものだけに、慣れた頃が危ないんだろうなぁ・・
また、清潔操作と消毒の実習で初めて着替えて手洗いをして手術室に入る。ので、皆もの珍しくてワイワイ 楽しげなのだが、この滅菌消毒されたところを絶対汚染しないように物事を進めるというのが慣れないと 厄介で、そこらじゅうで地雷を踏んではあたふたする感じだった。とは言ってもまだ患者さんがいるわけでも なく、何もかもが珍しくて絵に描いたようなおのぼりさん状態の学生集団。一番のんきに楽しい頃かも・・。
腕から採血する練習はまず模型で。ポンプで赤い液体が血管を流れている腕の模型で、まだ新しいらしい がみんなが刺すので結構あちこち漏れていた。それでもあるだけマシらしく、去年は発泡スチロールに 刺すだけだったので模型の要望が多かったとのこと。翌日本物の腕で変わりばんこに大騒ぎしながら 採血したが、まだ若く弾力があるので血管に針を入れること自体は結構簡単だった。しかし、家に帰って 子供の腕を見たら、う〜〜ん・・・(^^;)血管が細い。しかも脂肪に埋まってて見えない。子供の練習は やりようがないのでぶっつけなのに。その日までしっかり練習しておかないと。
輸血部、という部署で輸血についての講義を受けつつ、先日取った血液で血液型の検査の実習。昼間の 大きい病院なら検査技師がやるが、緊急時など出来ないと困ることもあるらしい。輸血の間違いはすぐ命に 関わるので、昼間の業務でも確認は二人の人が読み合わせしてチェックしていた。
検査データの読み方。健康診断などでも付いて来る、訳の分からん数値の集団、を読み解いてこの人は どういう問題があって、何が考えられるかを調べていく。どの科でも症例検討する時は必ずやることで、 慣れない時は得体の知れない暗号だが、読めてくるほどに、また臨床の知識が増えてくるほどに興味深い 暗号なのだった。
最後に回ったのは 整形外科と皮膚科、膠原病のおさらい。1週間にこれだけ詰め込めるわけもなく、 これといって器具の実習があるわけでもないのでX線写真やスライドを見たり授業という形式が多かった。 ものの形や色を見るのが好きな私としては結構楽しかったが。整形外科は特に病気や手術の他に「外傷」 も結構ある。解剖や手術の写真は痛そうじゃないから平気でも、ケガは痛そうなのでうわーと思う。 部外者からしたらどっちもうわーだとは思うが・・実習としてやったのはアレルギー検査2種類。まずはスクラッチテスト。皮膚にちょっと引っかき傷を付け、 アレルギゲン(アレルギーを起こす元の物質)を溶かした水をそこにたらして反応を見る。アレルギーが ある場合は赤くなったり痒くなったりする。いくつか選べるのだが、花粉は皆調べてみたいらしく人気で 既になかった。私は花粉症があるのは分かっているのでダニでやってみたら・・1分もしないうちに赤く なって痒い!!!全然知らなかったがダニアレルギーがあるらしい。
ほんのちょっぴりの一滴を、軽い引っかき傷に付けただけの量なので、普通反応はそこだけなのだが そんなわずかな量でも体に入るとまれに全身にひどい反応を起こすことがある。小さな病院でも普通に よくやる検査ではあるのだが、実は重症のアレルギーの人には危険を伴う検査なのだ。蕁麻疹ぐらいなら ともかく、喉の粘膜がはれて窒息したり、血圧が下がってショック死したりするとコトなので、「だから この実習は病棟でやるんですよ〜。すぐ蘇生出来る様にね!(^_^) そこに(人工呼吸などの)道具あるから」 (先生談)(((-_-;)。幸い蘇生される様な目にあった人はまだいないそうだが、後日クラスの子が 赤いまだらの顔をしていたので、どうしたの!?と聞いたら、この実習で全身にひどい蕁麻疹が出て、 治療しても何週間も引かないとのことで、他人事ではないのだった。
もう一つの検査は抗生剤のアレルギーを調べる皮内テスト。注射で皮膚のごく浅いところに薬剤を入れて、 腫れを調べる。ツベルクリン反応の注射も同じだが、ぷくっと蚊に刺されたように皮膚の間に薬がたまる 様に浅く刺すのがコツ。浅いから痛くないかというと、実は逆。刺すところまでは確かにあまり痛くない が皮膚の間に液体をぎゅーっと押し込むと、液が皮膚をはがしている形になるため痛いのだった。おまけに 不慣れな者同士でやってるし。
東京高等裁判所に出向いて、医療裁判の傍聴。これも最近始まった試みで、先生が言うには「まあ、こういう 場に立たされるってのがどういうものか良く見ておくのもいいでしょう。」裁判所という所自体、初めて 行ったのだが、部屋がたくさんあるぴかぴかの大きな建物のロビーに、たくさんの裁判の予定が掲示して あり、色々な人が静かに行き来していて町や病院とは別世界の雰囲気だった。実はつるの職場は裁判所のはす向かい。傍聴予定の裁判は午後だったので、そこのレストランで待ち合わせて お昼を食べたりして、ちょっとした社会科見学気分。そのあと、ちょうどお昼休みなのでつるも一緒に裁判所に きてロビーの見物などしていった。
裁判は結構こじんまりとした部屋で原告側、被告側のやり取りが地道に延々と続く。私達の班の見た裁判は、 訴え自体が薬の量を間違えたというような、あからさまな医療ミスではなく、治療の結果についてのもの。 医師側の治療や説明(や態度)に問題があったのか、患者さんが気難しい人だったのか、その場で聞く限り では判断しかねるような内容だったので、学生達の感想も、うーーん、どうなんだろうねぇ・・という 感じだった。まあ、気を引き締めて仕事をしなければいけないんだという気になったことは確かだが。
あと、偶然にも班の学生の義理のお兄さんが裁判所に勤めていてその裁判に参加していたので、みんなその お兄さんをひそかに観察していたりした。(立派にお仕事していました)
しばらく傍聴したあと、別室に移動し、裁判官の人たちのレクチャータイムがあった。若い判事(?)さん、 ホントーに若い。こんな重たい人を裁くお仕事なんて背負って大丈夫かいなというぐらいの初々しさ。若い 研修医もそう思われてんだろうなぁとあらためて思う。(もっとも私はそう思われなさそうだけど・・)
1学期最後の講義は外部の人による講義。専門家による専門講義ではなく、癌などで患者として治療を受けた 人たちによる様々な意見や感想といったお話。いつもと角度がまるで違うし、具体的で面白かったし 勉強になった。そのうちの一人はがん患者でもあり、自身も医師であり、今は患者の会のようなものの お仕事をされている人だった。講義の後、班に分かれてディスカッションし、ゲストの人たちがそれぞれ そこをめぐって参加してくれたのだが、私達のところに来たのはその元外科医の方。色々お話している うちに気がついたのだが、その先生こそ10年以上前にすごく話題になった「医者が癌にかかったとき」の作者、 竹中文良先生なのだった。私はちょうど隣に座って話していたのだが「ええ〜っ!あの先生ですか?」と びっくり。当時の私はその本は読んでいなかったが、そこらじゅうの書評で取り上げられていたのでそれは良く目に していた。がんの治療は大変だなぁなんて感想よりも、"自分が患者になって初めて、検査がこんなに つらいものだと分かった"、とか、"手術が痛いとか怖いことが分かった"、といった抜粋にむしろ「えっ? 医者ってそれを知らずにやってんの?」というほうに驚いたり呆れたりしたものだった。今は先生は患者の 精神的サポートをするという活動を熱心にやっているのだが、「現役の頃はそんなこと考えたことも なかったね〜。仕事は一生懸命やってたし、患者さんのことも考えてるつもりではあったけど、」との 事だった。今も、バリバリの現役医師に「精神的サポート」といっても全然ぴんと来ないようで、あまり 伝わらないことが多い、と苦笑していた。もちろん現場は現場でやっているのだが、病院で出来る範囲を 大きく超えたものがあると助かる人がたくさんいるのは確かだろう。患者さんの生活は退院後もずっと 続くわけだし。
講義が終わったあと、テスト前ではあったのだが、その足で本屋に行って「医者が癌にかかったとき」を 買って一気に読んだ。とても読みやすい文章で、患者になって分かったことや、若い頃や、アフリカの 援護活動でのワイルドなお話とか、いろんな患者さんの最後のケースなどが満載で面白い本だった。 講義終了後に名刺を頂いたので早速ご挨拶と本の感想をメールしたら、律儀なお返事を頂いて嬉しかった。
OSCE(オスキー)とは。Objective Structured Clinical Examination 客観的臨床能力試験のこと。つまり 診察の実技試験。内科でおなじみの聴診、打診、喉を見る、まぶたの裏を見る、ハンマーで腱反射を見ると いったああいうのや、眼科的な診察、外科手技の基本で、清潔操作(ばい菌がつかないような器具の扱い方)手袋をする、 消毒、傷を縫うと言った手順などが科目ごとに色々あり、それをテストする。道具や部屋が用意され、 準備期間が一週間与えられていたので皆適当に学校に来て練習したりしていた。試験のための勉強とはいえ、 高校の「二次方程式の解の公式」のような、卒業したら一生使わないじゃん!!といったものと違って、 即そのまま必須で、役立つものなので楽しい。わいわいやる練習もまさに専門的なお医者さんごっこだし。試験日は日曜。患者さんのいない外来を目いっぱい使い、教官、患者役のボランティアさんや、下級生達、 と百数十人ものスタッフを投入するという大掛かりな試験。大学の外来は、たくさんの医師がいっぺんに 診察をするため、待合室を囲んで小さな個室がずらっと並んでいるので、その部屋を使う。分刻みで一人 ずつそれぞれの部屋に入って、課題の紙を読み、制限時間内にその診察をする。その後、教官からのフィ ードバックをもらう。
簡単なのものもあるが、制限時間内に終わらないものもあり、気を利かせて余計なことまでやると減点されたり 器具がうまく使えなくてあわててたら時間がなくなったり、と色々ハプニングがあり、やってる最中は必死 だが後で思い返すとなかなか笑える試験だった。患者役の下級生が知ってる人だと間違えて恥ずかしかっ たり、女の子の場合、口の中に手を突っ込む双手診していいのか?と迷ったり(この科ではつい遠慮して 省いた人が結構いて、注意されることが多かった。)
救急の部屋ではベットに救命実習で使ったお姉さんの人形。病室に入ったら患者さんの呼吸と心臓が止まっ ていた、さあどうする、という課題。まず呼んで返事をするか確かめ、呼吸と脈を診て確認し、ナース コールで蘇生器具を頼み、人工呼吸と心マッサージをし、3クールごとにまた呼吸心拍の確認をし、という ことをすればいいのだが、それ以上のストーリーは与えられていない。私は先生達が止めないのでひたすら 5分蘇生してかなり疲れたのだが、人によっては、ハイ、じゃあ心拍が戻りましたと先生が止めてくれた らしい。他には、蘇生を1クールやって確認し、生き返りました。と話を作って終わらせようとしたら おこられた人もいて、「何でだよ〜理不尽だ!」とぼやいていた(^^;)。また、まず部屋に入って にこやかに御茶ノ水花子さん(という設定)にあいさつをし、返事がないので不審に思って近づいて、 はっ!!という細かい演技から入った人もいたらしい(^^;;)お見事。
この試験が終わり、めでたく1学期終了。盛大な打ち上げがあったが参加せず。後で聞くところによると 介抱された人が出るほどの盛大さだったらしい・・
近所での公演がこの日しかなかったので、OSCE試験前日という不届きな日に妹とバレエ鑑賞。アメリカの トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団日本公演。演目は白鳥の湖はじめクラシックの有名どころが ずらりなのだが、それを基本に全編コミカルに仕立ててあるコミック・バレエというようなもの。 そのコミカルさも、くすっというようなものではなく、爆笑の連続なのだが、ダンサーとしての テクニックはすばらしく、ハイレベルで魅せる。そして最大の特徴は・・・・ダンサーがみな男性。 美しい衣装にトゥーシューズ、華麗なソロに華やかな群舞。構成もテンポもよくシリアスとコミカルの バランスやユーモアのセンスも申し分なく、いやー、見てよかった〜という舞台だった。 それにしてもダンサーを見ると、人間の体ってなんて凄いんだろうとしみじみ思う。