医 学 生 日 記  

'99年度 一年生/冬休み

セミナー科目  ユニークな目玉科目
みっしょん  発生学の指令
化学実験室  リポタンパクってなんぞや
芸術補講  打ち上げ付き
成績発表  きゃー
二千年問題  異常なし!と思ったら
休み中の先生達  謎の生態

セミナー科目 
医科歯科大学は3学期制を取っていて、3学期は必修の他、2コマずつ6週間のいろんなセミナー科目が ある。これが、化学の先生が西洋古典音楽を教えていたり、ドイツ語の先生がドイツ語の歌曲を歌おう講座を 持っていたり、政治学の先生が映画史を熱く語っていたりと面白い科目がいっぱい。他に、進化論やサイコ セラピー、俳句実作やテニス、ゴルフなど。私は1・2学期で文系は堪能したので、今までやったことのない 基礎系や実験系を堪能しましょう計画で時間割を組んだ。講義のあと、泊まりがけの臨海実習でウニの卵を 観察する「発生学」と、生体内の油脂やその燃焼メカニズムなどの「油の化学」。油〜の方は医・歯・は取り にくい時間割であり、生化学のプロとなる検査の人や看護の熱心な人がぽつぽつ取るという科目だが、 無理矢理調整して取った。そしたら今年は看護と検査から来なくて、何と私一人!わぁ贅沢。

みっしょん 

やれ冬休みと思った初日からあっちこっちから連絡が入る。その一つは3学期に取っている発生生物学の 基礎の下準備をしといてね、という連絡。その連絡プリントの抜粋。「Mission impossible File 1 (中略) 危険な任務を遂行しようと決意した諸君に敬意を表する。(中略)まず第一の任務・・・付属図書館に 忍び込み・・・(以下略)この司令書は自動的に消滅しない。」 

早速翌日お茶の水に忍び込み、全く初めて見る、ずらりと並んだなにがなんだか見当の付かない英語の専門書 を眺めて何となく面白そうだと思ったニワトリの胚の発生の論文をコピーした。教養学部の図書館はビックリ! するぐらいささやかだが、お茶の水の図書館はビックリ!するほど広くて、山ほど専門書があって、しかも 迷路のようで上のフロアに上がる階段が忍者屋敷のような所にあったりと愉快な構造だった。

化学実験室

もう一つの電話は化学の「油の化学」の先生から。(一学期の実験を習ったとても陽気な女の先生) 先生の実験の手伝いしつつ勉強してもらおうとのことで、時間ある日は来て!行きます行きます!と言う ことで、保育園のある限り、殆ど通った。

そこではリポタンパクという物を研究していて、そんなものを全く知らない私は切り張りやデータ整理を やりながら適当に勉強し、隙間を縫って質問したりで、ようやく血液に流れるコレステロールが,程良い粒 になって狙いの所に届くようリポタンパクという複合物で包まれているんだということが分かってきた。 検出機械やパソコンによるデータの処理などどれも大変もの珍しい。特にソフト!ウインドウズなんてもの がない時代にパソコンを覚え、SE時代はアセンブラなんてものをやっていた私は、何を見ても、あ〜 世の中は何て進歩したの!としみじみしてしまうのだった。

実験室にいるのは検査の院生のお兄さんと、週2で通っている、栄養士として病院で働いたあと、研究に 来ている人妻おねえさん。いずれも超プロなので、話が難しくなると側で聞いている私は全く意味不明 なのだが、いろんな所でいろんなプロがいるんだなぁとひたすら感心。

また、大学の研究室には色々な所から協力の要請や問い合わせがある。NHKの「ためしてがってん!」の人が 中性脂肪の下調べの取材に来て色々とやり取りをしたり、花王の人が「エコナ」の油についての調査の協力や PRで来たり。その度に先生が「面白いから一緒においで」と呼んでくれるので(分からないながらも) 同席してふむふむと聞いていると、科学番組ってこんな風に作るんだぁ、とか、油脂メーカーはこんな風に 研究しているんだなぁ。営業の人もすっごい詳しいわ〜とか(大学で化学を専攻した人だった)、刺激が いっぱいなのだった。

芸術補講

音楽評論家田家秀樹氏の大変面白い講義がついに終わってしまってとても残念。2学期は日本のポップスの 変遷を映像をたっぷり使って(先生はビデオの準備に一日かかるらしい。これは還元で採算度外視と言っていた) その背景などの鋭い考察を交えて綴っていて、特にもう私のような年代にはより一層たまりませんね。という 面白さだった。気をつけていると、週刊誌や新聞でよく氏を見かけたが、その度に、あっ授業でやったのと同じ! 等とチェックするのも楽しかった。特に数ヶ月前に発売された「読むJ-pop」はとても評判が高くて、色々な 書評欄で様々な書評がされていたのでそれを読み比べるのがまた面白かった。

12月にあった最後の補講のあと、市川駅前の居酒屋で一般教養にしては珍しい打ち上げがあり、参加した。 30人以上もの生徒が来て先生もビックリしていた。私はしっかり隣に陣取って、聞きたいなーと温存していた 様々なネタを残らず繰り出して話し込み、大変有意義な打ち上げだった。

成績発表

一部の科目を除いて、各科目の合格者の番号がずらーっと張り出された。各実習、一般教養、語学、よしよし・・ と思ったら、物理、化学が落ちてる!きゃ〜〜〜!マジ?ちなみにこの学校は(教養は)再試という物はない。 病気やケガで受けられなかった人の追試のみ。つまり一回の試験で落ちると即、再履習。あー2年は少し時間が 出来ると思ったのに。でもこの2科目は試験前になんとか見えてくるという感じで面白い所まで行かなかったから、 今度こそじっくりやるかぁ・・・(ちなみに物理は5割ほど、化学は2割ほど落ちてる)

と、しおしお引き上げて来て気が付いた。まずい。下手すると2年のフランス語が一こま足りなくなるかも。 3学期は語学を取らずに実験系を堪能する計画を立てたのに〜。そこでいつものように化学教官実験室に 「出勤」し、3学期にフランス語取っておきたいので、この授業、単位いらないから(自由選択科目の単位は すでに余ってる)、空き時間に来ていいですか?とお願いすると、「生徒一人なんだからこっちを移して あげるわよ〜どうせ不定期に来てるんだし」と教務に交渉してくれた。(教務の返答:個別交渉で好きにして 下さい)・・・少人数の学校のフットワークを見た。

二千年問題
知り合いにコンピューター関係のお仕事の人が多いので、年末は泊まり込み、自宅待機、といった話をよく 聞いた。かく言う私も昔システムエンジニアをしていて、西暦下二桁のカレンダー機能使いまくりの プログラムを、わりと原始的なアセンブラ言語という一つ間違えるとシステムの根っこを深刻に壊しかねない ものでいっぱい作っておりました。しかも大量の客に関わる航空機関係のシステム・・。

年末の警戒態勢の各社を映し出すニュースを見る度に、あ〜ここは誰がいるなぁ。ここは誰さんだ、私が作った のってまだ使ってんのかなぁと色々な事物が頭をよぎった。

でも日付変更線ごとに、どこどこ通過!何事もありません おめでとう!○○の原発異常なし!良かったねー と世界中が一つのことに向かって力を合わせている年明けというのもなかなか、すごい新時代の年明けだと いう感慨も持った。

ともあれ、何もなくて良かった。良かった。(でもあっちこっちで細かいトラブルを生じさせていたのが、 他ならぬ原発関係と言うところが、おいおい とは思いましたが。) ・・等と思っていたら!!うちのパソコンのカレンダーが1980年1月4日になってる〜!20年前に インターネットはありませんってば。灯台もと暗し。みごと2000年問題にやられた元旦だった。

休み中の先生達

夏休みや冬休み中の先生というと、小学校や中学校のイメージで、先生もお休みで、時々出てきてるという イメージを持つ人も少なくない。が、実験系・大学の先生(と院生)達は、うれしそーに自分の研究を やっている。

私が化学教官実験室にいた時、生物の先生が、秤(はかり)貸して〜とやって来た。白衣の襟を立てて 首にぴったり巻き付け、さらにガムテープで留めてある。「先生・・・その格好は??」「あ、これ? 今、血が飛ぶ実験してるもんだから・・」その朝、廊下の窓の外で、かごに入った沢山の姫ウズラが、 ピヨピヨと気持ちよさそうに日なたぼっこをしているのを見かけたのを思い出した(-_-;)。


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