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Space Saver II Keyboard で遊ぼう!

第3回

キー配列を換えろ!

キーボード好きの皆さん(?)こんにちは。

さて、前回に引き続き、適正化のお話、キー配列の変更です。

まず、なにはともあれ、メンブレンシートへのパッチの当て方が判らなければ話になりません。ご存じのようにメンブレン基板は薄いプラスティックのシートに導電性のインクを印刷したものです。プリント基板のように導線を半田付けして配線を変更することはできません。また、SSK II の場合、3枚のフィルムを積層してあるのですが、その構造故(詳しい構造は鍵人等をご覧下さい)導線のように厚みのあるものも使えません。ということで、パッと考えつくところでは、メンブレンに印刷してあるパターンをカッターでけずってパターンカットし、新たな配線を導電性のインクで書いてやればよさそうです。でも、導電性のインクの入手方法や、パターンを跨ぐ時の処理の仕方等、よくわからないことがいくつもあります。導電性のインクの代りに、車のウィンドウの熱線補修剤が使えるという話は聞いたことがあるんですが....。

そこで、例によって Google ってみたところ、
といったことがわかりました。参考にした ページはこんな感じ
http://www.asahi-net.or.jp/~WR7S-NKMR/HardWare/keyboard/index.htm
http://www02.so-net.ne.jp/~yunk/pc/mykb.html
http://member.nifty.ne.jp/mstart/dream/oyaB03.html
またしても、START さんの夢中レポートに詳細な記事があるとは!

ということで、一番入手が楽そうな、熱線補修剤を買いに、近所のオートバックスに出掛けました。ところが、いくら探しても見付かりません。観念して売場のお兄ちゃんを捕まえて聞いてみると、
「もう販売してません。以前はあつかってたんですけどねぇ。」
ガ〜ン!!!
そ、そんなぁ....
他のカー用品店でも聞いてみましたが、やはりないよう。SOFT99 のページも調べてみたんですが、検索にひっかかりません。どうも商品ラインナップから完全に落ちてしまったようです。
しょうがない、東急ハンズで他に使えそうなものを探すかぁ。
ということで、仕事帰りに東急ハンズに寄ってみました。まずは、念のため、というか、諦めきれず、カー用品売場に行ってみましたが、まぁ、あるわけありません。すごすごと電子工具売場へ向いました。しかし、ハンダはあるけど、導電性インクやらテープやらは見あたりません。おかしいなぁ。
さらに他の売場も探してみると、接着剤、粘着テープ売場に 3M の Scotch 導電性テープ 2245 (12mmx1.5m)というのが660円でありました。とりあえずゲット。
夢中レポートでは、ハンズでドータイトを取り扱ってるということだったので、塗料売場で店員さんを捕まえて聞いてみたところ、「扱ってない」とのこと。専門のバイヤーさんに聞けば答は違ってたかもしれないけれど、気分も萎えたので、その日はすごすごと帰宅しました。

帰宅して買ってきた導電性テープをちょっと調べてみました。粘着剤自体には導電性はなさそう、そのかわりエンボス加工がしてあります。この凸凹の凸の部分で一応粘着面でも導通するみたいです。が、少々不安です。それに自由な曲線で配線できないし、作業性はあまり高くなさそうです。こりゃやっぱり秋葉行って導電性インクを探したほうがよさそうです。

週末、観念して秋葉へ。とりあえずこういうものなら、ということで千石電通へ向いました。しばらく探してみたら、ありました。
Chemtronics CircuitWorks Conductive Pen Standard Tip CW2200STP.
2750円もするけれど、もう他に手もなさそうなので諦めて買いました。しかし、4000円のキーボード改造するのに幾ら使ってんだ、オレ!

パッチ当て開始!

さて、材料もそろったし、パッチ当て開始です。まず、パターンを眺めて、どうパッチを当てればいいか決めます。で、どうも複雑になりそうなので、Ctrl と CapLock を入れ換えるのは止めて、CapsLock を Ctrl 化するだけにしました。導電性テープにやや厚みがあるため、必要以上にパターンが複雑化すると、厚くなって、打鍵感の悪化や打鍵時の接触不良を引き起すかもしれません。ここは安全策です。

パターンカットが必要なところは、カッターの先で軽く擦って、パターンを削り取りました。これは簡単。次にジャンパを飛ばすわけですが、基本的には、
ってな方針でやりました。折角 Conductive Pen やら導電性テープを買ったので、なんとかなるところは、こいつらでなんとかしてみよう、ということです(結局大変だったんですけどね)。3枚のシートはずれないように圧着されているので、上のシートにジャンパ飛ばすのは、なかなか面倒でした。シートをめくって浮かせたところを裏からペンで新たなパターンを書くことになります。パターンを跨ぐところは、導電性テープの剥離紙を剥さずに張ってみました。
パッチ後の画像
なんか汚いパターンだなぁ、と思うかもしれませんが、上のシートにパターンを書くのは、結構面倒だったんです。

一通りできたので、テスターで導通を確かめてから、バラしたままPCに継いでみました。一応動いているようです。気を良くして匡体を組み直して使ってみました。 ところが、時々、変な文字が入力されます。どうも、匡体が密着したせいで、導電性テープの剥離紙から微妙にハミ出た部分がパターンと導通することがあるようです。しかたがないので、剥離紙で絶縁という安易なやりかたを止め、メンディングテープで絶縁してみました。

再び匡体を組み上げテスト。今度は OK のようです。

さらなる適正化の世界へ

さて、とりあえず上手く行ったんで、調子にのってさらに改造してみることにしました。Conductive Pen も導電性テープもたっぷり残ってますし。

Lisp Machine

突然、かつマイナーネタですが、皆さん LMI 社の Lisp Machine の キーボードというのをご存じでしょうか?Lisp Machine というのは、80年代、MIT 系の企業である LMI 社で開発された Lisp  専用機のことです。なんでも R. M. Stallman による Emacs の Unix の前の実装というのも、この Lisp Machine で行われたそうです。(このあたりの事情はbit 誌 96年6月号の Emacs 解剖学第二回に詳しいです。)で、このキーボードの配置がちょっと変っていて、101キーボードの CapsLock の位置(A の隣り)に、現在の Backspace (又は Delete) に相当する  Rubout が、Space Bar の両脇に、Control, Meta, Super, Hyper という、強そうな、しかし何につかうのか、いまいち判らないキーが並んでいたそうです。(Lisp Machine の正確なキー配列は上記 Emacs 解剖学第二回に掲載されたようです。私も買って読んだはずなんですが、捨てちゃったので、さすがに配列の詳細までは覚えてません。共通点が多いらしい Symbolics のキー配列は PFU の Happy Hacking Keyboard 関連のページで見ることができます。)ということは、US 配列派の Emacs 使いとしては、無変換キーを Ctrl に割り当てると、その左隣りが Meta の代りに使われる Alt なんで、Lisp Machine 上の Emacs の気分が味わえそうです。まず、これをやってみることにしました。(さすがに CapsLock を Backspace にするのは、かなり混乱しそうです。CapsLock を改造したバッカリですし、これはやりませんでした。)

Erase-Eaze

それから、皆さん NMB 製キーボードの一部に塔載されていた Erase-Eaze という機能をご存じでしょうか?(これはご存じの方が多いと思いますが。聞いたことがない方は、みみラボ!ヘ。)これは、Space Bar が2分割されていて、(default では)左が Backspace 右が普通の Space になっている、というものです。上で話題にした Lisp Machine と同様、Backspace は良く使う(打ち損じは多い ^^;)ということを強く考慮したキー配列ですね。
さすがに混乱しそうなので、CapsLock (A の隣り) -> Rubout はやめたわけですが、変換キー -> Backspace 化なら、けっこう無理なく使えそうです(Eraze-Eaze の default とは違いますが)。これもやってみることにしました。

で、まぁ、やってみた結果がこんな感じです。



偽 Eraze-Eaze 化のために結構長いジャンパも飛んでます。この点は、被覆導線も組み合わせてジャンパ飛ばしたほうが簡単だったようです。(実際、匡体と干渉してしまい、安定動作するまで何度か匡体を組んではバラし、調整を繰り返すハメに....)

実際に使ってみると....

さて、実際に試用してみての印象ですが、変換->Backspace は思いの他使いやすいです。私はキーボード好きのくせに、タイピングが苦手で、よく打ち間違いをするんで(^^;)非常に重宝します。やはり、親指を Space だけに使うのは勿体無い!無変換->Ctrl も、まぁ使いやすいですね。ただ、A の隣り Ctrl に体が慣れきってるので、よっぽど意識してないと親指がなかなか伸びませんが(^^;)。

しかし、少なくとも、GNU Emacs がなぜ、あのようなキーバインドになっているのか、その理由が体得できた感じです。高頻度で使われるカーソル移動系や、置換系のコマンンドには Control を Modifier として割り当て、それをさらに意味的に "Meta" にしたコマンドには Meta を Modefier とする(例えば、C-f一文字 forward に対して M-f一単語 forward)というのは、このキーボード配置を考えると非常に素直で直感的なインタフェースですね。また、Emacs を使っていると(Ctrl を多用する所為で)左の小指がつる、なんという意見もありますが、少くとも R. M. Stallman による UNIX 前の実装では、そんな問題はあり得なかったわけですね。それから、今回の改造とは関係ないですけど、Emacs の default 設定では C-h が UNIX 系のソフトでは一般的な Backspace ではなく、Help に割り当てられているのも納得しました。Aの隣りが Rubout なら、わざわざ指2本も使って C-h なんか押す必要もないですもんね。

そしてもう一つ、「無変換」、「変換」キーの意味についても考え直させられました。私は、101キーを使うことも多いので、今後も日本語入力に「無変換」、「変換」キーを使うことはないとは思いますが、日本語入力に、この2つのキーを有効に使うことができれば、その押し易さ故、かなり効率が上がるだろうということに今更気が付きました。「無変換」、「変換」キーなんかいらねーぜ、とはなからバカにしていた自分の見識のなさを恥入るばかりです。

ま、なんだかんだで、今回の適正化は多大な効果を上げることができました。金をつぎ込んだだけのことはあるぜ!

では、今回はこのへんで。

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