2004.02.29

誤字等No.037

【ウェヴ】(外誤科)

Google検索結果 2004/02/29 ウェヴ:1,780件

英語における「v」の発音をカタカナであらわすために「」という表記を考案したのは、福沢諭吉といわれています。
これが一部の人にとっては「お気に入り」の表記となったようで、「ヴァイオリン」「ヴィーナス」「ヴェール」などが外来語として一般的に使われるようになりました。
今では「ヴォイス」「ヴァージョン」「ヴァーチャル」など、その用途は拡大の一途を辿っています。

しかし、本来の日本語に「v」の音はありません。
そのため、表記上どんなに工夫しようとも、結局「」と「」の発音を区別できない人は多いのです。
もし、「b」音と「v」音の区別ができない人が、「」という表記を覚えたら。
調子に乗って、すべての「」行を「ヴァ」行に変えたくなるのかもしれません。
その結果、クラシック音楽の巨匠「Beethoven」を「ヴェートーヴェン」と書き、球技「volleyball」を「ヴァレーヴォール」と記す人が現れました。

そして、必然的とでも言いましょうか。
WEBページ」を「ウェヴページ」と表記する人たちが出現します。
外来語として定着しつつある「ウェブ(ウエブ、ウエッブ)」を使わずに「」を使うあたり、一見すると「原語の発音」にこだわりを持っているかのような錯覚に陥ります。
が、事実は正反対と言わざるを得ません。
このような人は、「インストゥール」を使う人と同じく、「本来の発音」には「全く関心がない」ことを宣言しているようなものです。
おそらく、「自分の感覚」「フィーリング」だけで、「」の方が「それっぽい」と判断しているのではないでしょうか。
私としては、特に「ウェッヴ」なんて、「変」としか思えないんですけど。発音もしづらそうだし。

検索結果をながめていると、時折「WEB」と「ウェヴ」を並べて書いている人がいます。
B」であることを分かっていながら「」を使っているということは、「」が「v」音をあらわすという原則を捨てたことを示します。
このような人にとっては、福沢諭吉の苦心も無用の長物。
それはまさに上述のような、すべての「」行を「ヴァ」行に変える行為であり、単に「」行音を示す「もうひとつの表記」として「」を使っているに過ぎません。
それが個人のスタイルであれば、もはや止めるだけ無駄。
どうぞ、「ヴァス」に乗って「ヴィール」でも飲みながら「ヴェーグル」でも食べてください。

その逆に、「」が「v」音を示すことを分かっている人が「ウェヴ」を使うこともあります。
おそらく、耳で聞いた「ウエブ」という音から、勝手に「WEV」というつづりを創作してしまったのでしょう。
実際に、「wev」と表記しているページも、たくさん見つけることができました。
このような人は「wev」の意味を調べようとして英和辞典を開くことはないかもしれませんが、もし調べることになったとしても、「載ってない!」と、辞書に向かって怒るようなことはしてほしくないものです。

こういった「外来語」の表記を工夫したつもりの自爆行為は、個人的なページであれば「ほほえましい」類の誤字等となります。
しかし、真面目な文章や「カッコつけた」文章の中に登場すると、すさまじく「みっともない」ものになってしまいます。
誤変換などと違って「手が滑った」という「いいわけ」はききません。
それだけの覚悟が、あなたにありますか…?

[実例]

日本人とは、かくも「外国語の発音」に弱いのでしょうか。
このような「外国語の発音」が原因と思われる誤字等の品種を、「外誤科(がいごか)」と命名しました。

[亜種]

ウエヴ:134件
ウエッヴ:11件
ウェッヴ:53件
ヴェートーヴェン:476件
ヴァレーヴォール:8件
ヴェースヴォール:3件
ヴァスケットヴォール:3件
アルヴァイト:50件
ストロヴェリー:71件
ヴァイリンガル:57件
ヴォンジュール:24件
wev:2,610件

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