2004.03.02

誤字等No.038

【そのとうり】(平誤科)

Google検索結果 2004/03/02 そのとうり:6,030件

誤字の中でも「定番」の地位を確保しているのではないかと思われる、「とうり」の登場です。
通り」は「とおり」と読む、なんてことは小学校で習うはずなんですけど、それを知らない大人たちが今の日本にはたくさんいるのです。

「〜の言うとうり」といった形でも、頻出します。
これは「基ずく」と同様、単なる「ミス」ではありません。
確実に、書いた人の「知識不足」「教養不足」を証明する言葉です。
このあたりは、平誤科の大きな特徴と考えられます。

単なる「雑文」であれば、どんな言葉遣いをしようが本人の自由。
しかし、「表記」は日本語における「ルール」のひとつです。
誰かに何かを伝えたいのであれば。
言葉をコミュニケーションの手段として使いたいのであれば。
「ルール」を無視する行為は誉められたものではありません。

そのとうり」という誤字がひとつあるだけで、文章全体は「拙い」印象となります。
どれだけ美辞麗句を並べようが、難解な理論を展開しようが、すべて帳消しです。
もし真面目な文章の中に、素で間違っているとしか思えない「とうり」が出現したら。
その著者は「致命的なまでに注意力が欠如している」か、「ルールを守る気などさらさらない」かのどちらかを表明しています。
たかが誤字くらいで大げさな、とも思われるかもしれませんが、そう単純な話でもありません。
とうり」を使う人は、言葉を「耳から」覚えているのでしょう。
「音」としての言葉と「文字」としての言葉を正しく関連付けることができない、つまり基本的な「言語能力」に欠陥があると言ったら、言い過ぎでしょうか。

日本語で「オの段」を伸ばすときは、「ウ」で受けることもあれば「オ」で受けることもあります。
通り」は、後者です。「おおきい(大きい)」「こおり(氷)」「とおい(遠い)」などもそうですね。
これは「歴史的仮名遣い」での「表記の違い」によるもののようです。
通り」を歴史的仮名遣いで表記すると「とほり」になります。「たうり」ではありません。
つまり、歴史的仮名遣いのつもりで「そのたうり」と書いている人たちは、大恥をかいていることになります。

もともとは、「とほり」と「たうり」には明確な発音の違いがあったのでしょう。
それが現代では、「通り」も「党利」も、同じように「とーり」と発音することが可能となりました。
しかし厳密な発音は、全く同じとは思えません。
このあたりの言語的感覚が身に付いていない人は、ひとつひとつ覚えていかないと「」と「」の区別が付けられないのでしょう。

ところで、「そのとーり」という表記も時折見かけます。
ここまでくれば「わざとやっている」ことは明白ですので、誤字とは言えませんね。
文字としての言葉のルールを無視するのであれば、このくらい思い切ってほしいものです。

いまひとつ分からないのは、「そのとぅり」と表記している人たちがいることです。
そのほとんどが「話し言葉」で書かれているので深い考えはないのでしょうが、いったいどのように発音しているのでしょう?
「そ・の・と・う・り」の5拍なのか、「そ・の・とぅ・り」の4拍なのか。
それとも「インストゥール」のように、「そのとぅーり」と読んでいるのか。
なんとも奇妙な言葉です。

[実例]

日本人とは、かくも「平仮名の間違い」に弱いのでしょうか。
このような「平仮名の間違い」が原因と思われる誤字等の品種を、「平誤科(ひらごか)」と命名しました。

[亜種]

このとうり:693件
あのとうり:52件
言うとうり:3,630件
いうとうり:657件
そのたうり:699件
そのとぅり:39件
おおどうり:27件
おうどうり:20件
大どうり:31件
裏どうり:28件

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