2004.03.24

誤字等No.049

【デヴュー】(外誤科)

Google検索結果 2004/03/24 デヴュー:9,880件

意外でした。
デヴュー」の検索結果が、これほど多いとは。
「初登場」を意味する「デビュー」は、フランス語の「début」に由来する外来語ですから、「v」音を示す「」を使う必要は全然ないんです。
ウェヴ」と同じように、「バ行」を機械的に「」を使った表記に変えてしまう、困った症状です。
書いた本人は格好つけてるつもりかもしれませんが、その姿は滑稽そのもの。
はっきり言って、これほど「みっともない」誤字はそう滅多にありません。
これぞ、外誤科の真骨頂といった誤字等です。

しかし、この誤字を書いている人たちは、いったいどのように発音しているのでしょう?
普通に、「デビュー」と読んでいるのか、それとも忠実に「v」の音を再現しているのか。
後者だとしたら、日本人にはかなり言いづらいのではないかと思います。
文字で書いてあるだけでも、「デヴュー」は「読みづらい」ですから。

語源がフランス語であることがどれだけ知られているかは分かりませんが、「デビュー」は既に「外来語」としての地位を確立している言葉です。
その表記を、わざわざ読みにくい「ヴュ」なんてものに変える人たちは、何を考えているのでしょうか?
正直言って、私にはさっぱり分かりません。
本気で、一度訊ねてみたいものです。
それが「本当の発音」に近いと思っているのか、単に気取っているだけなのか、あるいは何も考えていないのか。

英語の「view」に影響を受けている、という可能性もあります。
この言葉なら、「ヴュー」と表記しても特に変ではありません。

そしてもうひとつ、仮説を思いつきました。
デビュー」と同様、フランス語に由来する「デジャ・ブデジャ・ビュ)」の存在です。
初めてのはずなのに以前どこかで見たことがあることがあるように感じられる錯覚のことで、「既視感」と訳されています。
フランス語での綴りは「déjà vu」です。
そのため、これを「デジャ・ヴ」あるいは「デジャ・ヴュ」と表記するのは理解できます。
外来語としての表記もまだ固まっていませんので、「」の表記が勢力を拡大する余地も十分にあります。
そして、「デジャ・ビュ」が「デジャ・ヴュ」になる変化と、「デビュー」が「デヴュー」になる変化は、よく似ています。
語源なんて気にしない人たちにとっては、この両者の変化は区別できないのでしょう。
一度でも「デジャ・ヴュ」という表記を見て、それを受け入れてしまえば、似たような表記の言葉である「デビュー」も「デヴュー」に変えたくなってしまう。
…といった理由で「デヴュー」を使っている人がいるかどうかは分かりませんが、いても不思議ではないです。

繰り返して言いますが、「デヴュー」は思いっきり「滑稽」な言葉です。
言葉を大切にせず、フィーリングだけで話す人間であることを証明する言葉です。
発音をひねった「デヴィウ」や「デヴィユー」なども同類です。
子供のうちは、それでもいいでしょう。「若気の至り」で済む話です。
しかしそんなことができるのも、せいぜい十代まで。
成人となる頃には、そのような幼い言語感覚から卒業していることを推奨します。
でないと、いずれとんでもない恥をかくことになりますよ…

[実例]

日本人とは、かくも「外国語の発音」に弱いのでしょうか。
このような「外国語の発音」が原因と思われる誤字等の品種を、「外誤科(がいごか)」と命名しました。

[亜種]

デヴュウ:218件
デヴュゥ:11件
ディヴュー:2件
デヴゥー:15件
デヴィウ:14件
デヴィウー:1件
デヴィゥ:3件
デヴィゥー:2件
デヴィユー:32件
デヴィュー:17件
デヴィユウ:1件
devut:32件

前 目次 次