2004.06.03

誤字等No.079

【話しをする】(平誤科)

Google検索結果 2004/06/03 話しをする:33,800件

寝むい」の回にも少しだけ触れましたが、日本人の多くは「送り仮名」を苦手としています。
その結果、「送り仮名」を間違えた誤字等が大量に出現することになります。

内閣の告示したルールが分かりづらいことも、その一因でしょう。
それ以上に、「漢字なんて読めればそれでいい」という「日本語に対する関心の低さ」も大きく影響していることが考えられます。
そういった「送り仮名」の誤字も、平誤科に分類することにしました。
平誤科本来の主旨とは若干ずれますが、送り仮名もまた平仮名ですから…

まずは、送り仮名の間違いの中でも「代表格」とも言える「話し」を取り上げます。

純粋な「名詞」としての「はなし」は、「」です。送り仮名は付きません。
話し」は、「動詞」である「話す」の活用形、およびその意味が強く残っている場合に使われます。
この両者には、はっきりとした「意味の違い」があるわけです。
それを区別できない人が、「話しをする」といった誤字を平然と記述することになります。
」と「話し」を的確に使い分けられるかどうかは、日本語に対する「言語的センス」を持ち合わせているかどうかを示す指標の一つになる、と私は考えています。

話が面白い」は、話の内容が面白いことを表します。
その「」は人がしゃべっていても構いませんし、文字で書かれた物語であっても、あるいは映画のストーリーであっても構いません。
話す」という行為とは直接関係していないわけです。
一方、「話しが面白い」という表記は、「話し方」「話す様子」が面白いと解釈することができます。
この場合は動詞の意味を色濃く残した名詞として「話し」が使われているため、「話す」という行為が行なわれている場面に限定されます。

ただし、残念ながら上記の「話し」の解釈が一般的に通用するとは思えません。
名詞としての「」と「話し」を区別できる人にしか、意味が伝わらないからです。
通常は、分かりやすく「話し方が面白い」などと表記した方が良さそうです。
ニュアンスは変わってしまいますが、仕方ありません。

話し」を間違って使っている人の多くは、かな漢字変換の結果をそのまま使っているだけでしょう。
単に、深く考えていないだけとも言えます。
動詞の活用形として「話し」が実在する以上、かな漢字変換プログラムは「はなし」を「」とも「話し」とも変換します。
変換結果として表示される複数の候補から最終的な選択をするのは、文章を書いている人の責務です。
その努力を怠り、最初に表示された変換結果を単純に受け入れるだけの人がいかに多いことか。
話しをする」の検索結果が、それを実証しています。

「そんなのどっちでもいい」という価値観があることを否定はしません。
面倒な理屈など、いちいち覚えていられない、という考え方もありでしょう。
でも、そのせいで「日本語の奥深さ」を味わうことができないのは、もったいないと私は思います。

[実例]

日本人とは、かくも「平仮名の間違い」に弱いのでしょうか。
このような「平仮名の間違い」が原因と思われる誤字等の品種を、「平誤科(ひらごか)」と命名しました。

[亜種]

お話し:343,000件
世間話し:3,340件
昔話し:2,560件
裏話し:1,580件
笑い話し:831件
作り話し:607件
儲け話し:442件

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