2004.07.04

誤字等No.091

【こんちには】(替誤科)

Google検索結果 2004/07/04 こんちには:2,870件

こんばんわ」に続き、挨拶誤字等の第二弾です。
「てにをは」は合っているのに、なぜか文字の順序が入れ替わってしまいました。

このあたりになると、意図的にボケてみせているのか、素で打ち間違えたのかが微妙なところです。
数千件の検索結果をすべて調べるわけにもいきませんが、ざっと見渡した限りでは「素で間違っている率」は、かなり高そうです。
こんなところでボケてみせても、あまり面白くありませんし。

それにしても、まさか普通の挨拶として「こんちには」を使っているのでしょうか。
さすがに、そんな人は滅多にいないと思いたいですね。
ほとんどは、ただの「打ち間違い」と考える方が自然です。

こんにちは」の文字の順序を入れ替える組み合わせは、いくつもあります。
単なる「打ち間違い」によるミスであれば、それらのパターンの出現頻度は、同程度であると予想されます。
こんちには」も「こにんちは」も同じくらいの確率で登場しているはずです。
しかし、実際には「こんちには」の2,867件に対して「こにんちは」が85件、と圧倒的な大差がついてしまいました。
他の組み合わせも同様で、「こんちには」だけが突出しています。
何故でしょうか?

まず思いつく理由は、この組み合わせが最も「気づかれにくい」ことです。
」と「」が同じ「イ段」の文字であることから、読んでみてもあまり違和感がなく、自然と看過してしまうのかもしれません。

同様に、同じ「イ段」であるためにローマ字入力で「niti」と打つつもりが「tini」と打ち間違えることもありそうです。

さらにもうひとつ、「こんにちは」を口語化した省略形として広く使われている「こんちは」の影響も考えられます。
親しい仲間内での挨拶であれば、「こんちは」や「ちは」といった挨拶も珍しくありません。
(この場合は、「」を使わずに「ちわ」と表記する人も多いですが)

この「こんちは」と「こんにちは」が混ざってしまった結果として、「こんちには」と誤記してしまうというシナリオも、「あり得る」のではないでしょうか。
だとすると「こんちはに」の件数がもう少し多くてもよさそうなものですが、さすがにこれは気付く人が多いのでしょう。

こんちには」に関しては、もうひとつ面白い現象があります。
それは、平誤科の特徴も兼ね備えた「こんちにわ」という亜種の存在です。
この誤字もまた、千件を超える結果となりました。

以前、匿名希望の読者様より、「ディスクトップ」と「そのとうり」の相関に関する考察が送られてきたことがあります。
一方を間違えている人は、もう一方も間違えている率が高い、という検索結果から、「いい加減なひとはすべての面においていい加減なのではないか」と思わせるものとなっていました。

こんちにわ」の件数が多いという事実からも、「」と「」の違いを識別できない人は、文字の入れ替えにも気づかない確率が高いという仮説を導き出せそうです。
それはあるいは、文章の読み書きに「注意力」を発揮しているかどうかの差かもしれません。
自分が使う言葉を大切にしない人は、他人の言葉も正確に理解しようとせず、結果として思い違いや誤認識が増えることになるのではないでしょうか。

挨拶の言葉というものは、重要な役割を持っています。
初対面の自己紹介で、いきなり「はじめまして。こんちには。」などと言ってしまったら。
その時点で、不名誉な第一印象が決定付けられてしまうことにもなりかねません。
まして、「こんちにわ」などと表記してしまったら、「ふざけたヤツ」というキャラクターが確定してしまう可能性すらあります。
それはそれで、フランクでフレンドリーな集団であれば人気者になれるチャンスかもしれません。
しかし、もしもそれが「真面目な場」であったとしたなら。
失った名誉を取り戻すのは、並大抵のことではありません。

[実例]

日本人とは、かくも「入れ替え」に弱いのでしょうか。
このような「入れ替え」が原因と思われる誤字等の品種を、「替誤科(かえごか)」と命名しました。

[亜種]

こんちはに:9件
こんにはち:25件
こんはにち:7件
こにんちは:85件
こにちんは:31件
こんちにわ:1,150件
こんちわに:24件
こんにわち:12件
こんわにち:33件
こんわちに:2件
こにんちわ:31件
こにちんわ:3件

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