2004.03.20

誤字等No.047

【言棄】(似字科)

Google検索結果 2004/03/20 言棄:317件

この「誤字等の館」は、「言葉」に関する話題を扱うサイトです。
これまで、「目本語」や「文宇」といった、日本語の根幹に関わる誤字等をご紹介してきました。
こんなサイトですから、「言葉」そのものについての誤字を取り上げるのも、また一興。
というわけで今回の表題、「言棄」の登場です。

」と「」、確かに似ていなくもありません。
でもこんな誤字を見逃すのは、迂闊すぎます。
仮にも「言葉」を話題としているならば、使う言葉については慎重になるべきでしょう。
言棄」では、大切な言葉を棄てていることになってしまいます。
まるで、立ち去りぎわの捨て台詞です。
言葉について述べる資格があるかどうか、考え直した方が良いかもしれません。

このような誤字は、手書きやかな漢字変換では出現しようがありません。
おそらく、OCRに読み取らせた「原文」には正しく書かれていたのでしょう。
そう考えると、文章を書いた執筆者本人に咎はないのかもしれません。
紙に書かれた文章を読み取り、WEB化した作業者のミスかもしれません。
それでも、与り知らない引用の類でなければ、文責は執筆者本人にあるはずです。
せめて公開の前に文章をチェックする機会を設けることができていれば、こんなことにはならなかったでしょう。
OCRを過信しない用心深さは、言葉を扱う人にとって、もはや「必須」のスキルとも言えます。

そのスキルがないと、どのようなことになるのか。
いい見本が、今回「実例」で紹介した三件です。
短い文章であるにもかかわらず「言棄」以外の誤字も入っています。
言葉」を話題にしながら、この有様。
どれだけ素晴らしいことを論じていようと、これでは「空虚」なものにしかなりません。

ところで、他にも「」と似た形の文字は存在します。
いくつか検索した結果を、「亜種」の項に後述します。
その中でひとつ、「言薬」という誤字が目を引きました。
間違いなく「言葉」の誤字なのですが、なかなか趣があります。
言葉は、その使い方次第で人の心を傷つけることも、癒すこともできます。
言葉に宿る力は「言霊(ことだま)」と呼ばれ、古来より信仰の対象にすらなってきました。
そんな、人を癒す力のある言葉であれば、文字通り「言薬」と呼べるのかもしれません。
であれば、人に害を及ぼす言葉は「言毒」とでも呼びましょうか。
たかが言葉とはいえど、その使い方には注意が必要ですね。

[実例]

日本人とは、かくも「似たような字形」に弱いのでしょうか。
このような「似たような字形」が原因と思われる誤字等の品種を、「似字科(じじか)」と命名しました。

[亜種]

言業:184件
言薬:149件
言某:60件
廃葉物:59件
葉却:5件

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