2004.04.22

誤字等No.062

【及ぴ】(似字科)

Google検索結果 2004/04/22 及ぴ:11,200件

今回は、以前「杜会」の回でご紹介した傑作ページにちりばめられた誤字等からのシングルカットです。
少々気付きにくいかもしれませんが、「及び(oyobi)」ではなく「及ぴ(oyopi)」です。
これがまた、結構な件数が見つかりました。
平仮名の誤字ですので平誤科に分類することも考えましたが、誤字の原因は「似たような字形」にあると判断して、似字科に入れることにします。

検索結果に並んでいるのは、法律・論文・報告書などなど、ごく真面目な文章ばかり。
日本人には、堅苦しい文章を書くときに「及び」を使いたくなる習性があるようです。
そういった文章の備える雰囲気と、「及ぴ」とのギャップは、なかなかのもの。
声に出して読んでみれば「及ぴ」の響きがかわいいだけに、なんとも絶妙な間抜けさ加減です。

濁点をなくした「及ひ」であれば、「歴史的仮名遣い」の趣から「古めかしい」程度の印象で済みますが、「及ぴ」では言い訳のしようがないですね。

確かに、パソコンで使われているフォントは、「濁点」と「半濁点」の見分けが付けづらいです。
特にサイズが小さくなると「半濁点」が菱形に並んだ四つの点で表現されるようになるため、斜めに並んだ濁点のようにも見えてしまいます。
「び」と「ぴ」が並んでいれば違いは分かりますが、「ぴ」だけがある状態でそれを「び」と読んだとしても、致し方ないのかもしれません。

また、全体を平仮名表記した「およぴ」であれば、カナ入力時に濁点キーと半濁点キーを打ち間違える可能性もありますが、それを変換しても「及ぴ」にはなりません。
及ぴ」もまた、安易にOCRに依存した「報い」のひとつなのでしょう。
この調子だと、濁音が半濁音になってしまう似字科誤字等は、意外な程大量に隠れ潜んでいるような気がします。

役所も学校も、OCRを導入して紙資料を電子化することにより、どれだけ効率化できたかは知りません。
しかし、OCRの利用には「誤字」という副作用が多大に付きまとうことを、どれだけ理解しているのでしょうか。
公開まで誤字に気付かなければ恥をさらすことになるというリスクについて、承知しているのでしょうか?
これまでご紹介した似字科誤字等の数を見るだけでも、それは疑問です。

「効果」だけに着目するあまり「副作用」を正しく認識できない組織は、必ず失敗を犯します。
ちょっと大げさですが、日本という国全体が没落の一途を辿っているのも、案外こんな些細なところに原因があるのかもしれません。
もっとも、私のように誤字を見つけて楽しむ人がそれほど多くなければ、誤字をさらす程度のリスクなどたいしたことではないのでしょうね。

[実例]

日本人とは、かくも「似たような字形」に弱いのでしょうか。
このような「似たような字形」が原因と思われる誤字等の品種を、「似字科(じじか)」と命名しました。

[亜種]

およぴ:7,030件
及ひ:848件
およひ:803件
及ピ:13件
乃び:78件

※ 2005/07/09
「杜会」や「及ぴ」などの誤字が実際に使われていた「傑作ページ」は既に消滅していましたので、リンクを外しました。
ご指摘、ありがとうございます。

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