2004.05.20

誤字等No.073

【鳥龍茶】(似字科)

Google検索結果 2004/05/20 鳥龍茶:985件

中国のお茶といえば、まず「ウーロン茶」を思い浮かべる人が多いことでしょう。
「緑茶」や「紅茶」と並ぶ「茶系飲料」として、日本国内にも十分に定着しています。
発酵の途中で酵素の働きを止めた半発酵茶で、独特の香りがあり…などという説明も、不要ですね。

その言葉の響きは、いかにも中国風。
加えて、大概の製品に記載されている「中国福建省産茶葉使用」といった謳い文句から、「中国茶の代表格」というイメージがあります。
しかし、中国人が皆「ウーロン茶」を日常的に飲んでいるかというと、そんなことはありません。
中国でも、ほとんどの地域では主に「緑茶」が生産されています。
ただし、日本の緑茶が茶葉を蒸して作るのに対して、中国緑茶は炒って作るため、味は異なったものとなります。
中国茶には、他にも「黒茶」や「白茶」などいくつかの種類があり、「ウーロン茶」が中国茶の代表というわけではないのが実態です。

さて、この「ウーロン茶」、漢字で表記すると「烏龍茶」となります。
缶にもペットボトルにも印字されていますので、目にする機会は多いはずです。
にもかかわらず、じっくりと観察したことのある人は、意外と少ないのかもしれません。

先頭の漢字は、「(からす)」です。「(とり)」ではありません。
烏龍茶」の名は、まるで烏の羽のように黒い茶葉の色と、龍のように曲がりくねった茶葉の形に由来するそうです。
鳥龍茶」では、解釈が変わってしまいますね。

鳥根県」の回にも登場しましたが、「」と「」は非常に似た形をしています。
「なんとなく」としか見ていなければ、「」だと思ってしまっても仕方ありません。
そして、発音だけでは、どちらの漢字が正解かを判断する基準にもなりません。
中国語を知らなければ、「ウーロン茶」の「ウー」の部分が「」を意味するのか「」なのかも分からないでしょう。

検索結果の中には、単なる表記ミスではなく、「」で正しいと思い込んでしまっているページがたくさんありました。
やはり、「」と「」の知名度の差でしょうか。
」などという使い慣れない漢字ではなく、馴染み深い「」で覚えてしまった可能性があります。

たとえ「鳥龍茶」と誤記していても、実際には「鳥龍茶」という種類の茶はありませんので、読む人は「烏龍茶」のことだと思ってくれるでしょう。
表示されている文字のサイズが小さければ、両者の違いも気付きにくくなります。
そのため、個人的な文章に「鳥龍茶」が登場していたとしても、さほど問題とはなりません。

しかし、仮にも「ショッピング」を名乗るページであれば、扱う商品の名前くらい正しく表記して欲しいものです。
商品名として「鳥龍茶」などと表記されていると、まるで「偽者」「まがいもの」を売っているような「いかがわしさ」があります。
私なら、そのようなサイトから何かを買う気にはなれません。
「商品」を大事にしない店が、「良い物」を売れるはずもないですからね。

[実例]

日本人とは、かくも「似たような字形」に弱いのでしょうか。
このような「似たような字形」が原因と思われる誤字等の品種を、「似字科(じじか)」と命名しました。

[亜種]

島龍茶:8件
烏竜茶:377件
鳥竜茶:9件
烏流茶:1件

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